その2【夢でぽえぽえ】
私、北村陽!
最近はしゃっくりをしている人にしゃっくりの止め方をどや顔で教えるのにハマっているぞ!
ちなみに、私の止め方はこうだ!息を大きく吸い込んで、そのままの状態をキープ。
――ヒクッ
あっ、言ったそばからしゃっくりが。
よーし、意識が吹っ飛ぶ限界まで我慢だ!そうすれば止まるんだ。
(我慢、我慢……、我慢………。うっ、苦しい!)
――バタッ
「おーい、陽。この前俺が貸したDX日輪刀ってどこに……ってうわぁっ!?えっ、大丈夫か!?え、死んだ?もしかして死んでるのか?くそっ、まずいな。今まで家族のヘイトをニートの陽が一身に受けていたのに、これじゃあ今度は就活に失敗した俺に向いてしまう……」
~一方そのころ~
うーん……。はっ!?
ここは、もしかして夢の中?確か、私は息を止めすぎて気絶して……。
「――やぁ、また会ったな」
「あ、あなたは!――もう一人の私!」
「フッ、そうだ。俺はもう一人の私。そしてまたの名を、――ポエム星人」
「くそっ、出やがったなポエム星人!あの日以来、私の口癖がぽえぽえになって、家族から汚物を見るような目で見られているというのに!」
「えっ、何それ知らないんだけど……。てか怖っ、お前。普通に嫌なんだけど、こんなやつと同じだなんて」
え、急に裏切られたんだけど。
いや、まぁ。確かに私にキモいって言われる理由があるし、家族もキモいって言う資格があると思うけどさ。
でも、そうしたのはあなたっていうか。いや、もう一人の私だから、私のせいか。
「――コホン。まぁそのことは置いといて。お前は、ポエム星人と名乗るにはまだ力が足りない」
「どういうこと?」
「夢という儚くも脆い場所で俺と再会したというのに、何も思わないのか?もし俺が、この場所でしか会えない存在だとしたら。それは自分にとって、誰が当てはまる?」
「……」
「フッ、やれやれ。やっぱりまだ俺が手を差し伸べてやらねぇといけねぇみたいだな。――インスピレーションは十分か?」
「もう一人の私……」
「さぁ、やれ。胸に浮かび上がったそのお前だけの詩を、世界に響かせろ!」
「うん、わかった。――やってみるよ!」
この瞬間、私の心のページに一つの詩が浮かび上がった。
※ ※ ※
微睡の中、瞼を閉じれば、私はあなたの影を見る。
もう、この目であなたを見ることはないというのに。
遠くへと旅立ったあなたは、今でもあの頃の凛々しい姿のまま。
あの時感じたあなたのぬくもりが、今でも脳裏に焼き付いたまま。
時々でいいので、ここに会いに来てください。
涼しい風が吹く、この静かな教室に。
でも、時々でいいです。
そうでなければきっと、私はあなたとの思い出を涙で濡らしてしまう。
滲んで、くすんで、黒々とした記憶が、あなたの姿を汚してしまう。
これが、私の最後のわがままです。
どうか、きれいなままのあなたでいさせてください。
そして、お幸せに。
――恋が幻想でないと、私に教えてくれた人。
※ ※ ※
「……」
あれっ、私……、泣いてる?
「その詩は、お前の初恋か?」
「……うん。初めてできた、彼氏。……でも、もうずっと前の話。はは、今は何をしてるのかなぁ……」
――上を向いて歩こう
――涙がこぼれないように
でも、涙がこぼれちゃうよ。こんなの。
嬉しくて、楽しくて、夢みたいな日々だったのに。もう、夢でしか会えないんだから。
「今のお前は恋を忘れているのではない。あの恋が忘れられず、今でも心を蝕んでいる」
「そっか。でも、こうして言葉にしてみたら、すっきりしたよ。――へへっ、ありがと」
「フッ、お安い御用さ。……おっと、そろそろ時間だ。俺はそろそろ姿をくらますとしよう」
「うん、わかった。じゃあね、ポエム星人」
「あぁ、またな。もう一人の私」
こうして夢から覚めた私は、ポエム星人として磨きをかけていくのであった――。
「……ってことを考えたんだけど、どうかな?お兄ちゃん」
「あぁ、後半はまともだったけど、最初がゴミみたいな出だしだから全部台無しだ。まるでお前の終わってる人生みたいだな」
「ぽ、ぽえぽえ~!?」
~fin~




