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子役もかなり、大変です。  作者: ほっかいろ
第一章~子役、始めました!~
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36/46

30、不思議な感覚

 1400pt分です!

 「うわ、緊張するなぁ。」

 

 羽田さんが私のマネーシャーとしして一緒に行動するようになってから一週間。羽田さんが来るプレッシャーがあれど、早起きはいぜん苦手だ。今日はアラームにもお母さんにもたたき起こされること無く、朝を迎えることが出来た。と言っても、多分緊張が大きな原因だと思う。なんせ今日は初撮影なのだ。


 「凜々花、起きたんなら身支度しなさい。服は羽田さんと買いに行った服着てね。」


 お母さんも今日は必要以上に早く起きたらしく、もう朝ご飯を焼いている音が聞こえる。


 「はーい。」


 洗面所で顔を洗い、髪を適当にとぐ。セッティングはお母さんが後でしてくれるので、取り合えず着替える。

 羽田さんと買った服は、何ていうか、可愛いし高級感が凄い。田舎者の私にはそういうのはよくわからないけど、取り合えずクローゼットの中で、その服たちだけが輝いていた。特にお気に入りの服を取り出すと、買ってもらった鏡の前で着替える。

 服装は、白い厚めの服に、灰色の長いカーディガン、そして下はジーンズだ。顔(童顔)に対してちょっと大人っぽいかな?と思ったけどまあいいや。シルクハット(うろ覚えだから分からないけどマネージャーさんがそう言ってた)を被ればまあいい感じになるしね。やっぱり童顔でも幼ければどうにかなるんだな。


 「凜々花、早くして。」

 

 お母さんは大分急いでいる。心配しなくてもまだ時間はあるさ。


 リビングに行くと、お父さんが朝食を食べていた。


 「お、凜々花、可愛いいいね。」

 「ありがとう。」

 「今日は撮影が始まるんだよな?頑張るんだよ。」

 「うん。」


 そんな話をしている間も、お母さんは忙しそうに動き回っていた。


 「今日羽田さんが来るんじゃなかったっけ?なんでお母さんまでそんな化粧してるの?」


 洗面所から出て来た厚化粧のお母さんに訊くと、どうやら私の事務所との重要な話があるらしい。本人もまだ何の話かは知らないけど。

 

 ご飯を食べ終わると、歯を磨き、髪をセットしてもらった。そのころには結構ギリギリで、お母様の偉大さを実感した。いや、私がもともと遅刻魔だからなのかも知れないけど。


 「じゃあ、行ってきます。」

 「行ってきまーす!」

 

 撮影場所は、家から車で20分もかからない所だった。そのおかげでちょっと時間が余ったので、別に急がなくてもいいじゃん、と呟くと、そうやって油断してたら次は絶対遅刻するわよ、と、遅刻魔の私が何度も経験したことのあるシチュエーションを、お母さんはズバリと当てて来た。


 撮影場所は、新築っぽい家だった。外見からお洒落だな、とは思っていたが、中の家具やインテリア、照明などはもっとお洒落だった。各登場人物の部屋まで分けられてて、もう、凄かった。


 役者さんたちはもう集まっていて、監督と話していたりしていた。私も軽く挨拶を済ませた。因みに撮影の休憩などは、適当にセットの中でするらしい。暫くすると、関係者以外の立ち入りが禁止され、撮り始める雰囲気になってきた。ここでお母さんは帰って、暫くすると代わりに羽田さんが来てくれた。


 今日集まった役者さんは、花坂 莉緒さん、裕山 裕介さん、そして私という三人だけ。これが基本メインなんだけどね。

 花坂 莉緒さんは、ザ・女優って感じの人で、ドラマや映画に多く出演している、優しい雰囲気の女優さんだ。

 裕山 裕介さんは、アイドルで、人気グループ、CLOVERの演技派と言われるむちゃカッコいい人だ。あだ名はゆうゆう。ま、私は前世も今世も、アイドルには興味ないけどね。


 撮影を始める前に、ちょっとしたクランクインのお祝いという事で、サンドイッチを食べたり花束を渡したり、で、結構リラックスして撮影を開始できた。撮影は、1シーンごとに、リハーサル→本番、みたいな感じで進めていった。


 といっても、前半はほとんど莉緒さんと裕介さんのシーンなので、私はずっと後ろだった。


 撮影も終盤に差し掛かり、休憩が入った。因みにここまで私の出番は無かった。


 「裕山君、君もう少し頑張れるかな?アイドルだっていうのは分かるけど連ドラなのね、分かる?まず全くキャラを掴んでないよね?そこからおしえなきゃいけない?」


 監督は花坂さんに一言良かったよ、というと、裕介さんに対する指導を始めた。


 「凜々ちゃんは暇だったね。」


 厳しいなぁ、としげしげ監督を見ている私に、花坂さんが話しかけてくれた。


 「はい。あ、でもこの休憩終わったら私の出番なのでぼーっともしていられませんね!」

 「そうだね。いよいよだね。にしても凜々ちゃん、今回は大抜擢だったらしいけど、事務所に入ってからどのくらいなの?」

 「1年と半年位前です。」

 「えー、結構少ないんだね。でも子役としては4歳から始めたからそこまででも無いのか。」

 「歳覚えてて下さったんですか!?」

 「ええ。私、そういうのは頑張りたいんだ。」


 うわ、凄いなこの人。わたしも芸能人ブック?かなんか見て勉強しないとな。


 「莉緒さんは何個もドラマや映画に出てるのに、そんな暇あるんですか?」

 「うーん、移動時間が多いから、意外とあるよ。」

 「へー。移動時間まで有効活用できるなんて凄いです!」


 そんな話をしているうちに休憩が終わった。貰ったオレンジジュースをテーブルに置き、スタンバイする。

 今回のシーンは、初めて美穂(私の役)が家に来た日のシーンで、入ってくるところから、部屋の隅で泣きながら座っているところまでなのだが、ずっと無言で泣く、という、難しいシーンだ。


 大体リハーサルというか動きの確認をして、本番が始まる。


 「じゃあ本番初めー、3、2」

 

 1、と、スタッフさんが指で合図をする。


 「ただいま。」

 「お帰り。」


 裕介さんと莉緒さんが、ダイニングテーブルで向かい合うように座る。


 「実は、折り入って話があってさ。ちょっと待ってて。」


 そう言って裕介さんがまた家を出ていく。ここから私が裕介さんのあとをついていくように登場する。

 カメラの裏側でスタンバイをして、合図と共にカメラの前、に歩いていく。


 その瞬間、明るい照明が私を照らした。カメラたちが私を囲った。何か弾けるような感覚がした。そう、映画の時もこんな感じだった。でも今回はより強く感じる。

 

 そっか、この瞬間が、私が美穂になる瞬間…。初めてそんな実感を掴んだ。


 裕介さんのシャツを強く握りしめて、唇を噛み、下を向く。

 裕介さんは少し驚いたようだったが、すぐに演技を始めた。


 「この子の事なんだけど。」


 そう言って何となく私を前へと誘導した。私はまだうつむいたまま、チラッと梨花さんを見た。警戒を込めたまなざしで。


 「え、誰なのこの子!?っていうかなんでいきなり?ちゃんと説明して。」


 怖い。怖い…怖い。

 さっとその場を離れ、部屋の隅でうずくまる。


 怖い、怖い、怖い…。

 

 いつの間にか涙が自然と頬を伝い流れ落ちていっていた。唇を噛みしめながら、音をたてないように、ただ涙を流す。


 「はぁ、取り合えず、話し合いましょう。」


 「ッカット!」


 カットが入ると、自然と涙は消えて行った。

 何だったんだろう、今の。まるで集中力が研ぎ澄まされた感覚の中で演技してたみたいだった。


 「凜々ちゃん、大丈夫?」

 

 終わったとたん、監督が駆けつけてくれた。


 「え、はい。大丈夫ですよ?」

 「え…あ、そうか。」


 監督は一瞬目を見張ったが、直ぐ黙った。


 「凜々ちゃん、凄かったよ。俺より凄いかも。」

 

 裕介さんも声を掛けてくれた。


 「いや、裕介より凄かったわよ。一年半でそこまでとは、私も頑張らなきゃね。」


 莉緒さんも褒めてくれた。


 「ありがとうございます!」


 その後の撮影も、さっきまでとはいかなかったが、やはりさっきのような感覚に陥った。良い事なんだけどね。

 撮影終了後、私はなんだかいい気分で家に帰った。今日は良い感じに演技出来た気がする。

 

 次はどうしよう。ロケの話になるか、小話みたいな、色々な話が混ざった話になるか、どちらかです。多分後者だと思います。

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