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地方大会第2試合当日ーー。
明たち明北高校野球部はグラウンドに座った。
明は緊張していた。
といっても明は前の世界では多くの試合に出たことがあるので、試合に出ること自体は問題ではない。
問題はこれが前の世界でもなかった試合だからだ。
未知の相手と戦う試合。
前の世界でもなかったことなのだから、緊張するのも不思議ではなかった。
「明、今日はお前のデビュー戦だな。絶対勝てよ」
長瀬が明の肩を叩いた。
「明くん、今日は活躍してよ」
美穂も笑いながら明に発破をかける。
どうやら友人二人は完成に他人事だと思っているらしい。
やれやれ、もうちょっといい友達を作ろう。
明はバックをかけ直した。
明北高校野球部は、一塁ベンチに座った。
最初は本日の対戦相手である金橋高校のシートノックを見ることにした。
だが、前にも言った通り、金橋高校はお世辞にもあまり守備が上手くない。
「ぷっ。マジであの守備で1回戦突破したのかよ」
臼田が吹き出す。
「マジかよ。全然ボール取れてねぇじゃん」
大村もつられて吹き出す。
「あれでホントに去年ベスト4かよぉ」
井川が笑い出す。
確かに、ベスト4にしては守備があまりにもお粗末だな。
明は不振に思った。
金橋高校の野手は、ボールをポロッと落とし、それを慌ててつかみ、投げて大暴投というベスト4をとった事すら疑問に感じる守備だった。
「あ、あれ見てみろよ」
北野がブルペンの方を指差す。
そこには投球練習をしている速水と田口の姿があった。
速水はセットポジションから投げる。
130キロはあろうボールが、田口の構えるミットに音をたてて吸い込まれていく。
「速ぇ!なんだアレ!」
小宮が声を上げる。
明北ベンチがあっけにとられていると、速水はまた投げる。
たまはさっきと同じ速さで直角に曲がった。
高速スライダーだった。
「あんな縦に変化するスライダー見たことねぇぞ」
井川は目を丸くしている。
「要するに、金橋高校はあの速水ってピッチャーのワンマンチームってことか。打球が飛ばねぇからあんなに守備が下手でもベスト4まで行ったんだな」
藤田が言った。
「じゃあ、俺たちが勝つには守りきるしかねぇのか」
沢田が噛みしめるように言った。どうやらすっかり縮み上がったらしい。
まいったな。あれじゃ勝てっこないな。
明もすっかり戦意喪失していた。
次は、明北高校のシートノック。
金橋高校のナインは、岩崎の投球を見ていた。
岩崎は実に様々な球を投げる。
カーブ、シュート、スライダーなど、球種だけなら速水に負けていない。
「うわっ、あの投手スゴい変化球投げるぞ!」
「俺たちに打てるかな…?」
金橋高校ナインもちょっと戸惑っている。
すると、
「あんさんたちが打てるわけないやろ、あんな球」
と速水が言った。
選手たちはびっくりした顔で速水を見つめる。
「あんさんたちは気楽にやればそれでええんや。ウチは俺と田口がいれば勝てるんやから」
と速水は続けた。
「は、はい…」
選手たちは、速水の言葉に大人しくなってしまった。
試合開始。
明北高校は後攻。
明の未知の試合が、今始まった。




