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破壊の魔王  作者: Karionette
外界編 第七章 ルナティクス
79/355

06




「ここにいたか」



女同士の喧騒の中、冷や水を落としたかのような銀の声。悩殺マシンガンも引き金を引くのを止めたようだ。

それにしても、あのチビ女王によく付き合うな。あいつ。



「銀!聞いてよ!ゼロもイーリスちゃんも酷いんだよ!うちのことをね!」


「大体わかった。お前が悪い。ルピナス、少し静かにしていろ」


「まだ何も言ってないわ!!」



ぶんぶんと羽虫のように銀にまとわりつくも、聞く耳を持たない銀はぎろりとこちらを睨んできた。

あー。わかってるよ。まだ他のやつに気付かせたくなかったんだろ?こんな五月蠅いやつには特に。



「遅かれ早かれ、だろ?」


「私にとっては遅い方がよかっただけだ」



ほんと嫌味なやつ。



「まぁいい。後で処理しよう。ゼロ、木で寝るくらいなら自室へ戻って休め。アビスシードは私が預かろう」



ちらりとガキに目を向けると、見るからに戸惑っている。銀と視線を合わせることができないらしく、珍しくも怯んでいるようだ。


まぁ、そうだよな。何の感情もない視線ほど、無機質で不気味なものもねぇだろう。



「どうせ家は妖精どもで埋め尽くされてんだろ。一旦非難する」


「お前は街の皆に挨拶くらいしても良いと思うがな」


「めんどくせぇ」


「ふ。そういうと思った。ルピナス。わかっているとは思うが他言無用だ。他の妖精にも伝えろ」



返事を待たず、銀は振り返った。俺は木を降り、まだ戸惑っているガキの頭を叩く。



「なにびびってるんだよ」


「な、なんか、氷みたいな目線だったから…。わたし何かしたかなって思って」



氷、ね。的を得てる。



「しょうがねぇだろ。あいつ、人間の振りしてるだけだし。感情なんてねぇから」


「………………え」


「あ?」


「人間、じゃないの?…あ、…え?だって見た目どう見ても…」



俺はそれには応えず、更に戸惑うガキを置いて銀のあとを追った。応える義務はないし、俺から応えるべきでもない。そこまで構ってやるつもりも、面倒をみるつもりもねぇからな。


俺は、安全な場所まで送ってやるだけで、その先までは保障してない。


あと単純に黙ってた方が面白そうだし。



「銀さん!待って!」



それにこいつは、俺が何をするまでもなく勝手に動く。持ち前のスピードを生かして、銀の前に立ちふさがる。桃金の長い髪をなびかせ、翡翠の眼は木漏れ日を浴びて輝いて見えた。



「わたしはアビスシードで、イーリスといいます」



銀が怪訝な顔をする。知っていることを改めて言われることが不思議なんだろう。俺は後ろで成り行きを見守ることにした。



「今日まで勝手に甘えてました!いろいろやってくれてるのに…ごめんなさい!

そして、わたしは行く宛てもなくて、今はここで暮らしたいと思ってる。なので、いろいろと教えてください!そしてよろしくお願いします!」



がばっと頭を下げるガキに、なおさら不思議そうに首を傾げる銀。


そりゃ保護対象(研究対象)としか思ってない奴にお願いされると思っていないだろう。

こいつとしては、当たり前のように住ませて、教えるつもりだったんだろう。


ガキはガキで、その「当然」に甘えていたらしい。



「…私はもとよりそのつもりだ。それを踏まえて出たいというならば止めはしない。

私にとっては知識さえもらえれば、その後は自由にしてもらって構わない」


「わかった。わたしは何でも教える。だからなんでも教えてくれますか?

あと、アビスシードだけどイーリスって呼んでもらえるとうれしいです」


「秘匿事項以外は教えよう。呼び名の件も承知した」



こいつ、しれっと「なんでも」を約束したか。前の村の件でも思ったが、意外と交渉能力があるよな。ま、銀はもともとそのつもりだっただろうから、何とも思わないだろうけど。



「歩きながら話すものでもない。私の自宅まで転移する」



ガキが返事をする前に景色が変わる。


ついさっきまでいた銀の自宅だ。外見では広々とした屋敷だが、室内はそうでもない。ま、今のところは、だが。



「い、今のは?」


「転移魔法。本来なら魔法陣を要する」



的確に応える銀。機械的だが内容に間違いはない。

俺は近くのソファーに体を預け、煙草を楽しんだ。



「まずは一番疑問に思っていることから応えよう。イーリス、今何を考えている?」



デスクに腰掛け、机の上で指を組んで、真っ直ぐとガキをとらえる銀。今度は怖気づくことなく、ガキも目線をあわせて向かいの椅子に腰かけた。



「一番……、一番かー…。んー…」



首を傾げ、頭を悩ませる。ガキが決めた質問。



「銀さんは、なんなの?」



まぁそうなるだろうな。で、回答もいたってシンプル。



「龍だ」


「……?」


「私は龍だ」



大真面目な銀と理解できないガキ。

俺はその正反対な表情をした二人を見て、後ろで静かに笑っていた。




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