05
リオは仕事ということでその場で別れ、わたしとゼロさんはまたカジノに遊びに行った。
服を買ってもらい、ゼロさんの服を選んで、おいしい飲み物を飲んでお菓子を食べた。
それから、弓や銃の遊びをして、ボールの打ち合いとか投げ合いとかして、すごい音楽とダンスをしているところによくわかんないけど飛び込んでみて、お風呂で汗を流してベッドへ直行。
気付けばくたくただった。
くたくただけど、楽しくてしょうがなかった。
「満足かよ」
「ふへへへ…楽しかったぁ…」
「宿泊施設と休憩室は魔力を奪ったりしねぇから疲れたらここで休めよ。宿泊は有料だが、休憩は金とらねぇし」
「うん。わかった」
ゼロさんのとった一室は、夜景もきれいだし部屋も広い。ベッドもふかふかで広いから、存分にごろごろできる。あと、ゼロさん用の酒もずらりと並んでいた。
「ガキ。俺は明日、ルナティクスを出る」
「………へっっっ!?」
酒瓶を傾け、ゼロさんはベッドにいるわたしを見下ろす。
なんで。とは言えない。理由はわかってる。ゼロさんはこんな風にゆっくりできる道を選んでいない。
「十分休んだからな。ここにいる理由がない」
いやだ。も違う気がする。止める理由がない。
そもそもどうしてこんなに行ってほしくないんだろう。もう心細くもないし、居場所もきちんとある。何も怖がることだってない。ゼロさんは、十分してくれた。
「……さみしい」
考えた結果、それがわたしの答えだった。
わがままで自己中心的な答え。だからなんだって言われる言葉だ。ゼロさんには関係ない。
「知るかよ」
ほらね。
わたしだって、知るかよって思う。
「だってさみしいんだもん!」
でも貫くことにした。
それが本音だったし、止める理由なんてないし、止めていいとも思ってない。だからかっこ悪く喚くしかない。
「不安もないよ、怖くもないよ!地上の大人なんて、あのオトナと比べたらなんてことないよ!
それに銀さんもクガネもルナもリオもうるさいけどルピもいる!でもさみしいんだもん!
わがままだけど寂しいんだもん!」
ゼロさんは黙っていた。黙ってタバコを吸って、わたしが静かになるまで一言もしゃべらない。でも目は逸らさず、じっとわたしの話というか、爆発を聞いてくれて、結果的にだんだんとわたしの方が恥ずかしくなってきた。ルピのことマシンガンって言ったけど、人のこと言えないや。
なんだよ、もう。
いつものめんどくさがりになってよ。
泣きたくなってきた。
「おい」
「…ぐす」
「お前にはお前の目的があるだろうが」
ゼロさんは慰めるでも面倒と放置するでもなかった。
怒ったように、諭すように、真剣にこちらを向いている。
「俺にも俺の目的がある。お前の甘えに付き合うつもりはねぇ。お前も俺も、そんなに暇じゃねぇだろ」
「…うん」
わかっている。ゼロさんは正しい。こんな甘えは許されない。
やらなければいけないことがあって、それを我儘のせいで塗りつぶすなんて、馬鹿げた話だ。
そう。ゼロさんは正しい。
「……次会うまでだ」
「つぎ?」
「次俺がルナティクスにくるまでに、金を用意しろ。いつ戻るか俺にもわからねぇが、その時に用意できてたら、あの依頼叶えてやるよ」
ゼロさんは初めて、にやりと笑った。
いたずらに成功したみたいな、いつもの悪魔の笑い方。何度も見て、これから見れなくなる笑みだ。
どばっと涙がこぼれた。
「…めんどくせー」
「ごめん、ちょっと待って、ぎっって止めるから!」
「ぎっって何だよ…」
大丈夫。ゼロさんはまた、と言った。ゼロさんは約束を破らない。なにせ嘘つくくらいなら、平気で相手を傷つけていくスタイルの人だ。
気遣いもしない。遠慮もない。泣いている人に面倒だっていうくらいだ。
だから、また会える。また会えるから、それまでわたしも頑張る。
「あ、明日戻るとか、やめてよ!絶対お金たまらないから!」
「あー、確かに。そのルールは決めとかねぇとな。1年以上は空けることにするか」
「1年…」
「嫌なら5年」
「嫌じゃありませんとも!」
それじゃアガドのリセット終わってるじゃん!依頼の意味ないじゃん!
ばっと起き上がったわたしに、ゼロさんは微笑を浮かべる。
「なんかあったら連絡しろ。気が向いたら戻ってきてやる」
「ゼロさんも、怪我はなるべくしないで。絶対に死んだら嫌だよ」
「約束は守るし、依頼が仮でもあるのに放棄はしねぇ。死なねぇよ」
ゼロさんの大きな手がぼんと頭に置かれる。わたしはその手を掴んで立ち上がった。
「ゼロさん!もうちょっと遊ぼう!しろべぇも行くよ!」
「あ?お前限界だっつってただろ」
「限界を超えていくんです!ゼロさん似の人形を手に入れるのです!」
「俺に似ているやつなんざねぇだろ」
「探す!とにかく行くよ!」
扉を蹴破り外に飛び出す。
人形のコーナーを探し回ってみつからなくて、ゲームコーナーにいって見つからなくて。
結局しろべぇと同じところで黒いネコを捕ってもらった。もらったというか、ゼロさん指導のもとでわたしが捕ったのだ。
手に入れたのは目に傷がついている中々凶悪な顔をしているぬいぐるみ。いろいろある猫の人形たちの中でも、唯一シャーッと威嚇しているやつだ。
「ゼロさん、この子に名前つけて」
「……クロネコ?」
ゼロさんのネーミングセンスは皆無であることが判明。クロちゃんで察するものはあったけど。
そして部屋に戻って眠った。眠るまでゼロさんは近くにいてくれて、眠り落ちるそれまで話をしてくれた。
翌日の朝にはゼロさんの姿はなかった。
朝でも夜中のように暗いルナティクスでは、昨日と変わらない時間が続いている。わたしは両端にいたクロネコとしろべえを抱きしめ、決意を新たに部屋の扉を開いた。
これにて一幕外界編は終了です。
長くお付き合いいただきありがとうございました!
第二幕は7月から始める予定です
よろしければまたお手に取ってくださいませ♪
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