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4  誕生、長部長兵衛と大関組

リズム(律動)を持った曲を作り始めた長部長兵衛。

が、彼は直ぐに限界を感じた。

今この日の本にある楽器では、長兵衛の生み出そうとする楽曲を奏でるには無理がある。


長兵衛は、自ら作った。

携帯六弦琴。

据置六弦琴。

連結金物太鼓。

槌叩弦箱。

人力多重音発生箱。


もうひとつの限界。それは人。

長兵衛が求める音を出すには、前記のような多くの楽器と、それを演奏する多くの人がいる。


長兵衛は、人を集めることにした。

今、日の本に現にある楽器の演者に、長兵衛が考案し、作成した楽器を演奏させようとは思わなかった。

既に何らかの癖を身に付けている者ではなく、どのような楽器も演奏したことがない者。

それでいて音楽が、特に長兵衛が作った楽曲を受け入れ、その音に感動する者。


長兵衛は、携帯六弦琴を持って街に出た。 

長兵衛が住む西宮。大坂。そして、伏見、京まで。


長兵衛は、人が行き交う場所に立ち、自らが、考案した携帯六弦琴を鳴らし謡った。


行き交う人は何事が起こったのかと立ち止まる。

日の本の人びとが初めて聴く、リズムを持った曲。


中には顔をしかめてその場を去る者もいたが、多くの人が立ち止まり聴きいった。


演奏が終わると、さらにもっととせがまれる。

長兵衛は、次々に演奏した。


だが今の長兵衛には、自作の曲を人びとに聴かせるよりも、もっと大きな目的があった。第一、携帯六弦琴一本で演奏できる曲は、長兵衛が本当に作りたい曲ではない。


聴く人びとの中で特に熱心に聴き、若くて、携帯六弦琴に大きな興味を持ち、自分も弾きたがる者。


長兵衛は誘った。一緒にやらないかと。食べること、住む場所の心配はないからと。


こうして、摂津国西宮。長兵衛の実家である造り酒屋の近くに父、文治郎が建ててくれた、住居兼演奏場に十人を超える若者が集まり長兵衛が考案し作成した楽器で長兵衛が作った曲の演奏を稽古した。


一年が経ち、その場所に集まった若者たちの演奏が、長兵衛が思う合格点に達したとき、長兵衛は、人びとの前で演奏することを決めた。

演奏するに当たって、長兵衛は、この集団に名前を付けた。

相撲の力士の最強者の称号。


「長部長兵衛と大関組」が誕生した。


人びとの前での初演奏会は、大きな評判をよんだ。


二回目の演奏会を終えたとき、二十代の半ばであろうと思われる女性が長兵衛に話しかけてきた。


私は、多くの乙女たちによる踊りを見せることを中心とした一座を率いている。私たち一座に加わってほしい、この楽曲を使えば全く新しい踊りを創造することができる。この日の本で誰も見たことも聴いたこともない芸能を新しく作ろうではないかと。


出雲阿国と長部長兵衛はこうして出会った。


長部長兵衛には明確なモデルがいます。

ご本人が本名で構わないよ、とおっしゃっておられましたので、はい、長部正和さんです。

作者とは、小学生の同級生。たしか一年から四年まで同じクラスだったと思います。

大関酒造の社長のご長男でしたが家業は継がず、音楽の道に進まれました。

小学校卒業以来、全く会っていなかったのですが、今年同窓会で会い、お話させていただきました。

彼は「W-trap」という男女三名のグループでメジャーデビューされた経験もお持ちで、今は、アニメの主題歌やアイドルグループの曲等を作曲されているミュージシャンです。

今回の件で、何かご自身を表現するキャッチコピーありませんか、と訊ねたら

「欅坂46 から 松崎しげる まで守備範囲は広く浅く」

と言うのがそのお答えでした。

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