158.「女の子の髪は、綺麗じゃないとね」
マムちんとの久々の晩酌の席で。
あたしは、子供たちの将来について、相談してみた。
っていっても、大したことは言えないんだけどね。
マムちん、どう思ってるのかな、って位の話なんだけどさ。
「アリは、婿を探せばよいと思っていますよ」
「婿?」
シュランじゃなくて?
「青き清浄の、あの子。イーシュなんか、いかがかしらね?」
旨そうに、実に旨そうにバーボンのロックを傾けながら。
おつまみでも探すように、そんなことをいうマムちん。
「えーダメだよそんなのーあのスチルの表情、見て見なさいよー」
院長室に飾られた、アリとシュランの写真。
あんな顔されたら、他の男なんかあてがっちゃダメに決まってるでしょ!
「そうはいっても、男の側に女を養う甲斐性がないとねぇ」
そりゃそうだけどさー
なんかマムちん、楽しそうだね。
「イクミは、シュランを一人前に育てるおつもりなのかしら?」
あ、これ、あたしを煽ってるのかー
やるな、この策士マムちんめ。
「ん-冒険者は結構危ないお仕事だけどね。本人がやりたがってるからね」
「一度、やらせてみたらいかがかしらね?」
まぁ、そうなんだけどね。
「マムちんさ、あたしらが迷宮に潜ってる間に、子供たちになんかあった?」
「ええ、ありましたよ。聞きたいのかしら?」
なによーもったいぶって。
ホント、マムちん穏やかになったねぇ。
ウンウン言うと、簡単に説明してくれた。
ま、冒険者に憧れる男の子たちに、女の子たちが危ないから止めて―って騒いでるって事なのね。
あたしという、良くも悪くもハッキリ分かるお手本がいるからね。
女の子たちにとっては、ああいう荒くれにはなって欲しくないんだろうね。
あたしに対する態度が微妙なのは、その辺のせいかしらん?
「男の子にそういうのを止めようと思っても、難しいと思うんだけどね」
「そうですね。それで、イクミは、これからもシュランの面倒を見てくださるのかしら?」
話が戻ってきたね。
「まあ、目途がつくまで位は、付き合ってもいいけど」
「良かった」
マムちんはにっこり笑って。
「当時は、聖女ミヨの付き人にさせようか、とも思っていたのですよ」
え?
あたしとみーよは、顔を見合わせる。
マジで?
それ、もしやったら、アリちゃん、本格的に怒らないの?
「でも、シュランはそれだけはイヤだ。俺はアリの付き人に成るために頑張ってきたんだと言い張ってねぇ。彼の言い分も分からなくはないので、無理には勧めなかったのですけど。でも、今ならば、出来るかもしれないですね」
うわぁ、そうなんだ。
みーよ、知ってたの?
ううん、初めて聞いた。
アイコンタクトして、あたしたちはマムちんのご機嫌な顔を見つめる。
みーよとアリちゃんの三角関係?
うわぁ、修羅場だねぇ。
子供たち、色々考えるのはいいんだけど、ね。
~ ・ ~
あたしたちのそんな心配なんか気にもしないで、アリとリコットはシャワーを浴びてご機嫌のようだ。
あたしがシャワーを浴びる準備をしている間に、みーよがドライヤーを奇跡で召喚び出している。
「な、なんですか、それ?」
みーよはにっこり笑って、アリを座らせる。
「女の子の髪は、綺麗じゃないとね」
アリの髪がドライヤーで乾いていき、櫛で漉いて貰っているのを、リコットがワクワクしながら見つめている。
次は私の番、私の番なのね!
当人のアリは、三面鏡に映し出される自分の姿と、髪を乾かして貰い、漉いてもらう気持ちよさに、もうメロメロだね。
シュランとみーよとの、三角関係か。
そうなっちゃったら、アリちゃん、さぞや頑張っちゃうんだろうね。
そうよねぇ、この娘、磨くと結構な美人になりそうなのよね。
いいなぁ。
ま、あたしはあたしか。顔はともかく、身体で悩殺すればいいんだもんね!
気分よく身体を洗い、久しぶりに感じる、地上で、我が家で、安心して、あたしは眠りについた。
(つづくっ!)




