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第五章 検証実験

 ガレージに到着すると、長身でイケメンのノブヲと、知的メガネっ子のヒデヨが俺たちの到着を待っていた。


 俺が大魔王との今日の経緯や大魔王の告白の説明をすると、ノブヲは笑い転げて本当に床をゴロンゴロンと何度も転げ回り、ヒデヨはメガネの端を人差し指で押さえつけながら、「ククククッ、ククククッ」と、こらえた笑いが今にでも噴出しそうな状態に陥った。


 しかし、これは予想できたことだ。

 普通はこんな話、信じられるわけがない。


「おい、笑ってるけどな、魔界や大魔王はよく分かんねぇけど、このオッサンが種も仕掛けも無しにスカートめくりできるってことはマジだぞっ!」


「ククククッ、ま、マコト先輩、科学で説明できないものは全て非科学的だと言えますから、先輩の判断は間違っていません。それにしても、スカートめくりって……。ククククッ」


 殴るか?


「んうわっ、マジ腹痛てえわ。昼間にシリアスな顔しちまったのが後悔だね。まじ、マコトさ、スカートめくりで念力大魔王? まじ面白いよ、そのネタ」


 なんか……、なんか、このオッサンと一緒に俺まで馬鹿にされてないか?

 本来であれば俺が熱くなる必要は全くないのだが、やばい、ムカついてきて、


「てめーらぁ、よく聞け! だからぁ、魔王とかそんなもんはどうでもいいだよっ! でもな、このオッサンはスカートめくりができちゃうの。それも念力で! 興味あるだろ? 非科学的なモノは検証すべきだろ?」


 俺がマジで怒って言ったので、一瞬でノブヲもヒデヨも動きが止まった。


「わ、わかりました。マコト先輩。まずはその念力を実際に見てから、判断しましょう。既存の価値観で判断するのは良くないですもんね。ですよね? ノブヲ先輩?」


「ん? んあぁ、いいぜ。じゃあ検証すっかっ! っんと……」


 ノブヲはそう言うとニヤニヤして、


「ちょ、ちょっと待っててなっ!」


と言ってガレージを飛び出して行った。

 二、三分で戻ってきたときには、おばちゃんを一人連れ来た。


「紹介するよ、うちに住み込みで色々面倒見てもらっているカヨさん」


「カヨで御座います。坊ちゃまがいつも大変お世話になっております」


 カヨさんはノブヲの家のお手伝いさんらしい。

 ノブヲが小さい頃からいたので、まさに母親代わりであるとも言える。

 しかし、なぜノブヲがカヨさんを連れてきたのか、よく分からなかった。


 するとノブヲは小さな声で俺とヒデヨに、


「見ろ! このカヨさんのロングスカートを! カヨさんお気に入りのロングタイトスカートだ。これはちょっとやそっとの風力じゃあ、めくれないと思うだろ?」


 どうやら実験対象を連れてきたみたいだ。ノブヲは得意顔で、


「しかも! まさかカヨさんを実験に使うなんて思いもしないだろ? 意表をつくセッティングなわけだ。だから、誰かが事前に仕掛けや小細工をしようと思っても、想定外ってことだ。まさに実験にはうってつけってやつだよ」


 その圧倒的な強引さに、もうカヨさんで検証することが決まりみたいな雰囲気になった。

 俺としては、イケメンノブヲの力で可愛い女の子を何人か呼んで、楽しい検証パーティでもしたかったんだけど……。


 しかし、ノブヲの案にヒデヨも賛同した。


「これはいいですね。最適ですよ。身近にあるもので実験をするのは、ムダを省く一歩ですからね」


 完全に俺のことを馬鹿にしてやがる。


 これはちょっとスカートがめくれるくらいでは物足りないかもしれない。

 俺はそう思い、大魔王に「最大限のパワーでやれよ!」と耳打ちした。

 むふふ、コイツらの目が点になる様子が目に浮かぶぜ。


「じゃあさ、カヨさんにはちょっと俺たちの科学的な実験に付き合ってもらいたいんだ。危険はまったく無いから安心してね」


 カヨさんは俺たちが何かを話しているのを黙って見ている。

 何をされるのか、頭にハテナマークが浮かんでいる状態だと思うが、ノブヲとの信頼関係があるためか、


「分かりましたよ、坊ちゃま。どうすればよろしいですか」


 なんて、警戒心ゼロでの協力体制だ。

 ノブヲは棚から、かつてSMロボット実験に使ったアイマスクを持ってきて、カヨさんに装着した。


「ごめんね、カヨさん。これだけ付けさせて。衝撃的な展開が起こらないとも限らないからね、ぷっ、ぷふふ。ヨシ、じゃあ後ろ向いて手を上にあげてぇ~」


 ノブヲは笑いながらそう言った。

 その瞬間っ! 大魔王は両手に力を込めて前に突き出した。

 すると、もの凄い勢いでカヨさんのロングタイトスカートがめくれ上がった! 


《プシャァァァ~、ブワッアァ~、グワァ~~~》


「ヒャッ!」


 スカートがめくれた違和感に驚いてカヨさんが叫ぶ。

 カヨさんのロングでタイトなスカートは全開にめくり上がり、ベージュのパンツが丸見えになっている。

 そして、そのめくれ上がりはさらに上まで上がっていく。


 ん? これはっ! これはワンピースではないか! と思った瞬間、大魔王が、


「ハッ!」


と気合いを入れると、ロングでタイトなワンピースは、一気にめくれ上がり、同じくベージュのブラジャーが見えたかと思うと、


《スポッ!》


と勢いよくカヨさんの体から離脱し、ガレージの天井まで届く勢いで舞い上がった。

 そのあまりの勢いでアイマスクが取れてしまい、カヨさんは下着姿の自分を見ると、顔を紅くして、


「ぎゃあああ! ぼ、坊ちゃまっ! ぎゃあああ~」


と言って、ヒラヒラと落ちてくるワンピースを掴み取ると、ガレージを飛び出して行った。


 ノブヲがカヨさんに実験が失敗したため悪いことをしたと謝りに行っている間、ヒデヨはずっと目を閉じて黙っていた。

 だから、俺も大魔王も何も話さずに黙っていた。


 ノブヲがオーケーオーケーと指で丸を作りながら戻ってくると、ヒデヨはゆっくりと目を開けた。


「ノブヲ先輩……、これは……、これはどう考えても科学では説明できませんね。」


 ノブヲは積んである木箱の上に座ると、俺のほうを見て、


「悪かったな……、マコト。友達のことを、親友のことを信じられなかったなんてさ。俺、恥ずかしいよ」


 大魔王をここに連れてきたのは正解だ。

 ノブヲもヒデヨも科学を熟知しているからこそ、非科学的なことを受け入れやすい。

 それに、俺だけの力ではどうしようもないのだから。


「いや、全然。だって俺だって信じられねえよ。こんなさ、スカートめくりの念力だなんてさ」


「マコト先輩、なんか、馬鹿にするような事を言ってしまって、すみませんでした」


 ヒデヨも謝ってきた。

 この二人は本当にいい奴らだ。

 しかし、ここからどうするかが問題だな。

 大魔王はさっき、助けてくれと言っていた。

 俺としても、ここまで関わってしまった以上、もう後戻りはできないなぁ。


「大魔王さんもすみません。つい自分の知識や経験で判断してしまいました」


とヒデヨは大魔王にも話しかけたのだが、


「いやいや、全然結構じゃよ。ワシも困っていたところだったんじゃ。この世界でワシは独りぼっちだしのぉ。でも、マコト殿はワシの話に興味を持ってくれて、熱心に聞いてくれて、そして信じてくれたのじゃ。ありがとうのぉ、マコト殿」


 熱心? それは単にスカートめくりに対してだけだ。

 それが分かっているのか、ノブヲは笑みを浮かべながら、


「まあ、マコトは熱心だよなぁ。エロいもんなぁ~」


などと言うので、


「え、エロい? どういうことじゃろ?」


 大魔王は自分を信じた男が、まさかエロ目的オンリーだったとは思わず、不思議そうな顔になった。

 しかし、


「まあ、いっか。とにかく、念力は本物ってことが分かったしな。じゃあ次はどうする? もっと検証する?」


 ノブヲの提案に賛成! もっと検証したいで~すっ! と俺が言おうとしたが、ヒデヨが真面目な顔をして言った。


「いや、検証はもういいでしょう。能力についての実証はできましたから。大魔王さんが念力大魔王だと仮定しても十分だと思います。あとは、大魔王さんの事情をお聞きしたほうがいいと思いますが……」


 この男は面白くないなぁ。

 スカートめくり大検証大会を開催したほうが、どんなに楽しいことか。

 ん? やべっ。モトミ様の紫ランジェリーを思い出してしまった。

 俺の下半身が咆え始めてるぜ。

 なんてひとりエロモードに入ろうとしているのだが、ヒデヨの言うことはもっともなので、面白くはないが大魔王の話を聞くしかなさそうだ。

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