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破壊の魔王  作者: Karionette
外界編 第七章 ルナティクス
82/354

09




「……ということだ。ティナの所有者でもない人間が、ここに立ち入るのは初めてのことにはなるがよろしく頼む」



銀さんはそう締めくくった。


眼前にはたくさんの生き物たち。人間や動物寄りなのがほとんどだけど、もう意味のわからない生物もいる。さすがに全員を集めて全員の前で…とはいかないので、お決まりの銀さんの力である。よくわからないけど、わたしはみんなが見えるし、みんなにもわたしの姿は見えてるらしい。



「なにか質問はあるか?」



唾を飲み込む。

何を言われるかわからないけど、しっかりと答えないといけない。



『『『よろしくー』』』


「ええ?」



そんなもん!?



『それよりもゼロはどこいったんだよ!』


『なんで来てくれないの?』


『銀様、なんとかしてよ!』


『連れてきて連れてきて!』



ゼロさん大人気。

こんなに慕われてるのに、いつものめんどくさそうな顔が浮かぶ。



「あいつは大変なんだが…」


『でも連れてこないとこないじゃん』


『銀様がんばって!』


『しろー頑張れー!いーりすー、おれだぞーくがねだぞー』



しれっと混ざってきたクガネに手を振ると、ぶんぶんと尻尾を振って返してくれた。かわいい。



「わかった。なんとかしてみよう」


『『がんばれーーー!』』



なにをするんだろう?


銀さんは目を閉じて、両手を軽く前に出している。


心なしか口元が緩んでる。楽しそうだ。



「さあ、勝負だ。ゼロ」



途端に画面が映し出され、そこにゼロさんが昼寝していた。周りから歓声が上がる。その声はゼロさんには聞こえないはずだし、映されているのも分からないようになっているらしい。


それでもゼロさんはぎろりとこちらを睨んできた。


銀さんの指が動く。跳ねるように飛び出し、広い平原に立つゼロさん。指が、手が動き、ゼロさんはそれを避けて、何かを弾いている。ゼロさんの口角もにやりとつり上っていた。



「この街は私の街だ。誰でも連れてこようと思えば可能だ。こんなふうに」



銀さんが右手を振ると、わたしの前にクガネが落っこちてきた。



「いーりす!」


「クガネ!?」



目をキラキラさせて尻尾を振るクガネに()し掛かられたままなんだけど、銀さんは構わず説明を続ける。



「だが、あいつは…私の力さえも破壊し避けてくる。掴もうとしても、引こうとしてもな。

結果、互いの行動の読みあいとなる。これが下手な盤戦よりも面白い」



銀さんの手の動きが激しくなる。ゼロさんは目を閉じて、踊るように闇を薙ぐ。何が起きているのかわからないけど、光と闇が戦っているように見えた。


突如、ゼロさんが地面に拳を叩きつけた。

同時に背中に大翼が広がり、溢れんばかりの闇がゼロさんを覆った。銀さんの舌うちが響く。



「ここまで力をつけてきたか」



すると映像が次々と真っ暗になって消えていく。最期に残ったのは、ゼロさんが中指をたてている映像だけで、それもぷつりと消えた。銀さんがふうっと息をつく。



「しろ!まけたのか?」


「ああ。成長する生き物は、やはり末恐ろしいな。いくぞ、イーリス、クガネ。あいつはあそこにいる」



来ないなら行くまでだ、と銀さんは小さくこぼして転移した。


そこは集会所ならしく、少し大きな建物。いつの間にかそこは人だかりができていて、もういろんな人…じゃないけどいる。みんなきゃーきゃーと正直やかましい。



「うるせぇんだよ!!」



心の代弁者現る。



「やああああ!ぜろおぉぉぉお!」


「ゼロ様ぁああああああ!!」


「きゃぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーー!」


「無事で…良かった…良かったよぉお」



言うことを聞かない周り。中には泣いている人までいる。


すっっっっごい慕われてるんじゃん!



「ぜろはな、えいゆうなんだ」


「英雄?」


「ここをまもったんだぞ。しろがうごけないときにたすけてくれたんだって。


それに、いーりすみたいに、ぜろがここまでつれてきたやつもおおいんだ。だから、みんなぜろのことはだいすきだぞ」



あんな屋根の上から、怒鳴られてるようなものなのに、大喜びのみんな。ゼロさんも怒ったり、めんどくさがってるんじゃなくて、にやりと笑ったいつもの顔。


なんだろうなー、あのスター性。犯罪者やってるのがもったいないよ。わたしにだってキラキラして見える。



「さて、遊びが過ぎたな」



銀さんが手を叩くと、ゼロさんの乗っていた建物が消えた。


そして次々と周りの建物が避けていき、大きなテーブルや椅子が並べられていく



「うちも手伝うよ!」



ばっと飛び出した妖精女王のルピは胸いっぱいに抱えた花を散らせていく。


妖精の胸いっぱいなんて量からすると大したことないんだけど、花はみるみる広がり、机や椅子を装飾する。とても幻想的な光景だ。



「お前の歓迎会だとさ」


「え。わたしの?ゼロさんじゃなくて?」


「すでに来たことあるやつに、ようこそは可笑しいだろ」



ゼロさんが煙草で刺した先には、ひざ下くらいの身長の子がいそいそと看板を出していた。見かけも人間みたいで、全体的にふっくらしている。ゼロさんはあの人たちを小人と呼んでいた。


そしていつの間にか、周りはたくさんの料理や飲み物でいっぱいになっている。



「歓迎しよう、イーリス。ゼロも無事でよかった。そしてついでだがヴァンパイアのルナが戻ってきている。皆、今日を祝おう」



銀さんの合図で声が飛ぶ。


クガネがうれしげに遠吠えをして、ゼロさんが一瞬で酒を飲みほした。わたしももらった果実水を飲んで、ん?と思って首を傾げた。そしてゼロさんを見た。



「そういえばルナは?」




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