1.だから、もっと、こう、盛り上げてよ!
新連載、開幕。
「俺は、高校生には興味がないんだ、ですって」
「それは聞いた」
「だが、お前がハイスクールを卒業して、それでもまだ俺に気持ちが残っているのなら、その時は、改めて考えてやろう、ですって!」
「それも聞いた」
「将来を約束し合った、愛し合う二人、なのよ! 素敵でしょ凄いでしょラブミーでしょ!」
「ん-それは違うと思う」
「なによぉ! 乙女のコイバナに茶々いれないでー!」
「コイバナってより、チョロい奴と思われてる、としか思えないよ?」
みーよはメロンフロートのバニラアイスを長いスプーンで転がしながら、冷静な目であたしを見つめる。
たしかにあんた、可愛いよ。男に結構言い寄られそうなお嬢様だよ。
でもね、あたしにとってはこんな純情を打ち明けられる数少ないお友達なのよ!
だから、もっと、こう、盛り上げてよ!
「だって結構言いふらしてるじゃん。クラスメイトとか、子分どもとか」
じとっと、軽く睨まれる。
あれ? そーだっけ? あたしそんなに自分の恋愛を言いふらしてなんかいない。
いない、よね?
「こないだ、裏番長さんに泣きつかれたよ。3時間位、理事長室で子分たちと一緒に恋の話を聞かされ続けたって」
3時間?
ん? 30分くらいだったと思うけど?
「白川センセ、次の授業があるのに郁ちゃんに恋の相談だとかで付きまとわれて。男の人ってどんな風に迫ればいいのか聞かれたって。そんな相談されても困るって、言ってたよ」
そんな話、したっけ? 授業の事で分からないことがあると相談に行ったふりして、聞いてみたことはあるけど?
そんなにしつこく迫ったっけ?
「パパ、郁ちゃんが折角自分の娘になったのに、もう嫁に行こうとしてるって嘆いてたよ」
それは、別にどうでもいい。あんなポンスケに構ってるほどヒマじゃないの、あたし。
「わたしとも、最近付き合い悪いし」
「えー? 今、こうして付き合ってんじゃん?」
「だってぇ、何とかの彼氏の話ばっかじゃん。まだちゃんと付き合ってもいないのにー」
ンなこと言ったって。
ジョシコーセーのコイバナって、サイコーじゃん!
世の中にこんなに素敵なことがあっただなんて、知らなかったんだもん。
親友に打ち明けたいじゃない、話を聞いて貰いたいじゃない、そういうもんじゃない?
違うの?
「郁ちゃんさ、もしもだよ、わたしに何かあったら……」
ん?
なんか、あったの?
「助けに来て、くれる?」
「そりゃ行くよ? なんかあったの?」
心当たりはないこともないけど。
でもねぇ、今んとこ平和でしょ?
あたしの番長関係は、無くもないとは思うけど。
連中だって、みーよに手ぇ出したらどうなるかって事位は、さすがに判断できるんでしょ?
馬鹿じゃないんだから。
いや、バカばっかりか。
それならそれで“再教育”すればいいだけの話だし。
んじゃ、あたしじゃなくてみーよ本人関係?
ん-お嬢様の交友関係は、ゴメン、ちょっとワカンナイんだよねー。
ま、あたしの力の及ぶ範囲なら、助けるけどね。
みーよ、あんたがあたしを助けてくれたように、ね。
「ううん、なんでもない。でも、助けてくれるって聞いて、安心した」
にっこり笑うみーよ。
……あたし、あんとき、もっとちゃんと話を聞いとけば良かった。
だって、みーよにこんなことが起こるだなんて、全然知らなかったから。
みーよって、ただのお嬢様だって、思ってたから。




