56.「そっか。お勤めご苦労」
夕暮れが深い薄暗い道を、明かりも付けずに駆け足で教会へ戻る。
そーいえば、昨日、娼婦を叩いていたエロオヤジと、モメたなぁ。
今日は無視して帰るぞー
と思ってたら、前方にチンピラ風の男が二人。
なによーまたもめごとーと思ったら。
あたしを見て、ヒッとかギャッと唸って隠れようとする。
誰だっけ?
気になるので「何か用?」と声を掛けてみる。
「イ、イ、イエ、滅相もナイ…」
「無いです無いです、用事なんて無いです無いです…」
ん-どっかでみたヤツらだよね。
あー教会を襲撃してマムちんからお金を強奪しようとしたゴロツキかー
弱っちー奴らだったねぇ。
良かったね、今、あたし、気分がイイんだ。優しくしてあげられるよ?
「用事もないのに、何やってんの?」
凄まれたとでも思われたのか、さらに顔と声が上ずっている。
だから、今のあたしは機嫌がイイんだってばー
なによ、その鬼でも見るような態度は?
「みみみみ、見回りを…」
「バカッそれは言っちゃダメなヤツ…」
言いかけて、漫画みたいに口を手で押さえる。ん-漫才の方だったかな?
「見回り?」
なんの?
言いかけて、ヤメた。
原因は、あたしか。娼婦や客とモメごとを起こした、あたしのせいだね。
ん-ゴメン。
ゴメンはともかく、アンタら、一応のお仕事というか、ショバ代を取るなりのことはヤッテんだねえ。
でも、なんであたしに言っちゃダメなヤツ、なの?
イイじゃん、別に。お仕事なんだし。
問い詰めようか、とも思ったけど。
ま、あたしには関係ない話、よね。
「そっか。お勤めご苦労」
指を揃えて額の横に、斜めにしてかざす。
軍隊式敬礼ってヤツだけど、伝わらないみたい。
ま、いっか。




