表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才錬金術師の最強ギルド創設記  作者: 蘭丸
間章 フリードの天才的な日常
84/198

第83話 唐突に料理回

 オレは、フラウとともにルイーズの屋敷の掃除をしていた。地下室が完成するまでの間物置代わりにしてしまっていたので、そのお礼とお詫びという訳だ。


「それにしても、埃が結構溜まっているな。これは冬以降掃除してないだろう」

「しっ仕方ありませんわ! あまりこっちで過ごしていませんもの!」

「でも、掃除のし甲斐があるよね!」

 1人で住むには広すぎる屋敷を、3人で手分けしながら掃除をしていく。


「こっちは掃除していいのか? 寝室みたいだが」

「そこは私がやりますわ。フリード様は1階をお願いしますわ」

「任せておけ。顔が映るぐらいピカピカにしてやろう」


 キッチンを覗くとここもまた埃まみれで、水場は少し錆び始めている。

 久々の錬金術奥義・錆落としで金属はもとの輝きを取り戻す。埃もしっかりとふき取ってやった。


 キッチンが終われば次は庭掃除だ。雑草をぐっぽぐっぽと抜き取り根絶やしにする。

 他にも床掃除、窓ふき……結局、3人で1日かかってしまった。


*


「ふう、結構時間がかかったな」

「フリード様、お疲れ様ですわ」

「本当だよ。フリードさん、庭と1階を全部1人でやっちゃうんだもん」


「仕事の早さも天才に求められる要素の一つだからな」

 また天才の片鱗を見せつけてしまったか。やれやれ、もはや才能を隠し切れないな。


「お兄様、お帰りなさい!」

「おう、ただいま。腹が減ったぞ、食事の準備はできているか?」

「はい、今日は私とロゼリカさんとエルデットさんで作りました!」

 今日はエミリアは実家に帰っている。夕食は我々で作る必要があったわけだが、掃除をしていない3人に任せてみたところだ。


「……なんだか不安ですわね」

 ルイーズが本人に聞こえない声でつぶやく。まあ、確かにオレの知る限り、ステラは食事を作った経験が無いはずだ。


「それで、今日の夕食は?」

「今日の料理は、お肉です!」

「何ともシンプルだな」

 肉は大好物なので否が応でも期待が高まる。掃除組3人で着席し、食事が運ばれてくるのを待つことにした。


「お兄様、お待たせしました! 私の料理です!」

「うわあ、とっても不味そう」

 ステラの持ってきたそれは、鳥肉を煮たものだろうか? 湯の中にゴロゴロと下処理されていない肉と野菜が浮いている。出汁を取ってる途中だけどそのまま料理を名乗ってみました、って感じだ。


「う〜、お兄様……!」

「ちょっとフリード様! 味見もせずに失礼ですわ!」

「その通りだな、料理は味が一番大切だ」

「僕、お腹空いてるし、早速一口頂きまーす!」

 フラウが鳥肉にフォークをブスリと突き刺すと、そのまま口に運んだ。


「うっ!? な、生煮え……! そして、味が無い……」

 フラウの顔は、肉をかみちぎったところで動かなくなった。残念ながら御臨終です。


「ステラ、料理の勉強もしような」

「ご、ごめんなさい……」

「ちょっとお待ちくださいな! きっとスープには良い出汁が出ていますわ!」

 勇気ある挑戦者ルイーズがスプーンで少しだけ掬うと、それを口に運んだ。


「……!」

「ルイーズ? 言葉を失うほど美味いのか?」

「……ごめんなさい、ステラ。私の体は、このスープをこれ以上口に入れるのを拒否していますわ」

 小さなスプーンの中のスープは全然減っていなかった。


「ステラ、明日養鶏家と農家の方々に謝りに行くぞ」

「うう、お兄様、ごめんなさい」

 残念ながらこれは失敗作だ。次の成長に期待しよう。


「よし、じゃあ次は私の番だね! 私は魚料理だよ」

 今度はロゼリカが料理を持ってきた。ステラよりも年上の15歳の女の子、しかも一人暮らし経験も長い。これは多少は期待できるか。


「これは、鯉……?」

「そう! 名付けて、『鯉の魔王風グリル』!」

 自分のアイデンティティを生かした可愛らしい名前だが、見た目は決して悪くない。ハレミアは内陸国なので海が無く、国内では鯉はメジャーな食材だ。

 シンプルに火が通してあるようだが、レモンが掛かっているようで香りも良い。


「じゃあ今度はオレが先に頂く」

「ちょっと、見た目がいいからってさっきと露骨に態度が違いますわよ!」

 ルイーズを無視して、フォークで身を食べてみる。


「ほう、表面のレモン汁が魚肉に合っていてとても……不味い!」

「ええ!? 途中まで褒める雰囲気だったじゃん!」

 ロゼリカに非難される。確かに一口目はレモンの力で美味く感じたが、噛むほどに感じる、否定できない臭み。


「ロゼリカ、泥抜きをちゃんとしたか?」

「泥抜き? 何、それ」

 泥抜きを知らないだと? なんてことだ。


「どれどれ……全然臭くないじゃん!」

 ロゼリカはオレの皿から魚のかけらを口に放り込む。本気で美味しいと思っているようだ。


「いや、確かにフリード様の言う通り、少し臭いが気になりますわね」

「本当だね、ちょっと泥臭い」

「そ、そんな……!」

 ロゼリカはがっくりと項垂れる。可哀想に、ひどい環境で育ったせいで、味覚が麻痺してしまっているのか。


「だが料理自体は悪くない。素材さえ良ければというところだな」

「うん……次は頑張る!」

 ロゼリカが気を取り直したところで、最後の人物の食事を待つとしよう。

 これはある意味楽しみだ。見た目に反して中身はそこそこまともな痴女は、どんな料理を持ってくるのか。


「皆、待たせたな」

 デットが料理を持ってくる。やはりこいつは一味違うな、裸エプロンで登場だ。


「ちょっと、エルデットさん! 流石にその恰好はまずいですわ!」

「……よく見ろ、元の布地が少ないから裸に見えるだけだ」

 デットはその場で一周する。確かに言う通りなのだが、それは元の服装がおかしいだけだよな。


「そんなことより食事だ、早く頼む」

「ああ、私の自信作、しっかり見てくれ!」

 デットは皿を机に置くと、上に被せてあったドーム型の蓋を取る。


「おお、これは……!」

「きゃああ!? ね、ネズミですわ!?」

「これはネズミじゃなくてカピバラだ。川に行けば簡単に取れるから、捕まえてきたんだ」

 皿の上にはカピバラの丸焼きが置いてあった。当然丸焼きなのでしっかり顔もついていて、げっ歯類特有のチャーミングな歯が見えている。

 何とも食欲をそそらないビジュアルだ。では、早速食べるとしよう。


「うーむ、これは美味い! スパイスがしっかり効いていて、全く臭みを感じない」

「じゃあ僕も。……うん、美味しいよ!」

「ほ、本当ですの……?」

 ルイーズも恐る恐るといった感じで、少しだけ肉を切り分け、口に入れる。


「う……。悔しいですが、美味しいですわ」

「……なんで悔しがるんだ」

 とにかく、こいつは当たりだな。見た目がアレだが味はまともなのも、デットのイメージに合っている。


「デットがいてくれてよかった。まともな食事にありつけないところだったぞ」

「これがまともかは賛否両論だと思いますわ」

 危うい所だったが、何とか腹を満たすことができた。残念な食事を作った2人は恨めしそうに見ていたが、他に食べるものもないのでカピバラを食べ始めた。


「ふう、満腹だ。デット、コーヒーを頼む」

「……私はメイドじゃないぞ」

 やれやれ、つれない奴だ。仕方なく、自分で淹れるために席を立つ。


「ついでに皿も洗うか。後に回すとめんどくさいしな」

「お兄様、私も手伝います!」

「じゃあ私も!」

 残念な2人が名誉挽回とばかりに、皿洗いを手伝う。流石にこれぐらいは出来ないとな。


 ……だが、やはりこのギルドにはエミリアが必要だな。他の者は生活感が無さすぎる。


「ああ、お皿が割れちゃった!」

「うわあ、こっちも!」

 ……エミリア、早く帰ってきてオレを助けてくれ。

 天を仰いで、そう願うのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ