表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/90

(30)

明北高校と金橋高校の試合が始まった。

明にとって初めての試合だ。

もちろん明は前の世界ではレギュラーで、試合に出たこともいくらかあるのだが、これは本来はなかった試合だ。

相手の実力もわからないし、川崎がどんな球を投げるのかもわからない。

まさに手探り状態だ。

俺に守れるかな。

明が不安になっているとスタンドにいた長瀬が、

「明、力を抜け!リラックスだ!」

と声をかけてきた。

その隣にいた美穂も、

「明くん、頑張って!」

と励ました。

あいつらのためにも頑張らないとな。

明は長瀬たちに向かって手を上げて答え、守備についた。




「プレイ!」

審判が高らかに試合開始を告げた。サイレンが鳴る。

岩崎は第一球を投げる。

内角のストレート。大村のミットに吸い込まれる。

「ストライク!」

審判が手を上げる。

あっという間に二人を三振に打ち取った。

次はキャッチャーの田口が打席に立つ。

田口修。明はなんとなく聞いたことがあった。

確か高校時代は、屈指のスラッガーだったと聞いた。

プロにスカウトされ、活躍しているという噂を聞いたことがある。

岩崎が第一球を投げる。外角低めのストレート。

それを田口がバットで叩いた。

打球はレフト方向へ伸びる。小宮が追いついて取ろうとするが、打球はフェンスに直撃した。

鮮やかなツーベースヒットだった。

あんなに飛ぶのか。

明は肝を冷やした。さすがは屈指のスラッガーだ。

これは厄介だ。

次は速水。

「あぁ、こんな球なら打ちごろやなぁ。簡単にホームランになりそうやわぁ」

速水はバッターボックスにつくなり、挑発めいた独り言を口にした。

「ほう。じゃあやってもらおうか」

速水の言葉にカチンときたのか、岩崎は速水に向かって言った。

「おもろいやないか。その言葉、忘れんなや」

「忘れるか」

速水と岩崎は早くも火花を散らしている。

やれやれ、プロレスかよ。

明は退屈そうに、二人のやり取りを見ていた。

岩崎は速水に第一球を投げた。

外角低めのストレート。

「ストライク!」

審判が手を上げる。

「ほう、なかなか早いやないか。コントロールもええしな」

「これでも、ローテーションの一角なんでね」

速水の言葉に岩崎がニヤリとして答える。

「でも、ただそれだけや」

速水はポツリと言った。

「強がってられるのも今のうちだ。お前は絶対に俺の球は打てないからな!」

岩崎も負けじと返す。

あの二人は結構気が合うな。

明はそう思った。

「打てるもんなら、打ってみやがれ!」

岩崎は第二球を投げた。

内角に食い込むストレートは、直角に曲がった。

シュートだ。

これはイケる。明は確信した。

「じゃあ、打とうかな」

速水はそう言うと、バットを振った。

そのバットと外に曲がった球がぶつかった。

キィン!

ボールは一気にスタンドに吸い込まれていった。

ホームラン。

先制されてしまった。

あまりの展開に、岩崎は呆然としていた。

「色んな変化球投げられるだけじゃ、俺は押さえられないで」

速水はベースを回りながら言った。

マズイ。

明は冷や汗をかいていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ