22 帰ってきた?
「ニャー」
ミーちゃんが鳴いている。
あれ?ここ異世界じゃなかったっけ?
目を覚ますと、自分の部屋で寝ていた。
異世界が夢だったのかな。
体が心なしかだるい。
妹の沙也加が話しかけてきた。
「友兄、起きたんだ。珍しく風邪ひいてさ。意識不明の重体で…一週間寝込んじゃってたんだよ?病院に運ばれたり点滴うったり大変だったんだから」
「ごめん。ありがとう」
そうだったんだ。
異世界に行ったと思ってたけど夢だったのか。
まあ、ミーちゃんが人間になったり…女神様とか今から考えるとありえないよね?
想像力豊かな夢だなって思う。
「学校…一週間休んでいたんだね」
いつもの日常に戻る。
体調が良くなれば、また学校で虐められて。
ミーちゃんと遊んで。
ミーちゃんが金色の瞳でじっと僕を見つめている。
何か言いたそうに見えるのだけど。
気のせいだろうか。
沙也加は、部屋を出て行った。
「今思えばミーシャと…我慢しないで、しておけばよかったな。」
素直になって、色々。
夢なのにハッキリ顔も思い出せる。
ズキッ!
あれ?胸が痛くて苦しい…本当に夢だったのか?
「ミーシャ愛してる」
僕は呟いて泣いていた。
ミーちゃんは驚いて、目を見開いている。
僕はベッドの上にいた、ミーちゃんを抱きかかえてキスをしていた。
バフッ!
キラキラと輝く光の粒子が、ミーちゃんに纏わりついている。
「何てことしてくれるんじゃ。変身が解けてしまったではないか」
銀色の長髪がなびく。
白い肌の金色の瞳の女性が立っていた。
「ミーシャ!」
「夢だったで済まそうとしたのに、失敗したわい」
「お、お兄?誰なのその人…」
騒いでいたら、沙也加が部屋に戻ってきて驚いていた。
口をパクパクさせている。
「僕のミーちゃん」
「ワシはミーシャという。黒猫のミーちゃんじゃ」
「はああああ?何言ってんの??」
沙也加が落ち着いてから、今までの事を細かく説明した。
異世界に行って、ミーシャが女神だという事も。
どこまで信じてくれるか分からないけどね。
僕だって逆の立場だったら、信じる自信無いよ。
「友兄が、魔法見せたら信じてもいい」
「じゃあ、ポーション出すけど」
僕は回復ポーションをイメージした。
手のひらに瓶のポーションが出現する。
「え?本当に??」
目をぱちくりさせて、ポーションを見る沙也加。
実際見ても信じられないよね。
「それで、ミーシャはこれからどうするの?」
「ワシは友樹と暮らせればそれでいい」
「友兄は?」
「僕もミーシャと一緒に暮らせれば良いと思っている。あとは強くなりたい」
いつまでも虐められたままじゃ嫌だ。
「辛かったら逃げても良いのじゃぞ?」
「うん。そうしたらまた、ミーシャに異世界へ連れて行ってもらうよ」
「あ、ヤバイこんな時間だ!学校行ってくるね」
沙也加は、バタバタと廊下を走っていった。
「全く…すっかり、夢だと思っちゃったよ」
「まあ、直ぐにバレてしまったがな」
僕たちは元の世界に帰ってきたので、今まで通り暮らすことにした。
ミーシャは猫になったり、人型になったり家の中で自由に過ごしている。
「友樹、ワシも学校って所行ってみたいのじゃがどうじゃろうか?」
「えー反対」
ミーシャは美人だから、学校へ行ったら男子からモテまくるに違いない。
それは断じて許せない。
「第一、ミーシャは二十歳くらいに見えるから、同じ学校へ入るのは無理だよ」
「年齢を合わせれば良いのじゃな?」
「ちょっと―――待って!」
本当に変身しそうで怖い。
僕は慌てて引き留めた。
「それで…ミーシャに、家の家事の手伝いをしてもらっていると」
慣れないながらも、掃除とかやってもらっている。
学校に行かれるよりはずっといい。
「うん」
「こっちの方が退屈かもしれないけどね」
「私は、お姉さんが出来たみたいで楽しいからいいわよ」
「そっか」
「それに、友兄がいつも楽しそうだから良かったんじゃないかな」




