07
「私は龍だ」
龍?
ドラゴン?
あの有名すぎるおっきいやつ?あれも実在したの?え?人間どうやって勝ったんだ?
あ、でも生きてるから勝ってないのか。え、でも人間の姿だし。え?え?
「本来の姿は他の生物と過ごすには不便すぎる。よって、人の身なりへと変えた。本体はここを構築するための基点としている」
…えーと、変身したということか?分身作ったってことか?暮らしやすくするためにね。そうだよね。龍とか高コストだし。え?でも基点ってなんだ?
「ここ、ルナティクスの裏の姿は、アクセス方法がないわけではないが、現実世界より視認できないようにしている。それをするためには異空間化する必要があり、私の本体はそれの基盤に使っているのだ」
基盤?基礎か。このルナティクスっていう世界の基礎的なものってことか。ということは銀さんが死ぬとこの世界はなくなるってことか。
「そう。私が死ねばここはなくなる。そして私は本体から長く離れることができない。ここでしか存在を保つことができないと考えていい」
はー…なるほどぉ…。
心読めるの!?
「疑問に思うであろうことに回答しているだけだ」
どんな天才なんだ!!!
「この場所を保つには膨大な魔力が必要だ。
生き物の生きる水も空気も光も、全て魔力で補っている。それを入手するため表のルナティクスでは魔力を集め、裏のルナティクスでそれを用いている。先ほどの転移もその一部だ」
「じゃあもしかして…」
「そう。街に浮かぶ結晶、あれは魔力の結晶だ。魔石の上位をいくものだ。あれから水も空気も得ている。太陽光を嫌う生き物は多いため、光源としても利用している」
「でも…」
「そのとおり。魔力で補えないもの。例えば空や木樹、大地は私の力で作成している。外の世界より持ち込んだものもあるが、私の龍の力に触れたせいで、外界のものとは異なったものも多い」
この人はこの人で話にならないな!!
「それはすまなかった」
もうやだ!!
「クククククックク」
そしてずっと笑っているゼロさんよ。文句言いたいのもわかるでしょ?
ゼロさんの心を読むのよりひどいよ、これ。
「この世界事態がこいつの体内みたいなもんなんだ。予測で回答しているのもあるが、思考はほぼ完全に読まれてる。この空間内で隠し事は無理だぞ。工夫しなきゃな」
そんなことを言われましても。隠し事なんてしないし、なに隠していいかもわかんないって。工夫とかもう意味わかんないよ。
「ふむ。、話が早くて良いと思ったが気に障るようならばやめよう。
偽かどうかはゼロが判断してくれ。私はお前のように、人の表情の動きや仕草で判別はできない」
「了解だ。まぁ、安心しろよ。こいつそんなに器用じゃねぇから」
「ほんとだよ…」
話しまくるルピと、話さなくても話が進む銀さんと…。なんか、どっと疲れた。
「この場所と、私については理解しただろうか」
「えーと、つまりは、異次元空間と天才ドラゴンさんですね」
ちょっと冗談交えて、軽い調子で言ってみた。
「異次元とは違う。一応実在はするがたどり着くのは困難なだけだ。実際はある孤島の海底になり、実在する孤島の裏側になる。
そして私は天才でもドラゴンでもない。
龍種は人間より知能に優れているためにそう思うかもしれないが、天才というのは同種のなかで突出した力を持つものを言う。私は龍という種の中で突出しているわけではない。
そして、龍とドラゴンは別種となる。私は龍であり、ドラゴンではない」
冗談が、冗談も言えないくらいの言葉で返ってくる…。
「おい、銀。こいつ頭爆発してるから、手加減してやれ。俺じゃねぇんだから」
「……人間は思考伝達ができないのが不便だな。それに人によって情報の処理能力も違う。ここまで個体差に大きな違いがある種族は人間くらいなものだ」
「お前も表では合わせてるだろ」
「ここは裏だ」
表やら裏やら、もうよくわかんなくなってきたよ。でもゼロさんが助け舟を出してくれたのはわかる。ありがとう、ゼロさん。
二人が話している間に整理だ。
とりあえず、ここは実在する異次元空間ってかんじか。海底にあるらしいけど、絶対こんな風景は広がっていない。絶対に。
これは龍である銀さんの力の賜物で、魔力を使って構成している。生きるのに必要なものも全部。
空まで持ってこれるんだから、それこそ何でもあるのだろう。光も太陽光じゃないけどあって、太陽じゃないからゼロさんは光の中でも大丈夫だったんだ。
そして銀さんはこのルナティクスから出られない。その代り、ここではもはや何でもできると言っても過言じゃない。
こんな感じかな。うん、こんな感じだ。たぶん。
「では、表のことを話そう」
タイミングを見計らって、銀さんは続ける。
「表では裏で必要な魔力に物資を稼いでいる。稼ぎ方は娯楽施設がほとんどだ」
「娯楽?」
「そう。そこへ人間を招き、そこに存在するだけで魔力を微量に徴収している。また、金銭の支払の代わりに魔力での支払を可能としている。それは世界で許可されていない方法だ。
表には軍や政府といった世界的組織がない。よって、簡潔にいえば表のルナティクスは娯楽を極めた無法地帯だ」
またとんでもないことを言いやがりましたよ。無法地帯といえば、犯罪者の街ってことだ。犯罪者に苦しんできたわたしにとんでもないことを…。いや、あまり気にしないけどね。
「そしてそこには銀の連合の本部がある。ゼロから詳細は聞いているか?」
「いや…巨大なコミュニティってことくらいしかわからない」
「間違ってはいない。連合を通して仕事を依頼し、また仕事を受けることができる。こちらの収入は依頼料の数%、仲介手数料と考えてもらえればわかりやすいだろうか。
もちろん同じ連合の人間といえど、個人間のやり取りに私は関与しない。ただ、誰か宛てに依頼されたものをこちらで斡旋するのに、料金をいただく仕組みだ」
「あまり大きな声で言えない仕事ってことだよね」
「言えるものなら通常のルートで依頼すればいいため、そういうことになる。連合に頼るのは法や道徳に触れるものばかりだ。暗殺に窃盗、誘拐に家の没落など多岐にわたる」
連合は大きなコミュニティで仕事の斡旋場所。
わたしには相場なんてわからないけど、大きなお金が動く場所なんだろう。
「使えない人間は不要だ。だから連合には能力がある者しか入れることはない。それは料理の腕でも殺しの腕でも、または権力でもいい。私が認めた者しかいれることはない。そして連合間での取引に暴力を禁じている。
【殺されたくなければ従え】が通じれば、単純な力が強い者が闊歩することになる。それが確認され次第、私の手でその者は排除するようにしている」
これは少し前に、ゼロさんとあの料理人さんの間でいってたことだ。全面禁止ではなくて、あくまで取引を行う上での力による強制を禁止ということだ。
排除は俺とかにやらせてんだけどな。とゼロさんが不満げに言った。
そうだよね。銀さん、ここから出られないんだし。その人より強い力がある人に頼むってことになるなら、安定なのはゼロさんだよね。
「ゼロさんも連合の一人なの?」
「いや、加入してねぇんだけど、してるようなもんだな。
俺がこいつに仕事を頼めばそれが連合宛てになるし、こいつもこいつで連合の仕事を俺に回してくるし。何故か俺個人への依頼も銀を通す仕組みになっちまってるしな」
誰かさんが意図したことな気がする。
「これが表の収入源、そして裏の収入源になる。取り締まりのためと軍がくることもあるが、その場合は応戦し場合によっては場所を移す。その際は丸ごと転移するだけだ」
ものすごく簡単に言うけど、そんな簡単なことじゃないんだろうな…。
「以上がここルナティクス、狂人たちの街の説明だ。質問があるなら聞こう」
銀さんはそう締めくくった。




