表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
破壊の魔王  作者: Karionette
外界編 第七章 ルナティクス
78/354

05




「だれ!?」


「人間の声よ」


「聞いたことない声だったわ」


「ゼロの声じゃないわ」


「鈴のような声だったわ」


「あなたの声よね」


「「「あなたはだあれ?」」」



光の招待は妖精だった。妖精です。妖精さんです。

小さくて、透き通った羽が生えてるあの妖精さん。そしてみんな笑ってる。黒い…鳥のような眼でじーっと見つめたまま。



「おい、俺の連れだ。手出すなよ」



べしんと額に掌が落ちてきた。かっと熱くなって痛みに涙がでる。


でも助かった。ちょっとだけ怖いと思ったところだった。



「ゼロよ」


「ゼロだわ」


「ゼロは大好き。楽しい音を奏でてくれるわ」


「もう一度聞かせて。歌でも笛でも何でもいいわ」


「どうして逃げたりしたの。楽しかったからいいけどね」



くすくすくすくす。

うん、やっぱり怖いって。この子たち。



「お前らはうっせえから嫌いなんだよ」



大好きと言ってくれる相手にばっさりと刃を落とすゼロさん。当然、反論の嵐が起こるも聞く耳を持たないゼロさんは一蹴する。



「女王を呼んで来い。お前らじゃ話にくくてしょうがねぇ」



女王?妖精の女王様ってことか!



「女王ね」


「わかったわ。ゼロの頼みだもの」


「ゼロのお願いと聞けば女王も喜ぶわ」


「くそ、いいな。女王。うらやましっ」


「いきましょう」


「そうしましょう」



なんか一人変なの混じった。

それからもぽそぽそとしゃべりながら去っていく。そしていつの間にか消えていた。



「ごめん。わたしが声出したせいで」


「まぁあいつらの耳は異常に良いからな。どうせばれてただろ」


「じゃどうして逃げたの?」


「なんとなく」



なんとなく、か。確かにあの感じは、なんとなく逃げたくなるな。怖いというか…ぞっとする感じだ。うん。



「まぁ女王は幾分マシだから安心しろ。更にうるせぇけど」


「うるさいはうるさいんだね」


「妖精の女王だから最上級にな」



あれ以上にうるさいってどうなんだろう。


結局妖精さんが何人いたのかもよくわからなかったけど、複数いたのは間違いないし。


なんか、見えて消えてを繰り返すから、よくわかんなかったんだよね。しかも見た目みんな一緒だったし。



「必殺!!!」



高い声が森に響く。必ず殺すという物騒な言葉だけど、そんな重々しさを感じさせない子供のような声。



「女王クリティカルローリングスーパートルネードパァァァァンチ!!!」



そして意味不明な技名と共に小さな飛び蹴りがゼロさんの指先に直撃した。


直撃しても微動だにしないゼロさんの小指は、そのまま折りたたまれて、「どぅあっぷ!」という声を最後にその子は封じ込められた。


というか、蹴りだったじゃん。パンチじゃないじゃん。



「よう。相変わらずうるせぇな。チビ女王」


「チビ女王じゃないやい!うちは98代目女王のルピナス!ルピちゃんって呼んでっていつも言ってるじゃん!」


「あ、わたしはイーリスです。よろしくね」


「あ、これはどうもご丁寧に…って人間っ!???」



ということで、やかまし妖精女王ルピナスに事のいきさつを話すことになった。



「なるほどねー…」



細い手足を組んで、むむむと悩ましげに額に力をいれるルピ。


他の妖精さんたちとは違って消えたりもしないし、目だって真っ黒じゃない。髪と同じ、綺麗な桃色だ。あと、ちょっとだけ他の妖精さんより大きい。他の子は中指くらいしかなかったけど、ルピは掌くらいの身長だ。



「わかった。あとで銀から詳しく説明があるのよね!その時聞くわ!」


「つーことはわかってねぇってことだろ」


「いいのよ!とりあえず敵じゃないし、ゼロの管理下にあるんでしょ!なら大丈夫だわ!


というわけで、改めてよろしく!イーリスちゃん!


うちらは人間なんか大っ嫌いだけど、人間全部がそうじゃないから安心してね!」


「うん。じゃないとゼロさんのことも嫌ってるはずだし」


「良いこと言うわね!そいういうことよ!」



と手を叩いて喜ぶルピ。


女王っぽいとは思わないけど、表情もコロコロ変わるし、やっぱり他の妖精さんとは違うらしい。



「ねぇ!せっかくだから女の子同士お話ししましょう!妖精はね!音楽と遊びとお話しが大好きなの!」



もはや警戒心ゼロです、この子。人間嫌いってなんだっけ。



「あのね!昨日おもしろいことがあったの!クガネって知ってる?あのね!」



それからはしゃべるしゃべるしゃべる。お話しじゃない。わたしはただ聞くだけだ。


息継ぎも満足にしてないんじゃないかと思うくらいに早口でまくしたてるくせに、話の道筋がまるで通ってなくて、あっちにいったり、こっちにいったり。


質問したり聞き返す暇さえない。話を聞くことは大変だと初めて体験した。


そして止まらない。止まる気配すらない。とどめに話の内容が全然面白くない。


クガネが笑ってた。

銀が微笑んでた。

妖精たちと躍った。

海がきれいだった。


エトセトラ、エトセトラ…。


つまり、わたしが何を言いたいかというと、



「うるせぇ!!!」



そういうことになります。



「うるさいってひどいよ!ゼロ!楽しくおしゃべりしてるだけでしょ!」


「それがうるせぇんだよ!お前の話は頭がおかしくなりそうだって何度も言ってんだろ!

おちおち寝てもいられねぇ!つか、一時間もよくもったな、こいつ!」



戸惑ってたらそれくらい時間が経った感じだけど。


寝てられないよね。ごめんね、ゼロさん。ていうかわたしをおいて寝ようとしたんだね。



「1時間だけでしょ!!」


「俺と銀が5分もったことあったかよ」


「ないわ!酷いよね!ホント!そう思わない?イーリスちゃん!」



…えーと。



「ルピ、初対面で失礼かもしれないけど言わせてもらうね」


「なに!!」


「ルピの話は、悩殺マシンガン。聞いていられません」



ゼロさんがくっと吹き出す。

目の前のルピは小さい体をめいいっぱい動かして。



「褒められた気がしないわ!!」



と叫んだ。


そうでしょうとも。褒めてないもん。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ