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次の日、明はサードとして練習に臨む。

守備練習に入る。

「セカンド!送球遅れてるぞ!」

森先生が注意する。

「すいません」

セカンドの臼田は、帽子を取って礼をした。

スゴい。明は改めて周りを見渡す。

ファーストの藤田。

セカンドの臼田。

ショートの北野。

ライトの沢田。

センターの井川。

レフトの小宮。





このレギュラーの中に1年生に自分がいる。

ここに自分がいてもいいのだろうか。

他の選手に比べたら圧倒的に経験が少ない。正直まだキャッチも満足にできない。そんな僕がスタメンで出るなんて…。

「サードォ!」

北野の叫び声が聞こえる。

明はハッと気づき、前を見る。ボールがこっちに来ていた。

しまった。

明はグローブを構えるが、ボールはグローブに当たり、後ろに反れる。

「サード何やってんだ!集中しろぉ!」

北野が叫ぶ。

「すいません!」

明は大声で謝ると、ボールを取りに行った。




練習終了後、明がスパイクから靴に履き替えている時に、

「おい、明」

と北野が話しかけてきた。

「えっ?な、なんですか?」

靴紐を結んでいる最中なので、明は反応が少し遅れた。

「お前、今日守備練習の時によそ見してたよな」

それか。結構しつこいんだな、この人は。

そんな気持ちを噛み殺して、明は、

「いやぁ、まだ慣れなくて…」

と頭をかいた。

「でも、頼れるのは明しかいないから、頑張ってくれよ」

北野は他人事のように言った。

「は、はい…。頑張ります…」

明は返事を返すので精一杯だった。

やれやれ、未来が変わってもこれじゃ報われないな。

明はベンチを後にした。





その頃、金橋高校でも練習は行われていた。

これからノックの時間だ。

「よし!いくぞ!まずはファースト!」

監督がノックを開始した。

が、野手はボールを捕球するばかりか、グローブで弾いたり、トンネルをしたり、あろうことか避けようとする者までいる。

毎年好成績をおさめている金橋高校にしては、あまりにも現実とかけ離れている光景だった。





物事には必ず「例外」というものが存在する。

大多数の人の中に「そうではない」人が必ずいる。

そう、エリートが集まる金橋高校にも、例外が存在するのだ。

今の金橋高校野球部にはその例外ばかりが集まってしまったのだ。

だが、ここで言う「例外」は「落ちこぼれ」という意味ではない。

いわゆる「普通の人」ということだ。

「普通の人」が金橋高校流のハードな練習についていけないだけなのだ。




その「普通の人」を尻目に、速水が投球練習をしていた。

速く、キレのいい球はキャッチャーのミットにおさまる。

野球部からしてみたら、速水の方が「例外」なのかもしれない。

「速水、今日も絶好調だな」

キャッチャーが速水に話しかける。

「あぁ、田口。今日はすこぶる調子エエわ」

速水は田口に笑いかける。

この田口修(おさむ)も、またエリートだった。

小さい頃はリトルリーグで4番を務めていた。

「それは頼もしいな。うちはお前に頑張ってもらわないとオシマイだからな」

田口は速水に期待を寄せた。

「心配せんでも、うちは俺がバッサバッサと打ち取れば負けないんや。俺一人の力で優勝したるわ!」

速水はセットポジションに構える。

そして、田口のミットにボールを叩き込む。

第2試合は明日である。

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