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【修正作業中】the magician's reunion  作者: 冴木遥
第一章 魔術師たちのはじまりの焔
22/22

第十八話 自由気ままな二人旅

ガタンガタン


ポーと景気よく汽笛があがる。


「そういえば俺汽車乗るのはじめてだ。」

「このお坊っちゃまめ。」


科学と魔法が混在する今の世は、移動するのにさほど困らない。なぜなら、魔法を使って直接目的地まで移動したり魔法具を使用して移動できるからだ。しかし、魔法はそんなに多く貯めておくことはできないし、第一、魔法使いはほとんどこの世にはいない。世界中どの国も人口の2割か3割程度だろう。自分自信で魔法を使うならまだしも、一般人が魔法で移動するには、ピンキリな魔法使いから魔法具を購入し、魔力供給契約を結ばなければならない。そんな面倒臭い事をするくらいなら、人を選ばない科学の方がいい。だからまだまだ科学が必要だ。

しかし、貴族ともなると一族皆が魔法を使えるため、科学を必要としない。


「何それ~、嫌な言い方~。」

「うるせーよ」


私たちは現在汽車の中、私の実家に向かっている。テスト週間が明けて、ようやく解放された私たちを待っていたのは、茹だるような夏の暑さだった。寮に居ては熱中症になるような気がしたが、講習はまだ始まらない。講習はお盆が終わってからとなっている。それに、学校に行こうにも閉鎖され、ネズミ一匹入ることが出来なくなっている。寮にはクーラーもあり、冷房をつけていても、窓から見える陽炎に、暑くないのに暑いような気がしてならない。

その、気休めのためにも、実家に帰る奴らは多い。気休めという理由以外に、魔法使いは御霊(みたま)などといったものを大事にするため、お盆は必ず帰るのだが。


「そういえば、お前んとこは親戚・・・いや、一族か、宗家なら一族皆集まって来るんじゃないか?」

「そうだね。」

「・・・抜けてていいのか?仮にも次期当主様だろ?」

「いいんだよ。息子はもう一人いるし、俺みたいなやつはいない方が清々すると思う。」


小さく鼻で笑って言葉を吐き捨てた。

この言い方から、家ではかなり苦労しているみたいだ。


「あれ、葵って兄弟いんの?」


佐倉家は息子がもう一人いるらしい。そんな話は聞いたことがなかっため、少々驚いた。それに、この間絢子に見せてもらった雑誌にもそんなことは書いてなかった。


「うん、あんまり話したことないけどね。」

「へ~、そうなんだ。ずっと一人っ子だと思ってた。」


葵は一人っ子特有の独特な雰囲気を纏っているような気がする。小さい頃には感じることができなかった気配だ。


「まあ、それでも間違いじゃないけどね。」


なんか意味深な事を言い始めたぞ。


「今の当主を父さんって呼んではいるけど、本当は叔父さんなんだよね。」

「は?」

「確か、ちょうどゆうと会った時期に本家に引き取られたんだ。」

「・・・えっと。」

「ああ、気にしないで。母さんが亡くなったとかじゃないから。」


その言葉を聞いて、ホッと気負っていたものが落ちた。

それならそうと最初に言ってほしい。


「まあ、亡くなってるのは父さんの方なんだけどね。」

「え・・・どう言う意味?」


最初は今の御当主が父親だと思っていたが、実際には叔父さんらしい。

父親が亡くなっていて、母親に引き取られ、まだ御健在なのに本家に引き取られるようになった。

なんだか頭が、混乱してきたぞ。


「あ~・・なんか、”外”に置いておくわけにいかなかったみたいでね、本家に戻されたっていうのが、正解かなあ。」


葵もどう返したものかと苦笑いだ。

う~ん。どうやら貴族の家は何かと問題を抱えているものなんだな。困っている様子ではあるけど、これ以上踏み込ませないように警戒している様子が目の奥に見える。


ガラララ


「車内販売です。何かご入り用の品はありましたでしょうか。」

「あ、はいはい、お弁当2つください。」


その場に異様な空気が流れ始めたとき、タイミング良く車内販売の店員が現れた。これは幸いと、とりあえずお昼用の食べ物と飲み物を購入する。


「葵、弁当以外に何か買うか?」


キョトンとしたままの葵に声をかける。初めて汽車に乗るのなら、こういう車内販売も初めてだろう。何か購入したいものがあるのかもしれないと思って聞いてみると、案の定、近くに寄ってきて、カートの中の商品を物色し始めた。


「へえ・・・じゃあ、これとこれ、ください。」

「はい、ありがとうございます。」


会計を終了すると、店員は笑顔で扉を閉めて出ていった。


「時間帯が時間帯だから、お昼どうするのかと思ったけど、こういうことだったんだ。」

「まあね。食堂も前方にあるけど、お前、有名人だからな。」

「御配慮どうも。何か特殊なものとか売ってるのかと期待したんだけど、特に珍しいものとかは売ってなかったね。」


もう少し長距離用の汽車にもなればもう少し珍しいものも売っているかもしれないが、中距離用の汽車にそこまで期待されても、ただのお門違いだろう。


「んで、飯、今もう食う?」

「・・うん、そうしよう。」


話が途中のような気がしたが、あんなに警戒されては根掘り葉掘り聞くわけにもいかないんだろうな。






*****






「忘れ物はないか?」

「うん。大丈夫。」


プシュウ・・・

ガタンガタンガタン・・・ポー・・・


汽車が汽笛をあげながら離れていく。

やっと地元の駅までついた。実家までは、ここからまたバスに乗り換えて30~40分かかるのだが、バスが来るまではもう少し時間がかかる。

そのため、改札を出て近くの喫茶店で暇をつぶすことにする。


「それにしても、暑いねえ。」

「あ~~、そうだな。でも、向こうよりは気温低いらしいし、まだ、いいんじゃね。」

「そうかな。うちは空調管理徹底してあったからなあ、一年中一定気温保ってたけど。」


パコッ


「わ、何でぶつの!」

「なんかムカついたから。」


嫌味を言ったつもりはないんだろうが、イラッとしたため、ちょっと高い位置にあった頭を反射的に殴ってしまった。


「も~・・あ、さっき言ってた喫茶店ってあそこ?」

「そう、あんまり気のりしないんだけど、あそこしか時間つぶせそうなところってないんだよね。」


駅から10分ほど歩いたところにある喫茶店「MISAKI」、こんな田舎町じゃあんまりお客は入らないが、常連客には結構人気だ。


カランコロン


「こんにちわ~。」


OPENと書かれた扉を開くと、設置された呼び鈴が音をたてた。

この時間だと、常連客が結構来ているのだが、肝心のマスターが不在だ。


「お、藤城の嬢ちゃんじゃねえか!!」

「お久しぶりです。」


商店街で魚屋を営んでいるおやっさんがこちらに大声で反応した。そこから、周りでコーヒーを飲んでいた他の商店街のおじさんおばさんがなんだなんだとこちらに寄ってきた。


「あらあら、裕也ちゃんじゃないの。」

「なんだ~、春に町出てったと思ったらもう戻ってきたのか!」

「悪さして退学にでもなったのか?」

「縁起でもないこと言わないでくださいよ!」


はははは、と騒々しくなった喫茶店の中で揉みくちゃにされながら、歓迎される。その間、葵はポカンとした顔をして入口に突っ立っていた。

と、そこへ。


カランカラン


ドンッ!


「ちょっと!邪魔よ!!」

「あ・・・」


ツインテールに髪を結んだ小学生ぐらいの女の子が、葵を押しのけ店内に入ってきた。その勢いに負かされながら、こちらの反応など全く無視して裕也が中心にいるであろう人ごみの真中へ突っ込んでいく女の子を目で追った。


「裕くん!!」

「おわっ!!」


周りの大人たちを押しのけて後ろから裕也に抱きつく女の子が視界に入った。


「見崎!?」

「お帰りなさい!裕くん!」


(なんとなぁく・・・気に入らない。)


取り残されていた葵はそれを見た瞬間、そんなことを思ったとか。


「おっと、なんか店が騒がしいと思ったら、裕也君が帰ってきていたんだね。」

「あ、マスター。お久しぶりです。」

「久しぶり、さてさて、皆、裕也君だって帰ってきたばっかりだろう。とりあえず休んでもらわないと。香奈も、くっついていたいのもわかるけど、席に案内してあげなさい。」

「はぁい。」


こっちにと腕を引かれるが、そこで、入口に棒立ちになっている葵にやっと気がついた。


「葵、こっちだって。」

「!裕くん、その子は?」

「ん?ああ、あいつは・・お?」


急にグイッと反対側の腕を掴まれて見崎と引き離される。引っ張られた反動が強すぎたせいか、柔らかい温かな壁にトンッとぶつかった。


「幼馴染の、佐倉葵です。以後、お見知りおきを。」


上の方からそんな声が聞こえる。もちろんぶつかったのは葵にだ。急に腕を引っ張るから葵の胸に思わず寄りかかってしまった。


「・・・そう、私は見崎香奈。裕くんの彼女よ!」

「いや!違うだろ!!」


何やら二人の様子が怖いんですけど・・どうしてですか。

葵なんか、いつもの猫かぶりを発動してるし、見崎は威嚇している猫みたいに闘争心バリバリだし・・・初対面のくせに何があった!


「葵、見崎は雅樹の同級生で、この店のマスターの娘だ。見崎、葵は学園で再会した幼馴染だ。唯兄に会いたいって言うから一緒に帰省したんだ。」


私の話を聞いているんだか、聞いていないんだかわからないけど、とりあえずにらみ合って火花散らすのやめて!!






*****






その後、常連さんが遠巻きに見ている中、マスターが気を利かせて話しかけてきてくれたおかげで、何とか席についてコーヒーを飲んでいる。


「見崎ちゃん?とりあえず、ゆうから離れませんか?」

「はあ?あんた何言ってんの?彼女なんだからくっついてるのがあたりまえなのよ。」

「いや、だから彼女じゃないし。とりあえず暑いから離れてほしいな。」


ちらりと見崎を見てみると、しぶしぶといった感じに少し離れてくれた。葵はそれを勝ち誇ったかのように薄く笑いながら見ていた。それに気がついた見崎はとても悔しそうな顔をして睨みつけた。


「裕くん!」

「はい!!」

「なんでこんな性格悪そうな奴を連れて帰ってきたの!?」

「えぇ~・・」


急に訳のわからないことを言い出したので対処に困っていると、見崎の頭に拳が落ちてきた。


ゴン


「いったぁい!!」

「お客さまに向かってなんてことを言うんだい、香奈。」

「お父さん・・」

「そうだよ、ただの営業妨害だよ。」

「むぅぅ。」


と、ここにいないはずの声がしたと思ったら、むっつりと黙りこむ見崎のその横に、マスター以外の誰かが立っている。


「・・・雅希、あたかも初めからいたかのような現れ方しないで。」


ついと首を動かしそちらを確認すると、そこには弟の雅希が立っていた。


「あ、雅希君・・?」

「・・・?・・お帰り姉ちゃん」

「ただいま。」


葵が雅希に話しかけるが、誰だか分らなかったからかじっと見つめた後、何も話さず、すぐに私の方を見て話しかけてきた。


「ちょっと雅希!!なんであんたがここにいるのよ!!私と裕くんの邪魔をしに来たの?!」


急に現れた雅樹に意表を突かれた顔をしていたが、すぐに持ち直して、またしても私に抱きつきながら雅希に噛みついた。


「迎えに来ただけ。今さっき着いたばっかりだけど。」


この暑い日差しの中、今まで外にいたはずなのに汗一つかかずにいて、飄々とした表情をしている。こいつは本当に私の弟なのか。まあ、顔は唯兄にそっくりだけども。


弟が出てきました。

漁夫の利になるような性格って・・・どんなのでしょう。

残念な性格のキャラしか考えたことがないんですが・・。

次の話はこのまま続きます。(だって、葵と自己紹介すらしてないもんね笑)

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