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天露の神  作者: ライトさん
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「デートのお邪魔虫:中編二」

お待たせしました。


 目的地まで辿り着いた私達は電車を降り、駅を出て繁華街の中をゆっくりと散策しながら通っていった。

ちゃんと人と関われる状態になっての道行きに、なんだか私は安心感を持って周りを見渡すことが出来ていた。


 ずっと祐二君がリュックを前にしたまま歩いてくれているのだけれど、時折前から来る人の中に、そこから顔を出している私の姿に気がつく人が居る。


 今擦れ違ったカップルもそうだった。女の子の方が目敏く見つけて、彼氏さんと思える男性の手を引っ張ってそっと指差している。

最初何のことか分からなかったのだろうな、え?っていう顔つきをしているのだけれども、私のことを見いだすと、おおっ!という感じで喜んでいる。


 そうやって時々注目を集めることが、私は嬉しくて仕方なかったよ。

本当に幽霊だとこうは行かないものね。


 そうやって沢山の人たちと擦れ違いながら、祐二君達はのんびりとした足取りで賑やかな通りを歩いていった。


 時折交互にあれは見えているか、これは見えているかと話しかけてくれている所を見ると、おそらくは私を楽しませる為にものんびり歩いてくれているのだろう。


 そうこうする内に私達は、ビルの連なった様な所の二階に上がっていった。

ちょっと見た感じ少しマイナーな店が軒を連ねている。


 マイナーとは言っても悪い意味で言っているのじゃ無いから念のため。結構コアな感じのする漫画専門店とか、無線機の専門て何?そんなのがあるの?かと思ったらガチャの機械が物凄く沢山置いてあったり、アニメ専門の店もあるんだ。


 生前そう言うテレビを見ることが無かった性で、こう言うのは余り詳しくは無いのだけれども、雨子さんが夢中になって見ている横に居る内に、少しずつだけれどもその面白さに気がついてきた感じかしら?


 でもあれは何?あの女の子の絵とか人形、フィギュアって言うの?ちょっときわどいんですけど?多分人間の私だったらきっと赤面していたに違いないと思うわ。今ばかりはうさぎで良かったかも知れない。


 でもそんなものが沢山展示されている横を、祐二君も雨子さんも平然と通っていく。

世間ではそれが当たり前なのかしら?


 そうやって一人内心赤面しているうちに、とうとう私達は目的のパソコン屋さんに着いたらしい。


 店を一歩入ると沢山のパソコンやその付属品らしきものが、所狭しとばかりに置いてある。そしてそれらのものを割と多くのお客さんが居て、あれやこれやと吟味しているのだ。


「ふわぁ、こう言うお店もあるのね?私がパソコンを買う時はいつも電気屋さんばかりだったわ」


 私がそう独り言ちしていると、祐二君が教えてくれる。


「普通にネットサーフィンしたり、ワープロなんかを使ったりする分にはそれで十分なんだと思いますよ?でも動画を編集したり、ゲームを思いっきりしたりする様だったら、そう言う所で買うと割高だったり、自分の好みの構成では無かったりすることがあるから、そう言う時にはこう言う店で買うんです」


 周りの人には聞こえない様に小さな声で、そしてまるで雨子さんに説明して居るかの様にしながら教えてくれる。良く気が利く子だなあ。


「祐二、さっさと探しに行くぞ」


 雨子さんがのんびりしている私達を急かして、店の奥へと連れて行く。


「あちゃあ、なんだか在庫ないですねえ?ちょっと店の方に聞いてみますね?」


 これまであった場所に彼らの求めていた物が無くなっていたらしい。

祐二君は、私の入ったリュックを雨子さんに預けると、足早に店員を探しに行った。


 幸いなことに彼はそう時間を掛けること無く店員を見つけ、何やら色々と話をしている様だ。


 その祐二君がおいでおいでと手招きをしている。そこで私を抱えた雨子さんは小走りで祐二君の所に駆け寄った。


「前は結構古いジャンク品まで置いていたんだけれども、そう言うのをまとめて買っちゃうお客さんが居るらしくって、今はそう言うのが無いのだって。それで現在々庫としてあるのがあそこのケースの中の分なんだって」


 見ると店の一角にあるガラスケースの中に何やら小さな部品が陳列されている。

雨子さんから再び私の入ったリュックを受け取ると、祐二君はそのガラスケースの中を覗き込んだ。


 そこには小さな銀色をした四角い部品の様なものがずらりと並んでいる。


「祐二君、これは何なの?」


「これがパソコンの中心部で色々な計算を請け負っているCPUっていう部品なんです。今日はこれを買いに来たんですよ」


「け、結構なお値段がするのですね?」


「う~~ん、確かに割とするなあ」


 すると雨子さんが問いかけてきた。


「祐二よ、節子からいくらぐらい予算を預かってきたのじゃ?」


「二万円」


「むぅ~~~、じゃとするとせいぜい買えて六つくらいじゃの?」


「だね」


 すると雨子さんが渋い顔をした。


「その数だと少しきついかも知れぬのう」


 一体何がきついというのだろう?心配になって私が聞こうとする前に祐二君が聞いてくれた。


「でも小雨やユウの時は十分に事足りていたのでは?」


「あやつらはの。元々あやつらは人や動物として十全な感覚器を持って居った訳では無い。じゃから若干間引いて居ったり、時間差処理を施して僅かな遅滞があったとしても、比べる物が無いから気がつかずに済んで居る。しかも身体も人間のそれと比べるととても小さいからの。故にあの処理能力でもなんとかかつかつではあるが、問題は無かったのじゃ。しかし…」


 そう言うと雨子様は優しく私の頭を撫でた。


「しかし令子は元々がちゃんとした人間じゃったからの。きちんとした人間の身体と言うことで追いかけていくと、処理に掛かる能力がかなりのものと成り居る。元より人として十全の能力までは与えることは適わぬとは言っておるものの、それでも我の与えたいものを満たすにはこれではちと苦しいのう。じゃがやむを得まい、一部時間差処理でごまかすかの」


「それ、大丈夫なんですか?」


 祐二君が少し不安そうな顔をしながらそう問うと、雨子様は私の顔を見ながら言う。


「令子よ、少し感覚的に鈍くさくなるが許せよ?」


「えええ?それって一体どう言う?」


「うんうん、僕もどう言うことになるのか意味が分からない」


 すると雨子さんは苦笑しながら言う。


「何、少し走るのが遅くなって、ボール遊びはまず無理かの?要は運動音痴になると言うことじゃ。或いは今の様に何かに集中する時には、他の何かの感覚を切らねばならないこともあるじゃろうな」


「成るほどそう言うことかぁ…」


 雨子さんの説明で大凡なんだけれども合点が行った。

その説明を私と一緒に聞いていた祐二君が雨子さんに言う。


「ねえ雨子さん、少し此処で待っていてくれる?」


「ん?どうするつもりなのじゃ?」


「ちょっとATMの有る所まで行ってお金下ろしてくるよ。確かお年玉の残りが未だ有ったはずだから」


 それを聞いた私は慌ててしまった。


「駄目よ祐二君、そこまでして貰う訳には行かないわ。元々何の関係も無い浮遊幽霊だった私を拾ってくれただけでも凄い迷惑を掛けているのに、これ以上あなたに負担を掛けたくないの」


 私は自分のこの意見を引くつもりは無い。


「でも令子さん…」


「駄目祐二君、絶対に嫌なの!」


 彼の優しさにこれ以上つけ込んでしまうのは本当に嫌だった。そこまで迷惑を掛けるのなら、私はもううさぎのままでも良いとすら思ってしまうのだった。


 だがそこに雨子さんが口を挟んで、解決策を示してくれるのだった。


「まあ待て祐二よ、我としては未だ話の先があるのじゃよ」


「「ええっ?」」


 私達は二人揃って声を上げてしまった。


「確かにこれらの部品を使って直ぐにどうこうと言うのは難しい。じゃから令子が人形の身体に入って暫くの間は不自由を掛けてしまうかも知れぬ。じゃが数ヶ月ばかり我に時間をくれぬか?そうすれば呪を編んで、それをサポートする物を作ってやることが出来ると思うのじゃ」


「本当なの、雨子さん?」


 そう言う祐二君は我がこと以上に喜んでくれる。


「うむ、時間は掛かってしまうが、それぐらいの猶予があればなんとか出来ると思うの。まあ令子には暫しの不自由を強いてしまうがの」


 でも私としてはそれは十分な回答だった。今まで何年浮遊幽霊で居たのか、その時間感覚が私には無いのだけれども、それでも幽霊で居続けた無為な時間のことを考えれば、人間の身体を得て僅か数ヶ月、少しばかりの不自由が有ったからといって、それはどうと言うものでも無かった。


 私はリュックの中で雨子さんに向かって出来るだけ丁寧に頭を下げ、そして言った。


「ありがとう御座います雨子さん。本当にありがとう…」


 私にはそれ以上の言葉を紡ぐことが出来なかった。

祐二君と雨子さんはそんな私に向かってうんうんと頷きながら、二人で揃って私の頭を撫でてくれるのだった。


 私そんなに小さなお子さんじゃ無いのだけれども?そんなことを思う部分も無い訳じゃあ無い。でもそれでも、そんなことを思う以上に、二人の思いが良く伝わってきて、尚、涙が止められなくなってしまうのだった。






本当に気持ちの良い気候になって来ました。お陰で睡眠の質が上がり、本当に助かっています

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