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破壊の魔王  作者: Karionette
外界編 第七章 ルナティクス
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15




「………で?どういうことだ?」


「逃げられた」


「洞窟塞いどいて、なんで逃げられるんだよ」


「何故か地下に潜ったみたいで…」


「あ?」


「あと、こんな書置きが」



狐が示す先には石を掘ったメッセージがあった。読むのも馬鹿らしい内容だが、なるほど、あのクソガキの仕業か。



妾は逃げるぞ!人質をさらっていく!邪魔されるのは嫌じゃから空を行くぞ!追いついてみーろやーい!


追伸、もしも捕まったらちゃんと謝るぞ!あとイーリスが助けてと叫んでおる!


ルナより



「これ書いたのあいつじゃなくてイーリスでしょ」


「正確には書けって指示したやつがあいつだろうな」



つーか空を行くって言って、最初に地面に潜ったのかよ。ほんと自由だな、あいつら。



「それで…どうする?ゼロ」


「一発ぶん殴りたくなってきた」



主にあのクソガキを。なんだよ、最後の追伸。



「じゃ、こいつ頼んだ」


「うん」



俺は血まみれのクガネを手渡し、空を飛んだ。


血まみれといっても、ほぼヴァンパイアの血だ。自分の血を自由に操れるヴァンパイアは、こいつに血をぶっかけて麻痺させて逃げたらしい。麻痺っつーか寝てるだけだけど。


ヴァンパイアも血まみれだって聞いたが、あいつ…調整ミスったか、止血忘れてんじゃねぇか?



「どうでもいいけど、ほんとふざけてんな」



飛んでみてわかったが、行く道が分かるように、空には赤い軌跡が描かれている。とりあえずはその通りに飛んでみると、赤文字が書いてあった。


― 好きな食べ物を答えろ ―


ちなみに道はここで途絶えている。



「………酒」



道が現れた。なんだよ。食い物じゃなくていいのかよ。


次に進む。

また同じようなお題が出てきた。



― 嫌いな食べ物を答えろ ―


「特にねぇ」


― 好きな色を答えろ ―


「黒」


― 過去一番の危機を答えろ ―


「…俺にとっての最初かな」


― 得意なことを答えろ ―


「戦闘」


― 趣味を答えろ ―


「趣味…なんだろうな。喫煙?」


― 将来の夢を答えろ ―


「俺のことを知る」


― この場所は好きですか? ―


「おい、いい加減にしろ。なんだ、この茶番」



長いんだよ!飛んでは質問、飛んでは質問。あいつらの質問事項がなくなるまで続ける気か?冗談じゃねぇよ。



― イーリスの良いところを答えろ ―


ダメ押しと言わんばかりに続く質問。

めんどくせぇ!!



「…いや、わからん」



少し考え、何も思いつかなかった。正直に答えたのに道は現れない。ほんとなんなんだよ!



「いいところなんかねぇ!」



わからねぇってことは無いってことだろ。そう答えると文字がゆらゆらと揺れる。そしてゆっくりと変わっていき、そこに現れたのは。



― ひどい!!! ―


「知るかよ!!」



つい一人で叫んだ。無視して飛んで行こうとしたら、しつこく文字は追いかけてくる。破壊してやろうかと思ったが、どうせまた現れるだろう。


もうめんどくせぇ。



「ヴァンパイアのいいところなら答えてやるよ。あいつは強い」



道が現れた。



「ちょっとルナ!?それはないでしょ!」


「いや。でもじゃぞ!ルシファが人を褒めるなんて珍しいんじゃぞ!」


「じゃぞじゃぞじゃないよ!ああ、もう、ひっどー」


「す、すまなかったの。イーリス。あだだだだ!髪を引っ張るな!次はそなた関係の質問にしようぞ!な!」



耳を澄ませばそんな声が聞こえる。目を凝らせば、一部の空間が動きで乱れているのがわかった。



「…はぁ」



俺はそれから目を背け、赤いラインに沿って進んだ。




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