第十六話 不調
お久しぶりですね。遅れてすいません。
「さて、悠?宴会に戻るわよ」
「はーい」
「なんか悠......変わったわね」
「そうかな?......嫌?」
「いえ、別にそんなんじゃないわよ」
何か、変わったんだ。私は変われたんだ。
◇◆魔理沙視点◇◆
「なんなんだぜ?これ」
霊夢と不審者が戦ってて、私のマスパを撃ったと思ったら急に和解してた。少し離れた場所に隠れてるせいで声がよく聞き取れない。本来ならもう見つかってるから隠れている必要は殆ど無いんだがな。
ともかく、戦いが終わったんなら早く宴会に戻りたいんだぜ。夏だから虫も鬱陶しいしな。
「おーい霊夢ー。終わったんなら早く戻ろうぜー。」
◇◆悠視点◇◆
「おーい霊夢ー。終わったんなら早く戻ろうぜー。」
魔理沙が隠れていた茂みから帽子をかぶり直しつつ出てきた。私を見ると怪訝そうな顔で、
「んで、結局コイツは誰なんだぜ?」
「魔理沙もよく知ってるやつよ。お面、外したら?」
「ん。わかったよ。」
言われた通り、お面を外す。ほんの数時間しか着けていなかったのに何日も着けていたような、何か名残惜しいような気がする。
「悠……か!?お前どこに行ってたんだ?霊夢のやつ、凄い心配して……モゴモゴ……」
「はいはい。あんたは黙って宴会に戻ってなさい」
「モゴ……ぷっは、わかったぜ。霊夢もさっさと戻って来るんだぜ」
魔理沙はひらひらと手を振って宴会に戻っていく。
「さ、悠?行きましょう?」
「……はいっ」
出された手を握って笑いかける。霊夢さんもふっと笑ってぎゅっと握り返してくれた。
神社の中に入るとわいわいガヤガヤ、雑然としていた。
一歩踏み入ると宴会やお祭り特有の高揚感が身を包むが、何処か冷めた自分がいた。
角が生えた小さな鬼も。
九つの尾を持つ狐も。
紅い目の吸血鬼も。
白黒のただの魔法使いだって。
真横にいるはずの紅白の巫女すらも。
「あっ!悠!やっと来た!」
「……ん?あ、フラン?」
聞き覚えのある声と同時にお腹のあたりにぽふっと頭が当たる誰かが抱きつく感覚。
ブロンドの髪に七色の羽根を生やしたロリっ子。スカーレット・フランだ。
にぱーと純真無垢に笑い、ぎゅっと抱きしめてくる。……流石吸血鬼と言ったところか、少し痛いが。
瞬間、目の前の景色が急激に変化していった。博麗神社が崩れ、再構築される。木製の天井はぐっと広がり、冷たい灰色に覆われ、畳は曇りひとつないフローリングに変換される。障子も壁も真っ赤に色づけされた洋風に変わる。私は部屋の中央に立ち普段自分でも浮かべることのない不敵な微笑を浮かべ、耳まで裂けてるのではと思わされるような狂気に満ちた笑みを浮かべた相手、フランドール・スカーレットに向かい合っている。
私、いや二人は何かを喋っている。しかし音は聞こえない。何故か。
私自身にはこんな記憶は無い。はじめてみた光景。
ナゼ、ワタシハコレガジブンダト、イヤ。コノキシカンハ、イッタイ……?
突如、激しい頭痛が私を襲った。とても立っていられないほどで、うずくまって頭を抱えてしまう。同時に目の前の風景も変わっていく。まるでブラックホールに全て飲み込まれ再び吐き出されるような、気味の悪い、頭の中も何もかもぐちゃぐちゃにされるような、そんな感覚。
「……う……ゆう?…悠!」
「!?」
急に頭痛から開放され、顔を上げると、フランと霊夢が心配そうな顔でこちらをみつめていた。
「ど、どうしたの……?急に頭なんか抱えて……」
「何があったの?瞳孔開いてるわよ?」
いや。冷や汗が止まらない。照明が必要以上に明るく感じる。体が気だるい。なんだこれ、なんなんだこれ。”私に何があった”
自分は霊夢と弾幕勝負をして、そのまま宴会に来たはずだ。何が今私をこうさせている?この全身の不調はなにが原因だ?わからない。
「ごめんなさい……ちょっと調子が……休ませてもらいます……」
「え、ええ……大丈夫?相当酷い顔色だけれど」
「だいじょぶ……です……」
足がふらつくが、なんとか母屋に引っ込み、寝室に入る。能力で布団を出すのももどかしく、倒れこむように布団に入る。急速に意識が溶け、落ちていく。
最後の瞬間、視界の端に何か、赤く光るものが見えた気がする。




