第一章 《がん発覚》
夕焼けがとても綺麗だった。会社の帰り、久しぶりに空を見た。
何かの予兆なのだろうか。空が真っ赤に染まっていた。血のように・・・
2025年4月某日 「ベルサイユのばら」の劇場版アニメのCMがながれた。
「え?!!」12歳の時、「週刊マーガレット」に連載されていた漫画、
学生のころ「ベルサイユのばら」にはまり、
色々なことに興味を持った懐かしい時代を思い出した。
60数年生きてきて、初めての命にかかわる病気、「乳がん」と宣告された。
会社の検診で見つかり、総合病院へ紹介状とともに廻された。
父母の家系には、がんで亡くなっている人はもちろんいるが、遺伝的要素は無い。
かの有名な「アンジェリーナ・ジョリー」が行った検査と同じ、
血液をアメリカに持ち込む高額な検査、BRCA1/2遺伝子検査。
遺伝的な発症ではないと検査結果が出た。
私もそう確信していた。
自分は、遺伝的には頭の病気、脳梗塞、脳溢血、
くも膜下出血などの父方の遺伝の病気、
それに罹ると思い頭の検査に費用を費やしていた。
それか、大腸の病気、ポリープが出来やすいのだ。
でも、今まで3回切除したが、良性であり、直ぐ死には繋がらない。
数年に1回検査をしていれば、何も起きないと・・・
テレビや新聞、ネットで見かける有名人のがんのニュース、
今は3人に1人はがんで亡くなるという、他人ごとのように分かっていたはず、
でもそれが自分の身に起ころうとは思ってもみなかった。
あーだめだと思った。死さえ考えてしまった。
総合病院で、右だけにあったがんが、左にもみつかり、ステージⅠという診断。
放射線、抗がん剤治療は、リンパ節に転移していなければ、全摘手術により、
寛解の可能性が高いと言う医師の判断のもと両側全摘手術という選択をした。
体全体の検査が終わり、どこにも転移は見られないという結果が出て、
入院・手術日も決まり、会社にも報告し、休暇がもらえ、
上司・同僚にもそれとなく理解が得られ、何一つ問題はないはずだった。
淡々と私には考えられない現実が勝手に決まって行く。
他人事のように、心が2つに分かれて、現実に無関心の私が表に出てきて、
事の重大さを無視している。
「ベルサイユのばら」今、またこの出会いに感謝、
いやまた「ベルサイユのばら」に時めいた青春へ逆戻りしようとしている私がいる。
逃げているのだ、何かに気を紛らわせないとやっていけない。このままでは・・・
入院も手術も経験が無い私に、
この現実は、この手術までの時間は、着実に迫ってくる。
今はネットが飛び交い私に「ベルサイユのばら」を毎日触れさせてくれる。
映像で、小説で、音楽で・・・毎日、好きなクラシックを聴き、
時間があれば、「ベルサイユのばら」の架空小説を読み耽っている。
そしたまた、私の大好きな、同い年のサラ・ブライトマンのコンサートの情報が
何故か知らされ、運よく安く、S席のチケットが手に入り、
観に行くことが出来た。車もホテル内に運よく停めることが出来た。
運よく?運が本当にいいのだろうか?
またも病気に無関心の私が、サラの歌声に涙して、感激して、高揚している。
もう、すぐそこまで現実が迫ってきているというのに。




