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第三十七話

 アフリカで民主主義を望む民衆たちによって暴動が起きた。外務省は即座に該当地域に居る日本人に帰国命令を出し、渡航制限を設けた。と、言うのもアラブの春で無政府状態が続いている地域が多く、また沈静化に近づいた革命闘争が続いている現地がまた炎上しかけているので、イスラム過激派の邦人拉致等が起こるのを防ぐためである。


 然し乍ら、与党の一部ではこれを機に自衛隊に依る邦人脱出を恒久法にしようと画策しているようで、反自衛隊派の者達がデモを早くもやり始めている。




「アホばかりだな、この国は」




 そして、そんなニュースを見ながら柳葉は毒づいた。テレビから目の前のパソコンモニターに意識を戻す。現在、彼は彼が担当している魔法少女であるクアトロ・セブンの親友である山口真と言う少女の行方を探っている。クアトロ・セブンこと深見昇の周りにはトラブルしか無い。


 そもそも、魔法少女に成った理由からして壮絶だ。今まで担当官をやっていたがそうそうお目に掛かれない出自であり、柳葉も初めてのケースだった。昇には悪いがまるで漫画かアニメの主人公みたいな奴だと思ったりもした。


 勿論、不謹慎なので口には出さない。




「柳葉さん、またやってるんですか?


 越権行為」




 其処に彼の部下である担当官織田がやって来た。年の割に昇進が速いのはそれだけ優秀ということだが、まぁ頭が硬い。ザ・官僚を地で行く男がこの織田であり、この男はクアトロ・セブンや最近この地区にやって来たジェーン・ザ・リッパー等から大層嫌われている。


 曰く、無能だと。彼は決して無能ではない。無能ではないのだが、その頭の硬さから融通が効かない為にしばしば魔法少女として活動するクアトロ・セブン達と対立する。特に彼が担当しているテン・バーはクアトロ・セブンの下で魔法少女としてのいろはを学んでいる。


 その為、クアトロ・セブンの行動に付いてあれこれと口出ししクアトロ・セブンと意見衝突をするのだ。




「馬鹿野郎、ちゃんと権利はある」


「それは魔法少女がキメラを倒す際の権利でしょう?」


「法令をよく見ろ。


 キメラに関する、だ。この山口真は絶対にウィークエンドに繋がる」




 柳葉の言葉に織田が刑事の勘って奴ですか?と苦笑する。柳葉はそれに“元”だと告げる。柳葉は元刑事である。色々とあって彼はこの魔法少女協会で担当官をやっているのだ。




「それに、この娘は、色々ときな臭い。


 また、クアトロ・セブンとジェーン・ザ・リッパーが自分達の顧問である宇山江神代と言う教師が実に臭いとして情報を上げてきた」




 柳葉はモニターに宇山江神代の盗撮写真を写す。織田はそれを見て美人ですねと告げるが柳葉はそれを無視した。




「此奴、裏が全然取れん。


 何処で生まれ、両親は何をやっていて、何処の大学を出ているのか。全てが謎だ」


「は?教師でしょう?


 教員免許も出てるんですよね?」




 織田の質問に柳葉はああと頷く。だが、其処に書いてある住所は全て偽装であり、戸籍すらも実在しない物だった。




「緊急手配しましょうよ!


 怪しすぎですって」


「馬鹿野郎、捕まえるには情報が足らなさ過ぎだ」




 これだけ大掛かりの身分偽装が出来る組織はそもそも居ない。宇山江神代と言う人物の裏には大きな組織が付いていることは先ず間違いない。


 ヘタをしたら国を相手にする羽目になるかもしれない。織田はそれに気が付いていない。当たり前だ。大学から行き成りこっちの業界に入ってきた昔で言うところの幼年学校組だ。織田のように元警察、元自衛官ならば多少なりともそう言うきな臭さを前に慎重になるが、織田のような大学上がりは違う。


 喜び勇んで手柄をあげようとして自分の首を絞めるのだ。




「じゃあ、どうするんですか」


「先ずは情報収集だ。


 此奴がどういう奴なのかってのを調べる必要がある」


「でも、調べても裏?が取れないんですよね。どうするんですか?」


「馬鹿かお前は。


 裏が取れんのは過去の事だ。だったら、現在から未来に掛けては今からでも手に入れられるだろうが」




 柳葉は最近の若い奴は駄目だなと内心溜め息を吐く。




「それじゃあ、張り込みとかそーゆー奴をやるんですか!?」


「そうだ。


 まぁ、やるのは俺達じゃない。俺達よりもっと優秀で最適な奴がいる」


「誰ですか?」




 柳葉はついて来いと告げる、支部から出る。車に乗り向かう先は名古屋刑務所だ。




「刑務所?」


「ああ、全国の刑務所には魔法少女として犯罪を犯した者も入れられる。厳重な警備を持ってな」




 非常に数は少ないが、魔法少女姿で犯罪を犯す者はいる。


 そう言う者は全国の刑務所にバラバラで収監され、厳重な警備の下で管理されている。




「初耳です!」


「当たり前だ。


 魔法少女協会だって殆ど公にしとらん。そもそもキメラを殺して平和を守ってるって言うだけで騒ぎを起こすアホ共が居るんだぞ?そんな連中が魔法少女の犯罪者が居るなんて知っていたら何て言うか分かるだろうが」




 柳葉の言葉に織田は確かにと頷いた。


 名古屋刑務所は、名古屋と付いているがその実はみよし市に存在している。元々は名古屋市内にあったのだが、道路拡張工事のために移転することが決まり現在の場所に移動したのだ。


 刑務所に着くと2人は裏口に方に周る。裏口で柳葉と織田が担当官のバッジを見せると、裏口の門衛は何度も2人の顔を確認して中に入れる。柳葉が彼奴をと告げると、刑務官が4人、2人の前後に付いて中を案内する。


 2人はそのまま独房のような面会所に案内される。通常の面会室と違って、刑務官は手にショットガンとライフルを持って四方に立っていた。




「何なんですか、これ?」


「魔法少女の犯罪者は、殆どが精神鑑定を受けてる。


 そういう事だ」




 あまりの重苦しい空気に織田は黙ってしまう。非常にピリピリした空気が流れており、四方の刑務官は自衛隊とそう大差ない重装備だ。SATの突入隊でももう少し軽装だろうがと思う程である。


 暫く2人が待っていると刑務官に釣れられた1人の女が入って来る。痩せては居るが、姿勢もよく囚人服を着ていなければ何処にでも居るような女子大生かと思うほどである。




「やぁ、柳葉君。


 元気にしていたかい?」


「ええ。


 先輩こそお元気そうで」




 先輩と呼ばれた魔法少女はそのまま柳葉達の前に置かれた椅子に座る。手足には手錠が付いてない。代わりに刑務官が安全装置を外して何時でも銃を撃てるようにロー・レディと呼ばれる銃口をわずかに下に向けた体勢を取っていた。




「そちらの君は誰かな?」


「俺の部下ですよ」


「ほぉ、柳葉君も遂に部下が出来たか。


 御目出度う、そう言葉を送るよ」




 女はそう朗らかに笑う。織田はどうもと頭を下げるが、どうしてもこの女が其処まで警戒する程の犯罪者には見えないのだ。




「あの、失礼ですが何をやって此処に?」




 織田は堪え切らずに尋ねる。女は少し驚いた顔をし、それから少し困ったように笑った。




「柳葉君、君、彼に何も話してないのかい?」


「話すと面倒なことになるんですよ、此奴は」




 柳葉の言葉に織田は少しムッとする。しかし、文句を言う前に女が口を開いた。




「君は赤池荒子と言う人間を知っているかな?」




 織田は何処かで聞いたことがありますと告げ、記憶を辿る。




「ヒント、10年前」




 織田が悩んでいるのを見た女がそう告げる。10年前、赤池荒子。このキーワードが繋ぐの唯一つの事件だ。




「犯罪者連続猟奇殺人事件……」


「そう。そして、その赤池荒子がこの私さ」




 女がそう告げると、織田は目を見開いて後ろにひっくり返った。


 事件の詳しい全貌は公には公表されていないが、警察関係者が三十余名の犯罪者を次々に殺害していった事件がこの事件だ。連続殺人事件であるが、殺されたのが全員何らかの、少なくとも殺人、窃盗、障害等の犯罪を犯した者が多かったのでマスコミ達も一方的に犯人を責めずに擁護的な報道もしたりで一時人気に成った。


 また、この一件が起こっている間は犯罪が激減したこともあったが、逮捕されてからは元に戻った。




「それで、この殺人犯に何か御用かな?」


「ええ、先輩に探って欲しい人間が居るんですよ」




 柳葉の言葉に織田が犯罪者に協力を頼むのかと声を上げるが、柳葉は無視する。赤池も同様だった。




「どういう人間かな?」


「ウィークエンド、知ってますか?」


「ああ、勿論だとも。


 あれだろう?キメラか魔法少女かと言われている顔をTシャツで隠した」


「そうです。


 あれの正体が掴めそうなんです」




 柳葉の言葉に赤池はホォと少し関心を示す。周囲の刑務官も流石に柳葉に視線を移した。


 織田は椅子に座り直し、黙っている。




「重要参考人となりうる存在が居ましてね。


 ただ、背後が真っ黒なんですよ。俺達じゃ手に負えないし、人でも足りない」


「だから、元優秀な刑事である私の元に来た、そういう事かい?」


「ええ」




 柳葉は赤池の言葉に頷いた。その後、柳葉は執行官権限で赤池荒子の一時的な刑執行の停止と捜査協力による一時的な釈放を命じ、その日の内に赤池荒子を刑務所から外に出してしまった。更に、刑務所所長以下全員にこの事に付いて緘口令を敷き、記録からも消すよう告げる。完全な隠蔽だった。


 赤池はこのまま外に逃げてしまえば誰も彼女を追うことは出来なく成ってしまう。しかし、それを可能にするのが執行官の権限なのだ。


 そして、夕方に成ると柳葉は昇と仁をBARウィリアムズに呼び出した。勿論、赤池も同席している。赤池は囚人服から途中で購入した女物のスーツを着る。本来の性別は男である。




「宇山江神代と言う女が限りなく黒に近いグレーだ。


 奴の背景は一切分からん」




 柳葉は昇と仁、それに何故か付いて来た健と桜に礼威にも説明をする。


 何でも仁が大量に買い込んだ肉の消費期限が迫ってるとかで昇の家で焼肉パーティーをしていたそうだ。で、呼び出しを受けた2人に面白そうだと健が桜と礼威を巻き込んで連れてきたのである。


 この際だから、と健と礼威も巻き込んでしまったのである。桜に関しては全員一致で帰れと言う話になったのだが桜が強固に反対し、赤池がまぁいいじゃ無いかと告げて臨席を許されたのだ。




「で、そっちの美人さんは誰だ?」




 健が柳葉の隣で澄まし顔でコーヒーを飲んでいる赤池を指差す。柳葉が赤池荒子に付いて説明をすると、全員が魔法少女に変身する。それはそうだ。人間とはいえ三十名以上を殺害した殺人犯が目の前に居るのだから。




「安心して欲しいな。


 確かに私は人を殺したし、今も彼等を殺したことを後悔なぞしていない。だが、私はチャールズ・ホイットマンや加藤智大とも違う。一部では私を神と崇めるアホが居るが、正直私は神になろうと思わない。だから、私は君達を殺そうとは思わない。


 信じてくれ、と言うには余りに情報が足りないだろうが信じて欲しい」




 赤池の言葉に魔法少女達はお互いに顔を見合わせ、それから変身を解いた。




「良いでしょう。


 柳葉さんが連れてきた人だ。柳葉さんを信用して信じます」




 昇の言葉に赤池はニコリと笑うと良い魔法少女を持ったものだねと柳葉に告げる。柳葉は全くですと賛同した。


 それから柳葉が宇山江神代に付いて全てを話し、そして、宇山江神代の身辺調査のために赤池に尾行及び張り込み等をして貰うと告げた。




「私も手伝うわ!」




 連絡会も終わりに近付いた時、唐突に桜がそう言う。昇はバカを言うなと告げ、健も桜にはまだ早いと宥める。




「何でよ!


 人殺しが良くて私がいけない理由はないわ!」




 どんな理論だとその場に居た全員が思い、昇が赤池は殺人犯であっても元々が刑事であることを説明するが、桜にだから何よと一蹴される。こうなると最早理論的な説得は不可能だ。女性特有の感情論に子供特有の聞き分けの無さが加わり最早手の付けようがない。




「まぁ良いじゃない?


 未成年だから危ないというなら昇君、だったかな?君もそうだし、それに戦闘になれば真っ先に私が逃がそう」


「そういえば、貴方の能力は?」




 昇の言葉に赤池はコーヒーのスプーンを手に取り、机を叩いてみせる。スチール製のスプーンだ。それを目の前まで掲げて手を話す。通常はそれが落ちるがスプーンは浮かんだままだ。それから赤池はそのまま指を鳴らすとスプーンは金属の拉げる音と元に綺麗に丸く潰れた。


 また、左手の指を回すとコップの中の水が浮かび上がる。そして、円形の塊になる。最初は液体であったが徐々に徐々に凍りつき始めてアッと言う間に拳大の氷になってしまった。




「サイコキネシスさ。加えられる力はほぼ無限。距離に制限はないが、私が視覚が通らなければ不可能だ。つまり、紙袋の中に入った卵を潰すのは不可能だがビニール袋に入った岩を潰すは可能って事さ」




 因みに、赤池が殺した人間は全て全員がソフトボール大の大きさに丸まっていたそうだ。




中々決着に行かないね



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