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天露の神  作者: ライトさん
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雨子様怒られる!


 深い泥のような眠りから覚めて、ぼぅっとしながら辺りを見回すと見慣れた光景が広がって居る。此処は見知った自分の部屋、見間違えるはずは無いのだった。


 机の上の時計を見ると二時となっているが、窓の外を見ると真っ暗なので恐らく夜中なんだろう。


 目を開けたままゆっくりと心を動かし始めると次第に覚醒してきて、色々なことを思い出し始める。


 思い出すに爺様のところでひたすら槌打ちをして…。そうだ確か特別な刀を一本打ち上げたのだっけ。ただ打ち上げたのは良いがその後のことは全く記憶が無い。


 考えられるのは、刀を打ち終えた後そのまま意識を失い、何らかの方法で自宅に連れ帰られたと言うことなんだろう。


 練習に十日間、本打ちで十日間、ただひたすら槌を打ち続けたのだが、身体の方の疲れは未だなんとかなった。


 それと言うのもアーマニやティーマニが時折ネクタルを口に運んでくれたからに他ならない。しかし精神の疲れだけは徐々に蓄積されていき、実のところ、最後に槌を置いた時にはもう意識を保てない状態に成っていた。


 おそらくその反動で、正体も無くなるほど眠りこけてしまったのだろう。

本当にぎりぎりの瀬戸際であったことを考えると、それは正に僥倖だったと言えるかも知れない。


 うんと伸びをしながらゆっくりと身体を起こすと、暗闇の中、傍らに人影が一つ見える。

枕元の灯りを付けると、ベッドに凭れるようにして目を閉じている雨子様だった。


「雨子さん、何でこんなところに?」


 呟くようにそう言うと、その雨子様がうすらと目を開けた。


「祐二、ようやっと目を覚まし居ったか?」


 そう言うと雨子様は身体を起こし、側に近づくと僕の頭を捉えた。

そして目の奥を覗き込みながら何かを確かめている?


「むぅ、もう大丈夫のようじゃな…」


 僕はそんな雨子様の言葉尻を捉えて訊いた。


「何が大丈夫だったのです?」


 すると雨子様はゆっくりと立ち上がると隣に座り、頭を凭れかけてきた。


「余りに目覚めが遅いので、心配になって見て居ったのじゃ。さすがに人の身であれだけの集中を行って作業をするは問題だったようで、神経のあちこちが傷んで居ったのじゃ」


「神経が?傷んでいた?」


 僕が驚いて訊くと、雨子様はゆっくり頷きながら教えてくれたのだった。


「神となるべく鍛えて居った祐二ではあるが、さすがに人の身であれほどの集中を以て作業をするというのは相当堪えたようじゃ。脳周りの中枢神経がことごとく過負荷で、ぼろぼろになりかけて居ったのよ」


「それって物凄くやばいことじゃないですか?」


 僕は神経について色々説明して居た、とあるテレビ番組のことを思い出しながら言った。

そんな僕に雨子様は、少し下から見上げるようにしながら詳しく説明してくれる。


「むぅ、通常であればそうじゃの。だがまあ爺様のネクタルを飲みながらであったからの。当初修復が間に合っておらなんだ様じゃが、今見るとそれも終わって居るようじゃ」


 やれやれ、既に過去の話としてしてくれているから良いようなものの、出来ればもっと事前に知っておきたい話しだなと思ってしまった。


「ところで…」


 そう言うと雨子様は、僕の胸板をにじにじと人差し指で突いた。


「随分と筋肉が付いたものじゃな?おまけに気の扱いも格段に進歩して居った」


 そう言うと雨子様はにっと笑う。


「先達てまではなんとは無しに頼りなげなところが有ったのじゃが、随分男らしゅうなってきたものじゃな?」


 いきなりそんなことを言う雨子様に焦りながら返答する。


「そ、そうなのかな?」


「うむ、将来の我が婿に相応しゅうなりつつ有るの?」


 そんなことを言いながら抱き付いてくる雨子様。だがそんな良い雰囲気を台無しにするものが居た。いや、有ったと言うべきか?


「ぐぅ~~~ぎゅるるるぅ」


 突然のその大きな音に、びっくりまなこになって身を離す雨子様。


「何じゃ祐二、それは腹の音かや?」


 僕は思いっきり苦笑しながら頷いて見せた。

全く以てムードもへったくれも有ったものじゃあ無い。


「くふふふ、未来の婿殿は空腹か…。祐二よ、ダイニングへ行くぞ」


 そう言うや否や雨子様はひょいとベッドから立ち上がると、身軽に階下へ降りていった。

何となくではあるがお預けを食らったような気分なのは気のせいなのだろうか?もっともその原因は自分自身にある訳なのだが…。


 階下に降り、ついでに洗面とトイレも済ませてダイニングに行くと、そこでは雨子様がほいほいとお握りを握っている最中だった。


 いつの間にそんなに要領良くなったのか、あっという間に三角に成形し、綺麗に海苔で包んでいく。そんなのを三つ四つ作っている間にレンジがチャイムを鳴らし、あっと言う間にテーブルの上には、何品かのおかずとお握り、お味噌汁まで並んだ。


「おおっ!」と感嘆の言葉を上げると


「ふふん!」等と言いながら胸を張っている。


 そこで先程のお返しとばかりに言う。


「未来の奥さんはさすがですね」


 と、雨子様は言う分には良いが、言われる分にはてんで駄目らしい。真っ赤になって下を向いたかと思うと小さな声で


「馬鹿」と言うばかりだった。


 さてそんなやり取りはともかくとして、目の前に美味しそうな物が幾つも並んでいると、先程の比では無くお腹の虫が騒ぎ立て始める。早速に席に着くと手を合わせた。


「頂きます!」


 僕はそう言うなり早速お握りを頬張った。


「んまい!」


 口の中をご飯で一杯にしながら言う。丁度良い塩加減で握られたお握りはふっくらとしており、海苔が芳ばしい香りをさせていて最高に美味い。


 おかずや汁に手を付けながら、わしわしと胃袋へ送り込んでいく。

その豪快なまでの食欲に、半ば呆れながら雨子様がぽつり言う。


「我はそなたに疑似宝珠を授けた覚えは無いのじゃがな…」


「ぐっげほげほげほ!」


 思わず咽せてしまった。小雨やユーの食欲と同じにされるとは思ってもみなかったのだ。


「きっ、汚いの~!」


 そう悲鳴のように言う雨子様。


「誰のせいだと思って居るのですか?」


 僕はそう言いながら恨めしげに雨子様のことを見た。

しかし雨子様は、そんな僕の言葉に対してすっ惚けて見せる。


「はてのう?我はそんな奴知らぬがのう?」


 さすがにそんな雨子様に言いように腹も立ったので、全く以て大人げないと思いつつもあかんべーをする。


 するとそれを見た雨子様もまた同様にべーを返してくる。一体幾つの子供の喧嘩なんだか、そう思えてしまうのだが、そんな僕達は知らなかった。廊下に通じる扉が細く開けられ、その向こうで母さんが覗いていたことを。


「少しは大人になったかと思ったらこれだもの…、困ったものねぇ」


 そう小さく呟きながらそっと扉を閉めるのだが、そんなこととは知らない僕達は更にまるっきり子供の口げんかを繰り広げる。


 その余りの騒々しさに再び戻ってきた母さんに、二人揃って廊下へ正座を命じられ、懇々と諭され怒られることになる。


 怒られ終わったところで雨子様曰く。


「節子が怒るとこんなに怖いとは知らなかった」


 とのこと。もっとも僕からするとそんなに?という感じなので、多分怒られ慣れていないのだろうなぁ?






 本日もまた定時に遅れてしまいました。申し訳無いです

流石に十二月ともなるとなんだかんだあるのでこう言ったことが屡々ありそうだなあ


なので宜しかったらどうかブックマークを付けてやって下さいませ^^

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