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エピローグ

 あれから四日経ち、昨日、フィーネが言っていた増援がメルヘンシティに到着し、迅速にルカードが拘束された。

 最後の最後までアルとメルが抵抗しようとしたらしいが、当のルカードが何ら抵抗の意思を見せずライフレス達に投降したらしい。

 これからルカードは死ぬまでローワン・アヴェルズというライフレスに監視される事に成る。

 再びゴーレムを創り出そうとすればその場で殺されるだろうが、ナックルが引渡しの際見た限りではもう新たなゴーレムを作ろうとはしないだろう。

 結局、稀代の錬金術師、ルカード・サンドリヨンの元に残ったゴーレムはアルとメルのたった二体。

『あの子達ならルカード様に最後まで尽くすでしょう』

 マリアの言葉がナックルの記憶に新しい。

 ちなみにだが、ナックルの右腕は奇しくもスノーホワイトタウンの噴水へと突き刺さっていた。

 観光名所を一つ破壊してしまい、多大な請求金額が届くかとナックルは戦々恐々していたが、フィーネが先回りして金を払っていたようだ。


 後顧の憂いは完全に無くなり、ナックルは今メルヘンシティを発たんとしていた。

「ナックル、一体何処へ行くの?」

「考えてないな。とりあえず、海でも見に行くか」

 そんな彼の左隣で白を基調とした動き易いパンツスタイルのリンダが歩いている。リンダの更に左ではマリアが楚々とした態度で歩いていた。

 リリーに溶かされたマリアの右腕は徐々にだが再生を見せている。一年か二年もすれば元通りに成るだろう。

 リンダとマリアの処遇だが、一先ずナックルが責任を持つ事に成った。

 彼女達はゴーレム。〝発明〟によって生み出された兵器の一種である。ナックルの仲間達の中では即刻破壊すべきだという意見もあった。

 昨日一日中話し合った結果、リンダとマリアどちらかが人類に害を為そうとした場合、ナックルがその場で破壊するという事を条件に二人は今存在を許されている。

 この話はリンダとマリアにも伝えてあり、彼女達は「それで自由に成れるのなら」と頷いたのだった。

 それもあって気ままな一人旅を続けていたナックルに久しぶりに同行人が出来た。

 過去にナックルと共に旅をした人間はまあまあの数居たが、ゴーレムと共に旅をするのは初めてである。

 テクテク。

 ストスト。

 タン、ガシャ、タン、ガシャ。

 三者三様の足音を立てて、メルヘンシティを歩くと程無くして町の出口へと着いた。

 五歩も歩けば住所とすればこの町から出て行くことに成る。

 五歩。

 四歩。

 三歩。

 二歩。

 一歩。

 そこでリンダは急に立ち止まり、クルリとメルヘンシティを振り返った。

「……」

「……リンダ」

 マリアが何かを言おうと口を開くが、結局彼女は何も言わなかった。

 ジィッとリンダは眼に刻み付けるように町の風景を見つめる。

 ナックルは何となくだがリンダが今何を考えているのかを想像した。

 彼女は今までこの町の外に出た事が無いのだ。

 初めて踏み出す外の世界とは一体どの様な物なのだろう。

 一体、これから自分はどの様な物を見られるのだろう。

 何処まで自分は行けるのだろう。

 そんな事を思っているのかもしれない。

 リンダがメルヘンシティを見つめた時間は二十秒ほどだった。

 クルリとリンダは灰髪を揺らしてメルヘンシティへと背を向ける。

「うん。待たせたわ」

「良いさ。時間なんて飽きる程ある」

 リンダにそう返事をして、ナックルはリンダとマリア両方に左眼を向けた。

 形は元に戻ったが、金属の右半身には未だ感覚が戻っていない。

 だが、これはこれで面白そうな旅に成りそうだと、ナックルの左頬はニィッと歪に笑った。

「さて、じゃあ行きますか」

「うん」

「はい」

 リンダとマリアの返事を合図に、三人は同時に最後の一歩を踏み出し、目的地も不明な旅へと出発したのだった。

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