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第六十ニ話

 仁と昇の試合を終えてからそれぞれ男子女子でシャワー室で汗を流す。切明と櫻丘の部員は共同でシャワールームに入るのだが、他の部活も使うらしく、中にはサッカー部と野球部と思しき連中も居た。


 男が数十に集まってもまだまだ広いそのシャワールームでは色々とエロい話で盛り上がっている。




「そういえば、お前等は彼女居るの?」




 昇と慶太郎がシャワーを浴びていると副部長であり副将がそんな事を話し掛けて来た。学年は二年だ。




「居る」


「居ますよ」




 2人の返答に副将が目を丸くし、そして、シャワールームが静まり返った。シャワーの流れる音だけが30人は一度にシャワーを浴びられるであろうシャワールームに響いている光景は、異様の一言で十分に表せる景色だった。




「な、何?居るのか?」


「ああ、そういったつもりだが?


 僕は女子剣道部の井上仁と、慶太郎は山口真だ」




 昇がシャンプーをしながら平然と答えると、周囲から卑怯だとか裏切り者めと言った謎の罵倒が飛んでくる。昇はそれに対して涼しい顔で欲しければ作れば良かろうがと切り捨てる。慶太郎は周囲に居る坊主頭達から睨み付けられて何とも居心地が悪そうだった。




「さ、参考までにお前達が付き合うきっかけになった様子と告白した時の様子を教えろ」




 副将は勿論、他の部員達が昇と慶太郎の周囲に押し掛けてくる。裸体の男に詰め寄られて気分が良いと思うほど昇も慶太郎もストライクゾーンは広くない。昇は寄ってくる坊主頭にシャワーの水を掛ける。




「寄って来るんじゃない、暑苦しい。


 そうがっついて来るからモテんのだ。見苦しいぞ」




 昇の言葉に坊主頭達は一斉に各々のブースに戻る。しかし、昇達の話を諦めたわけではないと言わんばかりに全員が昇を見ている。昇は溜息に似た息を鼻から吐くと、髪の毛を掻き上げる。




「最初に言っておくが、僕と仁の付き合いは言ってしまえば、向こうの一目惚れと猛アタックだ。


 だから、僕の話は君達には参考に成らないだろう」




 昇がそういった瞬間、慶太郎はブースから逃げようとした所で昇がその腕を掴む。万力のように確りと握られて動じない握力に慶太郎は驚愕する。




「先輩からのレッスン2だ。


 適当に言いくるめて来い」




 昇はそう言うと、慶太郎を坊主頭達の前に押し出し、此奴が自分から告白したから此奴に聞けと告げ颯爽とシャワールームから逃げ出した。更衣室でジャージに着替えてから部室棟と呼ばれる運動部の部室が集まる場所に行く。


 途中、道に迷いそうになり、近くに居たジャージ姿のマネージャーと思しき女子生徒に場所を聞いて漸く剣道部の部室に付いた。部室棟もシャワールーム同様に綺麗で、数年前に建て直したらしい。と、言うのも震災の時に一部の壁に亀裂が走り、建物が微妙に歪んで扉が開かなくなった為だとか。


 流石私立で有名選手を輩出していただけあり、デカく綺麗であった。


 昇が部屋に入ると男子は殆どおらず、女子が集まって何やら話に盛り上がっている。坊主男子達は非常に肩身が狭そうだったが、昇は特に気にした様子もなく取り敢えず部屋の隅に有る椅子に座る。椅子に座って取り出すのは、最近図書館で借りてきた戦争における人殺しの心理学だ。    


 何故そんなものを読んでいるのか?と言えば、言ってしまえばこれは戦場における人殺しに書いてあるわけであり、それをキメラと戦う際にも応用できるんじゃないのか?と思っているからだ。現に、キメラを殺して精神病に罹ってしまった人は男人も降り、彼等、或いは彼女等は等しくキメラを1人の人間と思ってしまっている事が理由である場合が半分以上ある。


 では、何故今更こんな物を読んでいるのか?と言えば、昇が教育係をすることになった礼威に付いてた。慶太郎と真のメンタル面は宇山江に上杉に丸投げしてしまえば良い。しかし、礼威に関しては正直、ふんわりとした理由でキメラを倒すという為に、何らかしらで思い悩む可能性もあるもなし。


 故に、取り敢えず、人殺しの心理というものを考えることにした。




「あの、何読んでるんですか?」


「戦争における人殺しの心理学だ」


「……え?」


「古今東西、人殺しとは最もタブーとされる行為であるが、戦争ではその行為を責める人間は殆ど居ない。つまり、合法的に行われる大量殺人事件とも言える。そして、その殺人事件では誰もが被害者であり加害者になりうるが、彼等は皆一部例外のサイコパスを除いて誰も自主的には殺しには賛同していない。


 その時の心理状況は一体どういうものなのか?と言うのをアメリカの軍人が調べあげた物がこの本になる」




 昇の説明に尋ねて来た櫻丘の女子部員が凄まじく困ったような顔をし、それからへ~と余り理解していない様子で頷き、席に戻っていった。暫く昇が本を読んでいると、また新しくシャワーを浴びた部員が入って来る。


 女子生徒が多めなのはきっと、慶太郎がシャワールームで未だに話しているからだろう。




「あ、昇はもう出てたんだ」




 そして、女子達の中に真と仁がおり、仁が髪の毛をボサボサと拭きながら昇の横に。




「ねぇ、ティモテーティモテーって知ってるよね?」


「シャンプーのCMだろう?」




 昇の言葉に仁の周りに居た女子が全員驚愕した。曰く、何故知っているのかと。


 昇はそんなもの今の高校生は知らんぞと呆れた様子で告げる。実際、昇が知っていたのは家に買っておいてあるだけだったらき☆すたのDVDをみたからである。取り敢えず、らき☆すたとハルヒは絶対見ておけと仁にしつこく言われたので見ていたから知っていたのであり、昇もらき☆すたを見るまでは知らなかったし、見た後もネットで検索しなければ意味が分からなかった。




「つか、何読んどるん?」


「戦争における人殺しの心理学」


「面白いん?」


「面白い」




 仁がお姉さんに見せてご覧と昇の手から奪いパラパラと捲っていく。暫く目を通した後に私は詰まらんと断言した。




「それはそうと、お昼はどうするん?」


「そろそろ近くのコンビニに買い出しに行くんですよ。


 お弁当ある人はそれを食べますけど」




 家が近い人は合宿じゃなくて毎日来るんですよと一年の部員が告げた。仁がコンビニか~と頷く。




「夕飯は?」


「合宿所で父母会が作ってくれるんですよ」


「は~すげ」




 仁がそんな人事のような風に乾燥を述べると真は慶太郎は?と尋ねる。昇はシャワールームで彼女の作り方をイガグリ坊主共に伝授しているだろうと告げると、扉が開いて男子剣道部員が入って来る。少し火照った様子の慶太郎が昇の隣に座ると、小声で恨みますからねと告げた。


 昇はそれに対してニコリともせずに、良い勉強に成ったろうと告げる。




「全員揃ったか?


 じゃあ、買い出し行く。弁当が有る者は支度をして食べ始めていろ」




 鬼頭の号令で全員がそれぞれの行動を始める。昇達も財布と携帯を持って買い出し班に続いていく。近くのコンビニまでは徒歩で10分も行くかいかないかだ。




「そう言えば、今晩はクアトロ・セブンとジェーン・ザ・リッパーがアメリカの何とかとか言う外人の魔法少女と一緒に撮ったドラマがやりますね」




 櫻丘の部員の1人がそんな事を話す。すると、また別の部員がそうそうと話に乗ってきた。




「しかし、クアトロ・セブンはスゲーよな。


 此処数年であっという間にテレビデビューまでしてさ」


「そうそう!ジェーン・ザ・リッパーやベルサイユ達と共同でウィークエンドを倒したって話だし」




 ジェーン・ザ・リッパーってやっぱり剣術の達人なのかね?だの剣道強いんだろうか?なんて話で盛り上がるも、やはり男子は色気に向かう。ジェーン・ザ・リッパー、クアトロ・セブンにクアトロ・セブンの子分たるテン・バー、ベルサイユ。誰推しかと言う話になるのだ。


 此処はもう魔法少女もアイドルも変わらない。桐明の4人はさもありなんと言う顔で傍聴側に廻る。




「俺はやっぱりクアトロ・セブンだな!


 あのメイド服が堪らん!それに何かSっぽい!」




 1人の部員が言うと仁達3人は昇を見る。そして、あれはSではなくドSであると声を大にして言いたいが身バレは厳禁故に敢えて口を閉じておく。




「深見や広江はどうだ?」


「僕はジェーン・ザ・リッパーが好きですね」




 昇は即答する。仁の眉がぴくんと動いたのを真は見逃さなかった。




「ど、どして?」




 仁はニヘラ顔を隠すようにして尋ねる。周囲の者もその訳を促すように昇に視線を集めた。




「まず、第一に戦闘のベテランだ。


 性格はアレだが、その技術は間違いない。キメラを生かさず殺さずして甚振るということはキメラの行動や体の構造を熟知しているから出来る技であり、そうでなければああも綺麗に解体出来ない。


 次に、クアトロ・セブンとコンビを組んだことで戦闘が非常にスムーズに成った。クアトロ・セブンが後衛、ジェーン・ザ・リッパーが前衛をすることでどちらかが不覚を取っても、どちらかがバックアップに回れる。それに、クアトロ・セブンはテン・バーの指導をする立場に有るが、彼女は乙種であり、どう考えても甲種魔法少女たるテン・バーを指導する立場には相応しく無い。


 だから、ジェーン・ザ・リッパーが居ることでテン・バーにも勉強になる」




 ぶっちゃけ、テン・バーをクアトロ・セブンに任せた魔法少女協会はアホ以外の何者でもないと断言した上で、国語教師が数学を教えるようなものだと例を出す。3人はどうやら昇はテン・バーの教育係を押し付けられたことに不満があるようだと瞬時にわかったようだが、他の近くに居た部員は誰もそれを知らないので全員が昇を超の付くクアトロ・セブンのファンなんのだなと確信してしまった。


 最も、それをテン・バーに当たらずにちゃんと指導している辺り、確りと分別付いているので流石と言うしか無い。




「お、深見も魔法少女が好きなのか?」


「好き、と言うか知っているだけだ。


 僕は魔法少女に関しては肯定的な立場のつもりだ」




 昇の言葉に魔法少女ファンと思われる男子たちが一気に花開き、最近芸能界側で持て囃されているティンクル・ティンクル・ウィッチーズの話やらテン・バーの話やらになって行く。


 また、海外じゃ魔法少女を戦場に送り出しす法律が可決されそうだとかそういう微妙にコアな話にもなっていった所でコンビニ辿り着いた。コンビニは少し田舎と言う事で広い駐車場にまぁまぁデカい店舗の構えだった。


 全員がクーラーの効いた店内にゾロゾロと入っていき、何も言わずにそれぞれが欲する物を買って行く。店員達は待ってましたと言わんばかりにカウンターを開けて通常よりも多いその物品が瞬く間に減っていく様に少々青い顔をしつつ彼等がカウンターに来るのを待つ。




「どれにする?」


「冷やし中華と冷やしウドンにおにぎり」




 昇は仁の言葉にそう告げてその冷やし中華とうどんを2つづつ、おにぎりは3つ、シーチキンマヨ、カルビ焼き、五目チャーハンを籠に放り込む。仁はならと蕎麦に唐揚げ弁当、大盛り焼きそばを選んだ。真と慶太郎はお財布との相談でおにぎり4つに大盛りカップ焼きそばを購入する。


 更に昇と仁はお菓子コーナーに群がる男子女子部員を尻目に菓子を購入。更に、コンビニの謎の商売戦略で置かれているおでんを衝動買いするという謎の行動に出て全員が驚いたまま動かなかった。その際に、昇は平然と万札を出し、仁に至っては黒いクレジットカードを出していた。




「あ、ガリガリ君買うの忘れた」




 仁が帰り際にアイスケースを発見し、其処からガリガリ君ソーダ味を取り出すとカウンターに戻る。昇も同様にコーラ味をピックアップする。




「待て待て。今からお昼で終わった後も部活有るんだぞ?」


「せやでー


 確り食べな」




 流石に忠告に来た櫻丘の部員に仁が似非関西弁で告げつつガリガリ君を開封し、齧り始める。




「逆に、それだけしか食べなくてお腹減らないの?」




 金の制限がなければきっと昇達と同様に買っていたであろう真や慶太郎が心配そうな顔で櫻丘の部員達を見る。全員がお前は何を言っているんだ?と言う顔で真達を見た。というのも真も慶太郎も一ヶ月ほど宇山江達と行動を共にして、日々を凄まじい訓練を課せられたので何時の間にか魔法少女並に飯を食うようになってしまったのだ。


 それから買い物を終えた者から順に学校に戻る。部室に入り、思い思いの席に座って食事を食べ始めるのだが、昇達4人が部屋に入って席に座ると同時に1年生と思しき男子部員と女子部員がそれぞれの前に冷えた麦茶の注がれたコップを置く。




「どうも」


「どーも」




 4人は驚いた様子で礼を告げて出されたお茶を一口飲む。冷たくて美味しいのだ。そこでふと昇は気が付いた。




「宇山江は何処に?」


「そう言えば先生何処行ったんだろ?


 シャワー浴びながら携帯で何か喋ってたけど」


「フランス語とドイツ語で喋ってたお。


 その後直ぐにシャワールームから出て行ったけど」




 真と仁がそう言えばと昇は携帯を取り出して宇山江に電話を掛けた。電話は3コールで出た。何処に居る?と昇が尋ねると、うるせーと返ってくる。午後は居ないから向こうの指示に従ってやれと言う好い加減な指示が出されるも、昇は最初からそのつもりだと答える。すると、電話の奥で聞き覚えのある笑い声が聞こえた。


 そして、夜には戻って来るからと電話は切られてしまった。




「どうだった?」


「何処に居るかは知らんが、夜には帰ってくるそうだ。


 車に乗っていたのだろう、騒音がしていたぞ」


「私の車ちゃんは置いてあったから、どっかから迎えが来たんだね」


「上杉だろうな」




 昇の言葉に真と慶太郎がそうだろうねと携帯を見ると一斉送信で送られてきたであろう同様の文が書き込まれたメールを昇と仁に見せた。


 其処には宇山江を少し借りるよby上杉と書かれている。昇はそのまま持って帰って欲しい物だと憎まれ口を叩きつつ、買ってきた冷やし中華とうどんを作り始めた。




「そう言えば、俺、クアトロ・セブンの限定1000体しか製造されていないフィギュア持ってるんだぜ!」




 そして、魔法少女好きの男子と女子が自然と昇の周りに集まり、魔法少女グッツ談義の自慢を始める。




「ああ、それなら僕の家にも有る」




 ホラと昇が桜の為に購入した物、昇が自分でサインを書き入れて何時か売ろうと企んで結局物置とかしてる物、祖父と祖母が良く分からないけど、孫のモデルである玩具であるとして買った物の3体が並んで置いて写メに撮った物を見せると、全員が目を剥いて携帯に集まった。




「お、おい、こ、このフィギュアって箱にクアトロ・セブンのサインが書いてあるんじゃないか?」


「ああ、そうだ。


 クアトロ・セブンがこのグッズを販売した当初は全くの無名であったから、このフィギュアを販売当時に行われたサイン会も僅か5名だった筈だ。その内3名は新しいプリキュアと勘違いして買った幼稚園児で、残りの二名の内、一人は孫にプリキュアの人形が欲しいと言われて間違って購入した老人だ」


「……それって売ったら幾らになるん?」


「10万はあるだろうな」




 昇がそう答えると、仁するすると脇によって耳打ちする。




「ねぇ、私の持ってるフィギュアにサインしてちょ?」


「断る」


「私に出来る事なら何でもしてあげるから。


 ねぇ、お願い?」




 仁がクネクネと昇に耳打ちをしながら頼みだす。此処で部員の1人がハッと気が付いた様子で立ち上がる。




「井上先輩、それは卑怯ですよ!!」


「井上先輩は金持ちだから深見の言い値で買おうとしているのか!?」




 別の部員が立ち上がる。仁はちょっと違うが大筋は合っているのでそ、そんなことはないよ?と実に怪しい雰囲気で口笛を吹き出す。


 昇は安心しろと宣言して、仁にも売るつもりはないと断言する。




「例え、100万積まれても僕はあれを手放すつもりはない」


「おぉ!流石だ深見!」


「良いぞ!」




 男子部員達が謎の声援を昇るに送り、女子部員がアホじゃないかと言う視線を送った。昇はそう褒めるなと告げ、食事を再開しようと提案する。部員の1人がテレビを付けてドラマを放送する曲に合わせると事前に撮っていた紹介のVTRが流れていた。


 全員の視線がそちらに釘付けに成った時、昇は仁の耳元で合宿が終わってからそれについては深く話しあおうと告げる。仁は満更でもない笑みを浮かべ、頷いた。




本当はもう少し早く更新するつもりだったんだ


Borderlandsダブルデラックスコレクションってのを買ってしまってね、糞ハマってしまったんだ


くっそ楽スィィィィッ!!って感じでバンディットを殺しまくったんだよ


一番のお気に入りはクラップトラップです


プリシークエルじゃ使えるらしいけど、私、拳銃をアキンボしたいのでプリシークエルではジャックの恋人さんを使う予定なの


因みに、ボーダランズ2では何も考えずにゲイジを使ってました


デストラップにおんぶで抱っこでデストラップが居ないと何も出来ない子とかしてるボルトハンターです



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