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第六十三話

 午後の部活内容は一言で言えば筋トレだった。校内にあるスポーツジムのような施設で筋トレをするのだ。ベンチプレスだったりランニングマシーンだったり、何て名前の装置か分からないような装置まで色々と置いてあった。


 私学でスポーツに金をかけており、運動部どころか学校に居る者は皆使えるそうで、学校側も積極的に器具を使うことを推奨している。つまり、運動をしろ!と言うことだ。




「まぁ、基本的には何をやっても良いぞ。


 適度に水分補給と休憩を挟め。器具の使い方が分からなかったら近くに居る者か器具にある使い方を見てくれ」




 鬼頭は昇達4人に告げる。昇と仁は大きなランニングマシーンを前に立っていた。




「これをやってみるか」


「そうね」




 2人はポチポチとモードを選んでいく。歩く早さ、競歩の早さ、走る早さ、時速も自分で設定出来る。昇は暫く考えてから装置を弄る。取り敢えず、軽くランニングから始めることにした。


 マシンがゆっくりとベルトを動かし始める。昇はそれに合わせて足を動かし、5秒ほど掛かって規定の速度に達した。これで10分ぐらい走る事にする。


 櫻丘の部員に言われた音楽プレイヤーを持って来るのが良いと言うアドバイス通り、昇は耳にイヤフォンを嵌めており耳元からThe HeavyのShort Change Heroが流れている。昇も仁も黙々と走る。その呼吸に一切の乱れはない。


 5分が経ったがそれでもまだ余裕があるので速度を更に上げる。走りながら、速度上昇のためのスイッチを押すとベルトを回すモーター音が少し高くなり、それに合わせてベルトの回転速度も上がる。昇もそれに合わせて足を動かしていく。


 それから5分ほど走り、唐突にアホな好奇心が上がってくる。これを最高速度まであげたら一体何キロで走ることに成るのだろうか?と。隣の仁を見ると装置を弄ってどんどん速度を上げていた。どうやら、同じことを考えたらしい。


 モーター音が段々と甲高い、尋常じゃない音を出している。昇は勿論、周囲の部員達も集まって来た。男子部員は声援を送り始めている。


 昇も仁に合わせて速度を上げていく。




「何やってるんですか、先輩方」




 其処に慶太郎がやって来て呆れた顔をしている。昇と仁は慶太郎にゆっくりと速度を上げていくように告げると完全にコンソールから手を離して、本格的に走る準備を始めた。慶太郎はどうなっても知りませんからねと告げ、ゆっくりと速度を上げ始める。5分後には機械が安全速度に到達する。


 時速は現在40kmだ。




「ヤバイヤバイ!足が漫画みたいに成ってる!」


「時速40だから、短距離走選手のトップスピードよりちょっと遅いぞ」


「もう限界」




 仁はそう言うとガイドレールに飛び乗り装置を止めた。昇も同様に飛び乗るとフーっと息を吐いた。




「お前等、凄いな……


 バケモンじゃねーか……」




 事情を知らない鬼頭達は全員戦慄していた。慶太郎と真はそれに何とも言えない顔で返すしか無い。仁も昇も大げさに疲れて見せているが実際は其処まで疲れていない。


 オリンピックでは近年魔法少女の選手が多く出場する様になり、遂には魔法少女部門が置かれた。性別は勿論、女子しかなく。たまに男子選手が変身をせずに出るが、基本的には女子大会とされる。


 ただし、記録は殆どが人類最速とか最長を超える速さだったり長さだったりするので一般人が参加しても記録にならないのである。例えば、やり投げの世界記録が98メートルちょっとなのに対して魔法少女部門では最低記録が100メートルから計算され最大で500メートルまで計ることが出来る。


 短距離走も100メートルは6秒台にまで縮まり、どちらかと言うとスタートダッシュで飛んではいけない、とかジャンプで距離を稼いではいけないという独自ルールまで出来ている。これは競泳も同様で飛び込みで5メートル以上飛んだら失格とか最早何の競技のルールなのかよく分からないルールまである。




「伊達に個人で入賞はしていないからな。


 来年からは女子トップは仁が貰うことに成るぞ」




 昇の言葉に仁がニタニタ笑いながらヴィクトリーサインを出す。相手は真であった。真は悔しいけど、経験の差は覆せないと項垂れるので、慶太郎がまぁ、一緒に頑張ろうと肩を叩いた。


 昇と仁は馬鹿なことをやったので暫く休憩していると合法的にズル休みを獲得し、真と慶太郎はサイクリングマシンをやることにした。一方、男子部員の一部は時速40kmの速度に挑戦をしようとして何人もふっ飛ばされ、騒ぎに気がついた顧問に叱られてランニングマシンの使用は顧問の監視下に置かれることになった。


 真と慶太郎はサイクリングマシンの使い方を説明書通りに扱うも、正直負荷が足らないとの事で負荷を最大にして漕ぐ。最大にして漕ぐとウィンウィンと音を上げ、凄まじい音がし始める。高負荷ゆえのモーター音である。


 真と慶太郎はお互いに次第に闘争心が現れて、最初は緩やかな音だったが最終的にはトースターでパンが焼けるんじゃないか?と言う音がし始める。2人は汗を滴らせながらお互いにゴールのないツール・ド・フランスをし始める。


 そんな2人を昇と仁がアホだと笑っている。多分、真と慶太郎が聞いていれば脇にある姿見を見て来いよと言うだろう。




「き、桐明の連中は体力馬鹿なのか?」


「あのチャリ、どう見ても高負荷ですよ」




 櫻丘の部員達はそんな噂をし始めた所で、昇と仁は腹筋を鍛えるシットアップベンチ、つまり腹筋用のベンチシートに向かう。台は足を上にして斜めにぶら下がるようになっており、足首をバーに引っ掛けるのだ。


 仁がベンチに寝て足を引っ掛けようとするも、うまく出来ずずり落ちそうになっている。




「Help me」




 仁が腹筋を始めた昇を呼び、昇は何をやっとるんだと言う顔で一時中断、ベンチから降りる。




「先に足をかけてから寝るんだ」


「あ、そっか」




 昇が仁を引っ張り起こし、足を掛けてから寝かせる。そして、仁と昇は負荷をかけるべくゆっくりと腹筋をし始めた。30回を3セットの90回。2人は腹筋を終えると水分補給だとペットボトルのスポーツドリンクを飲もうとして既に残りが少ないことに気が付いた。




「校舎一階に自販機があるからそこで買って来ると良い」


「ありがとうございます」


「行ってきます」




 昇と仁のスポーツドリンクが切れたことを知った櫻丘の三年が告げる。2人は財布を片手にその自販機コーナーを探しに向かったのだった。


 時刻は3時を過ぎており、校舎には剣道部部員以外は誰も残っていない。一つの部活が合宿を行うと基本的に合宿所は埋まってしまうのだ。また、夏休み中の部活は甲子園に行っていない三軍以下の野球部員達やサッカー部等が午前中までやって、午後は帰ってしまうのである。


 誰もいない校舎に2人は薄ら寒いものと妙な興奮を感じながら彷徨っていた。




「校舎ってどの校舎なんだ?」


「さぁ?」


「此処は校舎が大量にあり過ぎるんだ」


「同感」




 15分ほど歩いて、2人は完全に道に迷っていた。階段を登り降りし、連絡通路を適当に渡ったりした結果がこの様である。2人は取り敢えず、最上階まで行って現状把握をしようと言う話になった。屋上に行けなくとも三階か四階まで上がり、そこから周囲を見れば現在地を把握出来るだろうと考えたのである。


 2人は階段を登り、最上階にたどり着く。屋上に出れる扉があったので出ると、そこにはテラスが広がっていた。四方は3メートルほどのフェンスに囲まれていたが十分に周囲を眺めることが出来る。




「この学校はデカ過ぎだ」


「ね~」




 昇と仁は取り敢えず、一番近いフェンスから学校を見下ろす。すると、ラグビーやアメフトをやるためだろう芝生のグラウンドが目に飛び込んでくる。新緑のフィールドは実に広大で白線も綺麗に引かれている。




「えぇっと、剣道場は見当たらないね」




 取り敢えず、剣道場を見付けて、そこから帰ろうと言う案である。


 仁と昇は次の一角に移動する。ラグビー場から時計回りに見ていく。次に見えたのは連絡通路で繋がった校舎である。箱型校舎が全部で3つあり、それぞれ横に並ぶ。此処は一番端の校舎だ。しかも、新しいので新校舎と呼ばれる場所であろう。


 校舎以外には何も無いので、別の角に移動する。今度も2棟並んだ校舎があり、隅には大きな体育館のような施設がある。目を凝らして見ると入り口には『講堂』と描かれていた。講堂らしい。




「違うな」


「うん」




 2人は最後の一角に移動する。すると、今度はゴルフの打ちっ放し場とアーチェリー場が見え、また別の建物がある。プールと描いてあるので温水プールらしい。


 仁が合宿終わったらプール行こうかと告げるので、昇はそうだなと頷いた。然し乍ら、依然として場所が判明しないが、現在地は把握した。校内地図を随所においておけと昇は悪態を吐き、最悪の時は魔法少女に変身して上空高く飛び上がってから目的地付近に落着するという手段を考えた。


 仁もそれに反対しなかったが、目立つのでそれは最終手段であるとする。




「しかし、この広さの学校だ。


 サバゲをしたらどれほど楽しいだろうか?」


「サバゲね~


 あれ、楽しそう」


「弾数制限してリアル志向のサバゲーをしてみたい」


「バトラー付けて自衛隊でやれば?」




 乙種の特訓として、と仁が笑う。昇はあれは対人戦闘訓練になるから魔法少女がやると色々と問題に成るのだと昇が答える。仁はそっかーと少し残念そうだった。


 過去に一度、バトラー、個人交戦装置を使って現役自衛官と乙種魔法少女の訓練が公開された。その時、自衛隊反対派の市民団体と反魔法少女団体が一丸となって反魔法少女、反自衛隊主義のテレビ局が連日憲法違反だと言わんばかりに報道したおかげで自衛隊はこの訓練を取り止めにした。


 勿論、一部の魔法少女は反対したが、決定は覆らずこれ以降基礎基本と自分の銃を使った射撃訓練しかしなくなったのだ。




「だからサバゲ」


「そうだ。だからサバゲだ。


 CQB訓練とほぼ変わらん。50メートルの有効射程で弾はBB弾。下手に当たれば泣くほど痛い。実弾よりはマシだな。よし、この夏休み中にサバゲをしよう」


「エアガンどうするの?」


「お前が買うんだ。


 金は自分達で出す。18歳超えているだろう?」


「え、永遠の16歳だし」


「それで既に40歳以上は確定だ」


「ま、まだ27だし!」




 墓穴掘った!と実年齢を暴露してしまった仁はその場に項垂れる。昇はアホな奴めと呆れると、扉を開ける。




「取り敢えず、現在地は分かった。第二校舎棟(仮)を目指して剣道場に帰ろう」


「そうだね~」




 2人が一階に降りた所で剣道部員と出くわした。




「あ!居た!」


「ん、捜索隊か。


 ちょうど良かった。道に迷っていたんだ」


「やっぱり。この学校アホみたいに広いですからね」




 剣道部員が携帯を取り出して何処かに電話する。そして、戻りましょうかと告げるので2人はその後に続く。取り敢えず、自販機コーナーの場所を教わりそれから剣道場に戻る。剣道場では顧問と先程自販機に行くことを提案した三年が立っていた。




「スマンな、俺が案内してやればよかったのだが」


「大丈夫だったか?」


「ええ。この学校は凄い広いですね」




 昇の言葉に保護者会があると保護者の何人かは絶対に迷い、4月に入学したばかりの1年は目的の教室や場所にたどり着けなくて遅刻するものも多いんだと顧問が少しばかり困った様に告げる。




「各フロアに地図を付けるべきですね。案内図の様な」


「ああ、私もそう思う。今度真面目に提案しよう」




 顧問が時計を見て今日は此処までにしようと告げ、1日目の部活が終了した。




「しかし、天下の昇様ともあろう方が道にお迷いに成るとは」




 そこに何故かしたり顔の真が現れる。隣ではこらこらと言う顔の慶太郎。どうやら道に迷った事をからかいに来たらしい。


 昇はそんな真にお前ならきっと地図を渡しても迷うだろうと断言したので真がそんなことねぇし!と何故か焦ったように告げる。慶太郎に援護を求めるも慶太郎はなんとも言えない表情で笑みを浮かべるだけだった。




「桐明さん、合宿所に案内しますよ」




 そして、櫻丘剣道部員の1年が4人に声を掛けて合宿所に案内した。




暑くて今にも死にそう(死ぬ可能性は極めて低い)




ヨーロッパ人は湿度25%で気温35度の環境で暑くて死ぬとかホザイてるけど、彼らは絶対に日本には来れないと確信した


日本じゃ湿度60や70は当たり前だからね




気分的に水着回とかやれば良いんじゃね?と思ったけど魔法少女だからベルサイユ宮殿でダンシングしてそうなドレスな連中ばっかで暑そうだから止めた


中の人でやるにしても海でイチャラブとかアカエイに刺されて死ねレベルだから止めた


世間様はそろそろ夏休み




そろそろ大規模作戦もあるし、この夏も地獄だぜ……



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