04
赤が飛ぶ。黒が覆う。
血が迸り、剣がはしる。
腕を使い、闇を使って。着実に目の前のティナを壊していく。
血が舞う。血が舞う。
どちらの血かもわからない。口から血が溢れる。
音はない。
あるのは、鼓動の振動だけだ。
「はぁぁぁああああ!!」
血の砲弾が肩をかすめ、翼が抉れて消し飛ぶ。
力を回復に注ぎ、体制を立て直した。その間に襲い掛かってきた10の赤い爪を剣で返し、その全てをへし折る。腸が破裂したかのような激痛が襲った
ああ、邪魔だ。めんどくせぇ。
剣が消える。闇の塊のそれは形を変えて、血の止まらない右腕を覆う。固く丈夫になった腕は再生した吸血鬼の爪ごと腕を砕いた。
「強欲」
ティナの能力を破壊する黒い爪。吸血鬼の血が一瞬力を失った。
やっと体を縛る枷が解けた。悪魔の体が解放される。
腕を砕き、脚を砕き、翼を潰して血のめぐる首を切り裂く。体から血が流れる。止まらない。肉が裂けて骨が砕かれていく。
まだだ。まだだ。まだ、足りない。
悲鳴の音、壊れる音、拍動が響き、消えていく。
いらない。この島もいらねぇ。
世界の一部だ。たった一部だ。無くなったところで許されるだろう。
あとは、あぁ、命だ。
この女1匹で足りるか?いや、足りねぇな。
このまま大陸ひとつ、さすがに無理か、城ひとつくらいは死ぬ前に破壊できるだろ。
…………死ぬ、前?
だれが?
「ゼロさーーーん!!」
場違いな言葉が響くのと同時に俺とヴァンパイアは海に叩き落された。




