21 旅の疲れ
平地を半日ほど歩いた。
町までの道のりはまだ遠い。
「友樹は、体力がまだまだじゃのう。ポーションでも飲むか?ほら、水じゃ」
僕は疲れて動けなくなっていた。
ミーシャが、アイテムボックスから取り出した椅子に腰かけている。
水筒の水を飲んだ。
「あの力は一日一回しか使えないし、もったいないからいいよ」
「ほれ、じゃあ、ワシの背中に…」
「恥ずかしいからいい」
「はあああ?誰もおらんじゃろうに…友樹は我儘じゃ。仕方ないのう」
フワッ。
体が宙に浮いていた。
「このまま、町に進むぞ」
「えっ?いや、何これ??一体どういう状況??」
バタバタするが、地面は足に付かない。
強制的に体を浮かせられたようだ。
「何って、魔法で浮かせておるのじゃが?」
「こっちの方が恥ずかしいよ…」
僕は、消え入りそうな声で訴えるが無視された。
僕たちは、町の入口の案内板を見ていた。
観光名所…スリングスの湖
湖は町から少し離れた場所にあるらしい。
町は標高が高いらしくて、少し肌寒い。
「白い鳥がキレイでね。今の時期は、沢山湖にいるんだ」
麦わら帽子を被った叔父さんが、陽気に話しかけてくる。
白い鳥?白鳥かな?
「へえー」
「ミーシャ、今から行ってみない?」
「宿を取ってからの方が良いじゃろ。もう日も暮れるし」
いつの間にか日が沈みかけていた。
「うん。そうだね」
宿の部屋に入って、急に寒気が襲ってきた。
「ねえ、寒くない?」
気温が他の場所より低いのだろうか。
「そうかの?」
「ちょっとごめん」
僕はミーシャに抱きついた。
「友樹…急にどうした…」
寒くて寒くて…ミーちゃんに抱きつけば温かくなると思ったんだけどな。
僕は、ギューッとくっついた。
猫と違って今は人間だから違うか。
「ミーちゃん寒いよ…温めてよ…」
「友樹、熱があるのではないか?」
「へっ?」
そう言われてみれば体がだるい気がする。
「直ぐに寝たほうが良い。寝巻に着替えて…」
何だかぼーっとしてきた。
あれ?意識が…。
*** ミーシャ 視点
友樹が急に抱きついてきた。
それは良いのじゃが、様子が変じゃ。
見ると体が震えている。
外も気温が低かったようだから風邪をひいたのか?
疲れていることもあったのじゃろう。
もう少し気を配るべきであったな。
友樹をベッドに寝かせて、頭に濡れタオルを乗せた。
無理せずしばらく休ませないと。
他人の事を救っている場合じゃなかったの。
「はぁ…はぁ…」
友樹が高熱を出して苦しそうにしている。
今回、王国から逃げる事になったのは全てワシの所為じゃ。
友樹が安心して暮らせる場所を探さねばな。
*** 日下部 友樹 視点
「ミーちゃん?」
僕は、夜中に目を覚ました。
さっきまで手を握っていた彼女の姿が居なくなっていた。
「トイレ…かな」
何だか嫌な予感がする。
枕元に一通の手紙が置いてあることに気が付いた。
「ワシの愛する友樹。さようなら」
光の粒が辺りを僕の周りを取り囲む。
また僕は意識を失っていた。
「友樹、冒険は終わりじゃ」
夢の中でミーちゃんの声が聞こえた気がした。




