02
完全に遅刻です
埃が舞う。
煙草に火をつけて、ぼろぼろになった紙の束を眺めた。
絵の所有者は殺された。そして殺した暗殺者も既に死んでいる。病死らしいが、死体もないから判断できない。病死に見せかけた殺し方なんざ腐るほどある。
ルナティクスは情報の塊のような場所だが、真偽が混ざったところだ。目で見たことしか信じない俺のような奴には限界がある。
だから俺はここにきて、こうしている。場所は、例の暗殺者が所属していたギルドだ。
とんでもないスピードで事が進んでいるようで、既に死んだ暗殺者の名前は残っていない。記録から抹消されているが、実際に紙に残した記録は簡単には消せないし、消せたとしても必ず不具合が生じるはずだ。
「……アルテマ?」
そして見つけた一つの名称。幾重も重ねられた暗号を解き、現れた。今回の一連の事件にこいつが関わっているらしい。
アルテマねぇ。聞いたことないな。
「てめぇ、や、闇の、帝王……!!」
「邪魔すんな」
ばらばらとめくり続ける。
金額の羅列、これは帳簿か。
暗号、隠蔽工作、アルテマという名、抹消の跡。…組織名か。
脳に叩き込む。
おかしい。
情報の漏えい防止のために、殺した当人すら殺害するのは珍しくない発想だが、それにしては金額が大きすぎる。承諾するまでに期間もあいていない。
即座にターゲットを殺し、物品関係もすべて焼失させ、その殺した暗殺者も殺して事実を隠蔽する。そんな依頼をこんなにも快諾できるか?
「……」
金は権力で、力だ。一つのギルドが首肯せざるを得ないくらいに。怪しいとわかっていてその大金を受け取ったのは、金に目がくらんだからだけじゃない。
金は単なる理由付け。受け取らなければならない怪しい大金だった。
一つのギルド相手にそれができるくらいに、この組織には何かがある。
単なる1枚の絵を持っていた人物の殺害に入念な隠蔽工作と大金。それができる権力か。
銀の言うでかい組織が何なのかがこれでわかった。
アルテマ。調べる必要がありそうだな。
「てめ、え…そんな、ギルドを…。メンバーを皆殺しに…」
「うるせぇっつってんだろ」
血しぶきがとぶ。
問題ない。書類も保管されていたデータも全部覚えた。汚れたところで不都合はない。
すみませんでした!!




