かぎりなく純粋な(一時閉幕)
輝いているだけのはずなのに、イラストの線画のような風景をたのしむことができる東ルートを歩くシノハとタイヨウ。
本来は水色に見えるはずの池も白く……見えないはずのさざなみさえも可視化されていた。
されるがままのタイヨウの手をひっぱっている、シノハが歩きながら様子をうかがうような動きを。
やりすぎちゃったかな? 勢いとはいえ。
いやいや……今までのタイヨウの難攻不落ぶりを考えたら、さっきの連続キスでも。
やばっ、本日最強かわかわタイヨウじゃん。
んー、なんか反撃の方法を考えているっぽいな。
「ねえねえ、タイヨウ」
ゆっくりと立ちどまったシノハに声をかけられてかタイヨウがびくつく。
「今日はタイヨウのおねがいをできるだけ、きいてあげるからなんでも言ってよね」
「かなり落ち着いたから……手をはなしてくれても大丈夫だと」
一瞬だけ手をはなし、シノハが恋人つなぎで手をつなぎなおした。
「つぎのおねがいは? どんどん言ってほしいな」
反撃の隙なんて与えてあげないから。
「聞き間違いかもしれないけれど……さっきキスのやりかたを教えてくれるとか」
「教えてほしいの?」
「からかわ」
「あっちなら邪魔が入らなさそうだね」
にやつき、シノハがタイヨウを線画のような木木の物陰のほうへとひっぱっていく。
「冗談だったから……本気にされると」
「ひとつ勉強になったね。下手なからかいかたするとえっちなことをされるってさ」
シノハがタイヨウにキスを。
火色の髪の彼女の動きがとまる。
視界のはしっこで、かろうじて見えた意地悪そうな笑みを浮かべた存在のほうに。
「好きな人を攻めることを覚えたしーちゃんを見られる日がくるとはね」
「大好きな人だから」
絶対に手放さないと言わんばかりにさらに強く、シノハが恋人つなぎをする。
「たのしいでしょう? 攻めまくるのはさ」
「また邪魔しに」
「んーん、しーちゃんもろとも奪うことにしたって言いにきただけ」
ヒオリの姿が消え。
「しーちゃんキスの上書き完了」
恋人つなぎをしてないほうのタイヨウの右手を、セミロングの黒髪の彼女が自分の胸に。
「今のところはわたしのほうが、しーちゃんよりもおっきな胸を」
寒気を感じたのか、ヒオリが全身をふるわせる。
声が小さく……基本的にはシノハがなにを言っているのか、タイヨウとセミロングの黒髪の彼女には伝わってなさそうだったが。
かろうじて一言だけ。
「死ね」
純粋な殺意とともにシノハがヒオリを。
「どこまでマゾヒストなんですか!」
恋人つなぎを強引に突破し……火色の髪の彼女の魔術によってつぎつぎとつくりだされていく、殺意にまみれた氷のかたまりから。
お姫さま抱っこをしたヒオリとともにタイヨウはなんとか逃げ切り。
小さな山のようになっている氷のかたまりの上に黒髪の彼がジャンプし、着地した。
心配そうにタイヨウがほかの人間が巻きこまれてないか確認をするも、不思議なことに辺りには生きものの気配はまるでなかったのかほっとした顔を。
「たすけてくれないんじゃなかったっけ?」
「自分以外の生きものが死にかけていたら」
両腕をつかえず抵抗できなかったからかタイヨウがヒオリに唇にキスをされてしまう。
「にーくんのそういうところ……大好き!」
なんのリアクションもせずに黒髪の彼がお姫さま抱っこをしている、セミロングの黒髪の彼女をおろそうとしたが。
「さっきのわたしの胸の感触はどうだった?」
動きがとまる。
「レン姉さんほどは大きくないけど、またちがう」
「おれが大好きなのはシノハだけですよ」
タイヨウがきっぱりと顔を合わせているヒオリに伝えた。
「告白とかプロポーズもしてないのに真面目だな」
「うぬぼれだと思いますけど……諦めたほうが」
「わたしもしーちゃんがほしいんだよね」
黒髪の彼が発したのであろう、ヤキモチのようなものに反応をしてかヒオリが笑みを浮かべる。
「北瀬くんもしーちゃんのことはまんざらでもなさそうだし。意地悪されちゃったからな、応援とか」
お姫さま抱っこをされていたセミロングの黒髪の彼女が、つららのようにとがった氷のかたまりの上に落とされたが。
くるりと空中で回転し、氷のかたまりの先端部分に足先で着地したヒオリを見てかタイヨウが舌打ちをする。
「試合の申しこみでいいんですよね、今のは」
「独占欲丸出しの表情で言われても」
「エンちゃんこそ……さっきから暴れたい気持ちが隠せてなさそうかと。レン姉に負けたのが」
タイヨウの顔つきが真剣なものへと変わる。
「実力を見抜くのはやすぎない」
「エンちゃんがどれだけ強くても、シノハはあげませんよ」
「そんなこと言われたら奪いたくなるんだけど」
「また腕の一本ぐらいは折られる覚悟でいてくれるとたすかります」
ヒオリがにやにやと笑った。
「どうせなら賭けにしない? 負けたふたりは勝ち残ったやつに一週間ぐらい絶対服従とか」
「絶対服従の期間をのばしたり、命に関わる命令がないのであればいいんじゃないですか」
「しーちゃんに支配されるよろこびに目覚めた?」
「負けることよりも殺されないか心配したほうが」
タイヨウとヒオリが同時に同じ方向を。
目の前に立ちはだかり覆いつくさんばかりの氷のかたまりが一瞬で溶けていき、黒髪の彼が地面の上に着地した。
殺意に満ち満ちてそうな目つきで、セミロングの黒髪の彼女をにらみつけている。
シノハを中心に……青みがかった熱の嵐が。
「さすがに今回はやりすぎちゃったかな……本当にしーちゃんに殺されちゃうかも」
隣に立つタイヨウをヒオリがちらりと見る。
「しーちゃんに殺されちゃうかもしれないな」
「きこえてます、今回だけですよ」
そう言いながら、にーくんは毎回たすけてくれると思うけどな。
ヒオリがぼそりとつぶやく。
「なにか作戦とか」
「にーくんに押さえてもらっている間に、わたしがしーちゃんの息の根を」
しゃがんだヒオリの頭上をタイヨウの高速の蹴りが横切っていく。
「同盟はここまでということで」
「もう一度だけチャンスくれない?」
「結果は同じでしょう……エンちゃんこそ息の根をとめてやるから覚悟しろよ」
わかっていて付き合ってくれちゃう、にーくんも大好きなんだよね。
ヒオリの目つきも変わった。
鈍い音が響く。
青みがかった黒い炎……吹雪とともに一面が。
不思議なことに、さんにんだけしかいない世界。
音がやみ。
燃えさかっている線画のような風景。
その中心に立っているのはひとりだけ。
いつぞや……タイヨウが金剛ミカゲに勝てたときと同じように右腕をふりあげていたのは。
「どろまみれな純恋衣とフィスト 2」(仮)に続く
予定(未定)




