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天才錬金術師の最強ギルド創設記  作者: 蘭丸
妖精王の伝説編
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第55話 隣国からの侵入者

「出てきなさい、人間ども!」


 浮遊島について3日目の朝、オレたちは可愛らしい声で目が覚めた。

 寝ぼけ眼でテントから出ると、昨日圧迫面接を行ってきた妖精の女王と、オレたちのテントを取り囲むように小さな兵士たちが集まっていた。

 他の者たちもテントから這い出てくる。


「モーニングコールを頼んだ覚えはないんだが」

「ヴァレリーよ、冗談を言うような雰囲気ではないようだ」

 ローズの言う通り、妖精たちは雰囲気が違う。昨日はまだ冷静さを持っていたが、今日は憎悪を露わにしている。


「女王様、これはどういうことですか!?」

 ローズたちのテントからぴゅーっと一人の妖精が飛び出し、女王の前へ出てくる。

 どうやらプッカは一晩をローズと過ごしたらしい。いやらしいな、まったく。


「プッカ、どうしてここに!? ……早く人間どもから離れなさい! 貴女も殺されてしまう!」

 貴女も、というのはどういう事だろうか。まるで既に殺されたような口ぶりだが。

 思案しているとローズが前に進み出て、女王の前で膝をつく。


「女王よ、何があったかは存じ上げませんが、なにか勘違いをなされています。我々は昨日ずっとここにいて、何もしていないのですから」

「そ、そうです女王様! 昨日ずっと私とおしゃべりしてたので間違いありません!」


「白々しい、どうせ魔法でも使ったのでしょう。……今すぐこの島を出ていくというのなら、命だけは助けてあげましょう、はやくここから出ていきなさい!」

「……わかりました」

 ローズは頭を下げ、了承の言葉を口にした。


「ローズ、本気か?」

「ああ、残念だが、ここは彼女たちの森だ。彼女の決定に素直に従うとしよう」

 ローズは大事なことに気付いていない。彼は優しい男だが、その選択はここでは悪手だ。


「女王、一つ確認させてもらおう。貴女の口ぶりだと、妖精が殺され、その犯人がオレたちだと言いたいんだな?」

「……確認を取るまでもないでしょう」

「その死体はどこで見つかった? 死因は?」

「私たちを馬鹿にしているのですかっ!? 貴方たちがよく知っているのでしょう!」


 ……やれやれ、ここは実力行使しかないな。


 オレは足に鉄のスプリングを生み出すと、反発力を利用し一気に女王に接近する。

 周囲の兵士が反応するよりも早く女王の後ろに回り、体を押さえる。


「なっ!? ……やはり本性を現しましたね、理性を得た気になった、野蛮な猿たち!」

 女王は可愛らしい顔で毒を吐く。


「おい、ヴァレリーよ、冗談では済まないぞ!」

「お前こそまだ寝ぼけているのか、ローズ? ここには妖精を容易く殺せるものが潜んでいる。オレたちがここを去れば妖精たちはどうなる? 答えを見つけるまでは引けないな」


「ローズ様、フリード! 一旦頭を冷やすです!」


 沈黙が流れる。……だが、ローズがついに沈黙を破った。

 再び女王に頭を垂れる。


「女王様、手荒な行動を謝罪いたします。……だが、その野蛮な男の言う通り、この森には我々以外のものが潜んでいます。どうか、調査をさせていただきたい」

「……いいでしょう。ただし、貴方と私の後ろにいる男だけ連れていきます。他の者は人質として、ここに兵隊と残って貰います」

「わかりました」

 ローズはオレの方を見る。オレは女王から手を放してやった。


「デット、ステラ、そういう事だからしばらく残ってくれ。何かあれば自分で考えて行動しろ」

「フリード、気をつけろよ」

「お兄様……!」

 オレは2人に指示を出すと、女王の方を向く。


「……妖精が襲われたのはこの島の反対側です。私の『旅人(ペネトレイター)』で移動しましょう」

 どうやら妖精たちの持つ固有魔法を見せてくれるようだ。

 彼女が目をつぶり集中すると、あたりの風景が歪み始める。


「女王様、私も!」

「プッカ!? 早く離れなさい!」

 妖精が一人、歪んだ空間に飛び込んできた。


*


 ここは島の反対側だろう。方角は違うが、オレたちのキャンプしているところと同じような風景が広がっている。

 結局プッカも魔法の中に飛び込んだため、ここにはオレとローズ、女王とプッカの4人がいる。


「……死体は回収しましたが、そこが見つかった場所です」

 女王が示す場所を見ると、黒焦げになった地面と、わずかに飛び散った血が見える。


「……この焦げ具合は、どう見ても魔法だな」

 オレたちのメンバーに熱を発する者はいない。わかっていたことだが、やはり犯人は別にいる。


「ここに来たという事は飛行能力の持ち主だろうが、夜に来て朝に地上に戻ったとは考えにくいな」

「私もそう思う。この浮遊島のどこかにいるのではないか?」

「私、ちょっと高いところから見てみますね!」

 プッカは木よりも高い位置まで飛び上がり、辺りをキョロキョロと見渡す。


「プッカ、上空は風が強く危険です! 早く降りてきなさい!」

「大丈夫です! ……えっ? きゃあっ!?」

 突然突風が吹き、プッカの体が吹き飛ばされる。


「危ない!」

 オレは空中に鎖を飛ばし、彼女をキャッチする。風が鎖に伝わり、ぶるぶると震えている。


「ほう、まさか吾輩たち以外にも人間がいるとはな。生意気にも吾輩の風に対抗するか」

「……! なんだ、お前は?」

 森の影から、1人の男が現れた。立派な口髭がはえ、濃緑色の軍服を着ている。

 男の胸には、弓の紋章がある。……どこかの貴族か?


「馬鹿な、その紋章は……!」

 ローズはどうやら紋章に見覚えがあるようだ。信じられないといった表情をしている。


「なぜ、ここにメルギス王国の正規軍がいる!? ここはハレミアの上空だぞ!」

「メルギス?」

 メルギスといえば、我が国ハレミアの北西に位置する国だ。隣国なので当然国交もあるはずだが、勝手に兵士が入ってきていいはずがないな。


「ふん、ハレミア国民は傲慢だという話は本当らしいな。空まで支配しているつもりらしい」

「……少なくともお前たちのものではないはずだが」

「もうすぐ我々が手に入れるものだ」

 男は腕を振るう。するとその動きに呼応するかのように風が巻き起こり、男を中心とした竜巻が発生した。


「お前たちに生きて帰られると困るのでな、死んで貰うとしよう」

 男は竜巻をまとい、こちらに突撃してきた。


「吾輩の『窮奇(ストームルーラー)』で切り刻んでくれる!」

 ここは一度避けよう。ローズはプッカを抱いて横に逃げる。オレも女王を捕まえ、ローズとは逆方向に飛び退いた。


「ぐっ!」

「ローズ、大丈夫か!」

 飛び退いた際、足が逃げ遅れ風に巻き込まれたようだ。裾が破け、足から血が出ている。


「ほう、上手く避けたな。だが、吾輩の風が起こす刃は少し触れただけでそうなるぞ?」

 男は突撃の勢いで浮遊島の外に飛び出すが、風をまといながら空に浮かんでいる。


「今度はこっちから行かせて貰おう」

 オレは鎖をいくつも放ち、空中にいる男を狙う。


「ふんっ!」

 男が腕を再び振るうと、それに合わせ風が巻き起こり、鎖を切り刻んだ。バラバラになった鎖はオレの支配から逃れ、地上へと落ちていく。


「ああ、なんてことを! おい、地上の人々が驚いてしまうだろうが」

「ハレミア国民のことなど知らんな、間抜けな貴様の自業自得だろう。……そろそろ遊びは終わりだ、吹き飛ぶがいい!」

 男は両腕を大きく振るう。大技を繰り出しそうな雰囲気だ。

 オレは怪我をしたローズの傍に寄り、庇うように分厚い鉄の壁を作る。ごぉ、と大きな音が鳴り、浮遊島が揺れるほどの風がオレたちを襲う。


「うおおお!」

 壁だけでなく、足元にも鉄を生み出し、重さで吹き飛ばされないようにする。


 数秒後、風が止んだ。城壁ほどの厚さの鉄の壁は、半分ほどの深さまで亀裂が入っていた。

 そして、オレが壁で庇った部分以外の木々は、台風が過ぎ去った後の様にボロボロになぎ倒されていた。


「まさか吾輩の風に耐えきるとは、なかなかの魔法だな」

「……今までこの程度の魔法で戦ってきたのか? 本当に軍か怪しいな、その服は仮装か?」


「……小僧が、直接切り刻んでくれる!」

 男は再び、まとった風と共に突撃してくる。ボロボロになっていたオレの城壁をなぎ倒し、オレに向かってきた。


 オレは鉄の剣を生み出し応戦する構えを取る。鎖による遠距離攻撃が通用しなかった以上、こちらも直接魔法を叩きこむとしよう。


(なまく)らな刃など、風の刃には勝てぬぞ!」

 風をまとった腕でオレに掴みかかる。オレは鉄の盾も生み出し直撃を交わしつつ剣を振るうが、刃の薄い剣は風で曲がり始める。

 男は折れ曲がった剣を見てニヤリと笑う。


 だが、錬金術の真骨頂はここからだ。曲がった刃を再び操り、瞬時に真っ直ぐな刃を作り直す。


「何、刃が……!?」

 驚いた男の一瞬の隙を突き、剣を振るう。


「ぐおぉ……!」

「くっ!」

 服が裂け、腕は少し傷を負ってしまうが、反撃で相手の胸を切り裂いた。

 男は胸を押さえているが、血が溢れ服を染め上げる。


「ふっ、痛み分けというには少しダメージに差があるな?」

「こ、小僧が……!」

 オレはお返しにと、ニヤリと笑う。完全に形勢逆転だ。


 だが、オレはここで気付いてしまった。こいつはどう見ても風の魔法使いだ。

 ならば、昨夜妖精を殺した魔法使いは……?


「くそ、しまった! 他の者たちが……!」


 早く決着をつけ、助けに行かなければ。


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