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第二十八話

第二十八話


 それは全くの偶然であった。

 日本ではほぼ毎日のように日本の何処かでキメラ現れては魔法少女に殺されている。キメラに成る人間の職種は殆ど決まっておらず、サラリーマンは勿論、主婦、弁護士、医者と言った者達でも成る。ワイドショーは下らん独自の調査でその原因を調べることもせず、自衛隊や警察を好き勝手に偏見報道するだけだ。

 その日、桜がウィークエンドに対峙した。

 兄がステーキを食べて帰ってきたその週の週末。桜は兄と桜は認めていないがその彼女である仁、兄の部下である礼威に、何故か付いて来た健の5人で出かけていた。兄がステーキを一人だけで食べてきたというので桜がズルいと告げ、それを仁と健にチクったのだ。

 そこからあれよあれよと週末に皆で出かけて飯を食おうという事になったのだ。


 昼時、5人は何処で食事をするか?と言う話になり繁華街をウロウロしていた。街を歩き回り、全員腹が減っていた。腹は減っていたが、ファストフードは論外であり、じゃあラーメン屋はどうか?と言う話になるも、ラーメン店が乱立して鎬を削るこのご時世、何処の店が美味しいのか?と言う話になった。

 旨い店は大抵混んでいる。しかも、ビルの隙間みたいな場所に店舗を構えるので全員が一堂に会して食事ができないので、結局却下される。

 そのため5人がウロウロしていたその時だった。繁華街の一角から突如悲鳴が上がる。全員が何だ?と言う顔で振り返る。そして、4人にとっては実に聞き覚えのある慟哭が聞こえてきた。


「礼威」


 昇は鋭い声で礼威を呼ぶ。返事は待っていない。


「桜を今直ぐに安全な場所に連れて行け」


 礼威はハイと頷き、桜の腕を引っ張って走りだす。桜は兄の昇に気を付けてと告げると、昇はめったに見せない笑みを見せ、言ってくると頷いた。

 そして、3人は裏路地に走ると、変身し、すぐに戻ってくる。ベルサイユが上空にM1919を発砲しキメラは勿論、避難する一般人の注目を寄せる。


「落ち着け!

 道を開けろ!お前とお前、警察に電話だ。お前とお前は救急車。お前とお前は消防に電話しろ」


 ベルサイユは付近を歩いていた人間に指示を飛ばす。ジェーン・ザ・リッパーとクアトロ・セブンは駈け出しており、キメラの方に向かっていた。ジェーン・ザ・リッパーが大きく跳躍する。キメラは一体。腕を切られた女。隣には完全に漏らした男。女は男の腕を掴んでいるが、男は女を殴って離せと叫んでいる。キメラはユックリとそんな2人に近づいている。


「全く、嘆かわしい」


 ジェーン・ザ・リッパーから遅れて跳躍したクアトロ・セブンがそう漏らすと、M1918“ブローニング・オートマチック・ライフル”自動小銃のトリガーを引く。放たれた弾丸は3発。キメラの振り上げる鎌と右肩、事件に着弾する。キメラは勿論、2人も上空を見上げた。

 キメラが次に見たのは満面の笑みを浮かべたジェーン・ザ・リッパーである。体重に加速度を乗せた凄まじい重さの一撃。キメラは頭骨から踵にかけて、綺麗に前後に斬られ、ジェーン・ザ・リッパーの白い甲冑風ドレスを赤に汚す。

 負傷者を出したものの、キメラは迅速に片付けられた。




◇◆◇




 桜と礼威は近くのネットカフェに逃げ込んだ。キメラが出た場合、速やかに店などに逃げ込むように政府は言っている。また、商店等にも出来れば避難してきた一般人を入れて、扉の施錠などをするよう告げている。

 故に、桜と礼威はネットカフェに逃げ込んだ。ネットカフェには同じように逃げこんできた一般人がおり、店のスタッフがフリースペースに誘導している。先に居た客は事情がわからないというふうであったが、店員が現在外にキメラが発生した事を告げ、警察が車では店の外には出れない旨を告げた。

 また、店長の機転で店の中の飲み物と漫画等の使用は自由だと告げる。礼威は桜を連れて、金を払って個室を一つ借りる。桜は気丈に振舞っているが、顔は真っ青で、素人目に見てもヤバそうだった。店長は大丈夫ですか?と声をかけるが、桜は横なってれば治るのでと告げる。店長はそれに頷いて出来るだけ静かな奥まった個室を案内してくれた。

 2人が入るには些か狭いが、桜は礼威の手をガッチリと掴んでいる。途中で組んできたお茶を桜に渡し、飲むように告げた。


「大丈夫だよ。お兄さんも仁さんも健さんも居るんだから」


 正直言ってこの3人が出て行って果たしてキメラにやれるなんてことが有るのだろうか?いや、無い。20分ほどすると、警官がやってきて、無事に終わりましたと告げる。それを合図に避難してきた人達はお互いに良かったと安堵し、外に出る。

 桜と礼威も3人に連絡を取るために外に出ようとして、悲鳴が上がった。

 ちょうど2人が外に出た時、目の前にTシャツで顔を隠し、機関銃を担いだウィークエンドと彼、或いは彼女の護衛かお手伝いのような黒い戦闘服が現れたのだ。


「お前ェッ!」


 桜は兄とその彼女を攻撃した相手に思わず怒鳴りつける。ウィークエンドは桜の怒声に気が付き顔を向ける。その後ろに居た戦闘服がとっさに割って入るも、次の瞬間には桜が魔法少女に変身し、殴り掛かっていた。

 桜は誤解したのだ。ウィークエンドは兄であるクアトロ・セブンを殺そうと襲ってきた。今回はそのリベンジマッチだと。兄は桜のためにこの3年凄まじい勢いで戦い、守ってくれた。今度は桜の番だ。後ろで礼威が何かを叫ぶが、聞こえない。

 桜は魔法少女に変身すると猫耳と尻尾を生やしたエロゲに出てくるようなくノ一の様な格好になる。武器は手の甲に伸びる爪だ。長さは60cm程の鋼鉄製の爪だ。内側は刃物が付いており、引っ掻き以外にも切る事ができる。

 この爪は桜の意志で3本から1本まで変えられ、太さも変えられる。また、刃を取り除き、爪だけにすることで壁を登る事も可能だ。まるでニンジャなのだ。

 そして、そんな爪を両手に生やした状態で殴り掛かったのだ。


「ガァァァァ!!」


 ウィークエンドは吼えると、肩に担いでいた機関銃の銃床を掴み、桜の爪に合わせるようにして振る。桜は喧嘩どころか戦いの術を知らない。しかし、桜は毎日のように魔法少女をモデルにしたアニメを見ていた。言ってしまえば、YouTubeの格闘家の動画を見ながらそれを真似する中学生のようなものだ。見よう見まね。しかし、体はそれに付いてくる。

 機関銃の薙ぎに桜は体を捻って躱す。戦闘服は止めるんだと叫び、背中に回していた突撃銃を桜に向ける。桜はバク転の要領で後方に下がり、アイアン・フィストのするボクシングスタイルを取る。ウィークエンドは機関銃を構えようとして、戦闘服がそれを止せと押さえ、それを取り上げる。


「何のつもりかしら無いが、敵対する気はない!」

「黙れ!

 キメラもどきめ!お前等、火曜日に人を殺しだろうが!今度は魔法少女を殺す気か!!」


 桜の言っていることはテレビでやっていた内容である。それに関しては全員が知っている。


「そうだ!

 中国人を殺したのはお前等だろう!」


 回りにいた野次馬の誰かが叫ぶ。


「遂に人間を殺したのか!

 化け物目!人殺し!」


 次第にやじは広がっていく。少なくともこの場にいる全員は今、魔法少女に命を救われた。クアトロ・セブンは勿論、ベルサイユ、ジェーン・ザ・リッパーの3人に。そして、そんな3人を殺そうというのだ。ウィークエンドが魔法少女を襲っているのは誰もが知っている。

 そして、火曜日にこの2人が中国人を殺した。今、キメラが死んだ後この2人が現れた。魔法少女らしき少女が叫んでいる。


「素直に投降して下さい!」


 周囲の野次を消すように凛とした声が響く。大剣を構えたテン・バーが現れたのだ。野次馬達はテン・バーを知っている。新人であり、頼りないが、少なくとも知っている魔法少女である。

 テン・バーは周囲の野次馬に警察の規制線より後ろに行くよう叫ぶと、同時に空からベルサイユ、クアトロ・セブン、ジェーン・ザ・リッパーが現れる。また、野次馬達を割るようにして重武装の警官達がやって来て、2人が銃を構えた。

 次期に自衛隊も来るだろう。警官達の顔は強張っているが、動作は落ち着いている。


「動くな!」

「お前達は完全に包囲されている!

 武器を捨てて大人しく投降しろ!」


 クアトロ・セブンがM1918“ブローニング・オートマチック・ライフル”自動小銃を構える。ベルサイユはM1919だベルサイユの正面に居た警官達は大慌てでそこから逃げた。ベルサイユがトリガーを引けば100発中97発が的から別の場所に当たる。

 誰だって命中率3%の“尻拭い”をするのはゴメンである。

 遠くから羽音が聞こえてくる。自衛隊だろう。戦闘服は銃を下ろしているが、手放していはいない。キョロキョロと周囲を見渡し、耳元を抑えて小声でブツブツ言っている。クアトロ・セブンは暫くそれが逃げ道を探すべく必死に考えているのだろうと判断していたが、違う。


「武器を捨てなさい!

 そして、今すぐ無線を切りなさい!」


 クアトロ・セブンがそう叫ぶが、それは上空まで来た自衛隊のヘリによってかき消される。1機のUH-60JA“ブラックホーク”に2機のOH-6Dだ。ブラックホークからは覆面をした自衛隊員が降りて来ると周囲の警官隊に離れるよう告げながら、ウィークエンド達に銃を向ける。そして、近くの交差点にブラックホークを誘導しながら、覆面の自衛官達はクアトロ・セブンやベルサイユ、ジェーン・ザ・リッパー達に後は我々が引き受けますと告げた。

 自衛官達が銃を向け、武器を捨てろと告げると戦闘服は素直に武器を捨て、ウィークエンドも武器をする。クアトロ・セブンはそれを止めろと告げようとして、桜の後ろにいる覆面の自衛官が明確に桜に銃口を向けているのが見える。そして、UH-60JAから降りて来た覆面の自衛官達が高電圧を流せる特別製のテーザーガンを抜いて、問答無用で撃った。

 2人は電撃に屈するように膝を付くと。鋼鉄製のワイヤーで捕縛して、あっと言う間にブラックホークに連れ込んでいってしまう。野次馬達は自衛官や警官達に賞賛の声を送り、手を叩いたり歓声を送った。自衛官達は無言で素早くヘリ戻って去っていった。


「……ふりだしに戻りました」


 クアトロ・セブンは舌打ちをすると銃を消した。そして、テン・バーと桜の方に。桜は変身したままであった。クアトロ・セブンは桜をお姫様抱っこしそのまま大きく跳躍する。それにしたがって3人も跳躍して去っていった。

 歓声は5人にも送られる。5人は適当なビルの屋上着く。クアトロ・セブンは桜を下ろす。


「お兄「何であんなことをしたんだ!」


 クアトロ・セブンは桜の頬を引っ叩いた。


「お前は魔法少女としての訓練を受けていない!

 相手はジェーンですら傷を負わせるんだぞ!お前なんか一発で殺さるんだぞ!!」


 クアトロ・セブンは昇の口調で怒鳴りつける。テン・バーがそれを止めようとして、グッと抑える。ベルサイユやジェーン・ザ・リッパーも止めない。


「だって、お兄ちゃんが殺されちゃうと思って……」


 桜がひどく狼狽しながらも答える。


「僕は其処まで弱くない。1度負けた相手には2度と負けない。

 僕はお前には死んで欲しくないんだ!」


 クワトロ・セブンの言葉に今度は桜がクワトロ・セブンの顔面をぶん殴る。


「巫山戯んな!

 私だってお兄ちゃんには死んで欲しくない!お兄ちゃんはあの化け物に負けたじゃない!」

「僕は負けてない!

 あの戦いを正確に言えば、ジェーン・ザ・リッパーが負けたのであって、僕は傷一つ負ってない!」


 クアトロ・セブンの言葉にジェーン・ザ・リッパーが思わず、クアトロ・セブンの頭部を殴りつける。


「巫山戯るな。

 あれは私とクワトロのタッグマッチよ。相棒の負けは貴女の負け」


 ジェーン・ザ・リッパーの言葉に、クアトロ・セブンは振り返る。


「お前は黙ってろ。

 あの時、お前が援護しなくて良いと言ったんだ。だから、タッグマッチからシングルマッチだ。お前は一人で挑み、一人で負けた」

「ちーがーいーまーすー

 援護しなくていって言うのはタッチし無くて良いってことであってコンビ解消ってことじゃないですー」


 其処からジェーン・ザ・リッパーとクアトロ・セブンのメンチの切り合いが始まると、ベルサイユが此処らかと頷き、止めろ止めろと2人の間に割って入る。


「ッたく。

 桜ちゃん、今回ばっかりは俺も君の用語には回れない。それはテン・バーも同じだ。桜ちゃんが傷ついたり、死んだりしたら、俺達も悲しい。だから、もうこんな事はしないでくれ」


 ベルサイユの言葉にテン・バーも私からもお願いしますと告げる。それから、桜は小さな声でごめんなさいと謝った。


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