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神隠しって、二度もあるものなんでしょうか?  作者: 雪柑ジュレ


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2/5

神隠しは突然に①

連続投稿です。

チェックはしてますが誤字・脱字があったら申し訳ありません。

楽しく読んでいただけますように。

激しくなるサイレンのアラームで目が覚める。そういえばなかなか起きられないから

アラームの音量をMAXにしてた、と眉間に皺を寄せた。MAXでなくてもよかったかも。


「もう起きなきゃ・・・。」


眠い目を擦りながら大きく伸びをして、寝る前に椅子に引っ掛けておいてタオルを首に巻く。

勉強机の上に飾ってあるキャビネ写真に目をやり、快活に一声。

「おはよう!お母さん」

仲良く写真に収まる両親はまだ幼い自分を抱える様にカメラに向かって笑っている。

微笑ましい一コマ、かつての幸せだった私の家族。


遊園地へ遊びに行った、いつもの週末。なんのことはない、他愛ない、でも確実に楽しい家族の週末になるはずだった。


 ーー自分が行方不明になるまでは。


両親がちょっと目を離したすきにいなくなった我が子。半狂乱になって捜し歩いた父親、呆然と

したまま動けなくなった母親。たった5歳の子供がものの10秒ほど手を離しただけで姿を

消したのだ。父はずっと遊園地に通い続け我が子を捜し歩き、母は日に日に壊れていってしまった。心が壊れた母親は、現実を受け止められずにそのまま帰らぬ人となったそうだ。


父親は『神隠しにあった我が子』を隠すように引っ越しを繰り返し、高校生になった娘は

遠方の学校の通学を理由に一人暮らしをすることになった。

父親には再婚の話が昨年からずっと出ており、要は問題アリの娘はここで放置されたのだ。

さして心に響くものもなく、淡々と受け入れた娘の姿を見て父親は何を思っただろうか?


「・・・すまない」


絞り出すような声で謝罪する父親の姿を、もう見たくなかったから、すぐに家を出た。

もう、泣きじゃくる年でもないし、父親だってきちんと養育の役目を果たしている。

ーー金銭の面では。


キャビネ写真の隣にある観葉植物がチラチラと陽の光に反射している。

こちらで見つかった時、まだ情緒不安定だった瑞希が父親に連れられて祖母の家に遊びに行く道中のSA(サービスエリア)で買ってもらったもの。

キラキラと光が散らばるように光っていて不思議に思って手に持っていた。

父親がそれを買ってくれてから、ずっと一緒にある。


アジアンタムと言う名の植物は葉がふわりと広がり、今は中くらいの鉢に収まっていた。あの時からずっと光を散らばるように輝く植物は私の感情に敏感だった。

私が嬉しいと輝きが強く落ち込んでいたりすると慰めるように煌めく。


「今日も綺麗に光ってるね。学校行ってくるね」

声をかけると嬉しそうに(そう感じる)光る観葉植物に、くすりと笑うとそのまま洗面台へ。

顔を洗っていたら、スマホが鳴った。


『おっはよー瑞希。もうすぐ瑞希のマンション付近!一緒に行こう』


友達の元気な声にオッケー、と返事をしてスマホを切る。

リュックに朝食用に玉子サンドをラップに包む。弁当は途中コンビニで買うことにする。スマホを制服のポケットにいれてワイヤレスイヤホンを右耳だけ装着。

お気入りの音楽を聴きながら大きめの布トートバッグにジャージ上下とクラスTシャツを入れる。今日は5限目に体育がある、最悪だ。


「今日、すごい荷物だな、肩痛い」

瑞希はムスっとした声で言うといつまでもキラキラ輝く観葉植物に目をやった。

「なんか今日は一段とキラキラしてない? どうしちゃったの」

全部荷物を肩にかけて背負ってから空いた右手で観葉植物の鉢に触れる、と同時に友達からの

催促のスマホが鳴る。


「は・・・」

鉢に触れた瞬間に、輝きを増し光の中に捕らわれ視界がなくなった。

眩しさに硬く目を閉じてその間にもスマホの着信音が鳴る。

視野が広がるころ、着信音がプツと途絶え、目の前の光景に絶句した。


「なに・・・、ここ・・・・」


湿度を含んだ樹木や草の匂い、様々な鳥の鳴き声、深い森の中に瑞希は立っていた。

高い樹々の隙間から陽の光が差し込む様は写真で見るなら癒されるだろうが、突然

そこに立たされるのとは訳が違う。たった今、今の今まで自分の家にいたのだ。

学校に行く準備をして、もうすぐ友達もマンションの下へ到着すると言っていた。

「そうだ、京子・・・!」

友達の京子からの着信、ポケットのスマホを慌てて取り出すが、圏外になっていた。

うそ、半べそになりながら履歴から何度も電話をかける。

電波の届かない所云々のアナウンスもない。もうっ!!と足を打ち鳴らす。


「なんでよ、また・・・」

涙が出てくる。悔しい、なんでまた私なんだろう。


「なんでまた私が神隠しにあってんの・・・」


瑞希はその場に崩れ落ちる様に蹲って、泣いた。



お読みいただきありがとうございます。

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