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夜が明けてゼロさんとルナは日の当たらないところで寝て、二日酔いに頭を抱えながら海賊たちが船を操る。わたしも眠るべきなんだろうけど、なんだか眠れずあのまま船首でぶらぶらしていた。
頭を悩ましているのは、ゼロさんが記憶を失っているということ。
わたしもティナに詳しいわけじゃないけど、ティナを宿す人は何か力を求めたり、やりたいことがあるとか、そんなときに宿すと聞く。わたしの上司?だったティナ持ちの人も、復讐心で燃えてたとかなんとかで宿したと言っていた。
「ゼロさんは…それもわからないのか…」
ぽつりと一人でつぶやいた。
なんだろう。この悲しいような、悔しいような、何とも言えない気持ちは。
記憶がなくて、ティナの力だけ持って、目的もわからなくて、味方さえいなくて、体は死のうとしていて。
それはどんな始まりだったんだろう。
「どうしたんだ、ありんこ。そんなとこでボーっとしてっと海にさらわれちまうぞ?」
野太い声とともに、丸太のような腕がひょいとわたしを抱え、気づけば熊おじさんに肩車されていた。
「ゼロさんのこと考えてたの」
「好きだなあ、あいつのこと」
「熊おじさんはゼロさんのこと知ってるの?」
熊おじさんはわたしを肩にのせたまま首をふる。体がぐわんぐわんと揺れた。
「正直、ワシとゼロとは付き合いが短い。航海をともにした仲ではあっても、あの時のあいつは暴走状態の獣同然じゃった。
何も話をせんし、近寄る者すべて皆殺しとでも言いそうな危ないやつでの」
「そっか…」
「何を聞いたか知らんが、ありんこが気にすることでもないじゃろう」
「わかってるよ」
気にしたってしょうがない。
わたしが悩んだところで、ゼロさんの記憶が戻るわけじゃない。
それに…ゼロさんは言わなかったけど、記憶がない原因はたぶんティナのせいだ。ティナは人の何かを代償とするもの。
ゼロさんの場合は記憶を持っていかれた。
それなら、元通り戻すのは不可能。知識として昔のことを知ることはできても、思い出すことはない。
「うーーー…」
「なんじゃ、お前さんらしくもない。ありんこが頭をひねっても、ゼロの頭の良さに届くはずもない。あきらめぃあきらめぃ」
「わかってるよ!もう!」
悩んだってしょうがないさ!答えもでないさ!
それでも勝手に頭が考えちゃうんだもん。どうにかできないかと思って、できないよなって考えるんだもん。
「よし!そんな頭ばっかり働かせとるなら、もっと有益な仕事をやろう!ついてこい!」
「え」
ついてこいというか、今わたしは肩車されているわけで。
身長2メートル近くある熊おじさんの上で、がっくんがっくんとシェイクされながら、わたしはどこかへ連れて行かれた。




