第一話 初めての異世界
綺麗な人だ、と思った。サラサラの綺麗な茶髪に可愛いリボン。紅白の巫女服が似合うスタイル。どれをとっても美しい。
そう思ってしまって、私はぽーっとしていた。
「どうしたの?顔赤いわよ?本当に大丈夫?」
その呆けている時間が致命的だった。この美しい人が、私のおでこに手を伸ばし、触れているではないか。私はバッと離れ立ち上がる。
改めて辺りを見回すと、東京では有り得ない景色が広がっている。目の前には神社が、小さくは無いが、大きい訳でもない。ちょうどいい感じの神社だった。そしてその周りには、樹、樹、樹!そこらじゅうが樹に囲まれている。
「ちょっと……。貴女は誰?見たことない顔ね……」
「あ、すいません。私は木下悠といいます」
「悠さんね。私は博麗霊夢。よろしくね」
「よ、よろしくお願いします」
お互いに握手をする。額に触られた時も思ったけど、霊夢さんの手すべすべ……。
「それで?悠さんは何処から来たの?見慣れない格好だけど」
「何処から来たかと聞かれましても……。そもそもここは何処ですか?」
「ここ?ここは幻想郷の博麗神社よ。」
幻想郷?博麗神社?聞いたことの無い単語が聞こえる。言葉が通じるという事は、日本のどこかだと思うんだけど……。
「ここは……日本ですか?」
「日本?どこのことよそれ。ここは幻想郷。言ったでしょう?」
これで確信した。ここは幻想郷という異世界だ。そもそもどれだけ田舎といってもこんなに自然があるはずがないし、ましてや自分の国が解らない何てことは無いだろう。だったら……。異世界ととった方が筋が通る。
「ちょっと何考えこんでるのよ。悠さん?」
「あ、すいません。私、別の世界から来たみたいなんです。」
「え!?そうなの!?……まったく、しょうがないわね……。多分紫のせいね。本当にこういう気まぐれは止めて欲しいわ」
「気まぐれじゃないわよ。そもそも私じゃないし」
いきなり霊夢さんの後ろの空間が裂けて、そこから女の人が上半身だけ出してきた。驚いて動けない私を尻目に、二人は会話を進めていく。
「紫以外なら誰がするっていうのよ」
「知らないわ。少なくとも私では無いわね。」
「紫以外にやりそうな人知らないんだけど」
「霊夢あなた私を何だと思ってるのよ……」
私を抜いて勝手に話が進む。また人生が狂っている。果たしてこれが良の狂いか、悪の狂いか。
「あ、あの!霊夢さん!」
「何?あとさんなんて付けなくていいわよ。」
「え、えぇ。じゃあ私も悠でいいですよ。私は、日本の東京って所から来たんですけど……」
「へぇ?……あなたはその、東京って所に戻りたいの?戻りたいのなら帰してあげるけど?」
「いえ……いいです。あんな腐った世界に戻るぐらいなら、この世界で新しい人生を始めますけど……」
「そう。それなら悠は私と一緒にこの神社で働いてくれない?幻想郷の事も色々教えてあげる」
どうやら、良の狂いのようだ。