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天才錬金術師の最強ギルド創設記  作者: 蘭丸
間章 王都の収穫祭
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第42話 妹が増えました

※魔法の説明回です

「お! やっと王都が見えてきたぞ」

「ああ、なんだか懐かしく感じます!」


 オレたちが王都を離れてから約3週間。ついにまたこの地に帰ってくることができた。郷土愛などないと思っていたが、自然と安らかな気持ちになる。

 馬車は王都の中心まで移動し、ギルド管理局の前で停止した。


「報告もしたいところだが、まずはホームに帰ろう。……久しぶりに柔らかいベッドで寝たいものだ」

 馬車から降りると、徒歩でギルドホームへ向かう。


「エミリアさん、変な臭いはしてないですわよね?」

「大丈夫ですよ! 温泉にも入りましたし、服もちゃんと洗いましたから!」

 ルイーズは服の袖に鼻を近づけ、しきりに匂いを嗅いでいる。


「まったく、フリードが臭いなんて言うからだぞ」

「おいおい、オレのせいか? そもそも自分に自信があれば、体臭も香水と同義なのだが?」

「違うだろ、多分……」


*


 やっとギルドホームに到着した。当たり前だが特に見た目に変化はない。オレは玄関の呼び鈴を鳴らすと、中からパタパタと駆けてくる音が聞こえた。


『どちら様でしょうか?』

「お兄様でーす」

 ドア越しの問いかけに冗談っぽく答えると、ドアがバンッと勢いよく開き、オレの腹に妹が突っ込んできた。


「お兄様っ!」

「ぐっは! ……いいタックルだ」


「ステラ、ただいま帰りましたわ!」

「皆さんもご無事で……! 良かった、もう帰ってこないかと思いました……!」

「おいおい、泣くことはないだろう」

「だって、だって……」

 オレはステラの頭を撫でると、みんなでホームの中へ入っていった。


*


 オレたちはギルドホーム内の椅子に座り、ゆっくりとくつろぐことにした。エミリアは疲れているだろうに、コーヒーを淹れてくれている。


「お兄様、戦争はどうでしたか?」

「戦争のことなど聞きたがるべきじゃないな。あえて言うなら、この天才が大活躍したとだけ伝えておこう」

「わぁ……! 流石です、お兄様!」

 ステラは目をキラキラと輝かせている。……全く、素直な奴だ。


「オレたちの事より、ステラの方だ。3週間何も変わったことはなかったか?」

「え! えーと、その、一応変わったことはあったというか……」

 ステラは顔を赤くして、もじもじし始めた。どうみても何かがあったのはわかったが、聞いてもいいのか迷うところだ。


「お兄様、実は……」

「実は……?」

「実は、魔法が使えるようになりました!」

「何……だと……?」

 この3週間で妹もいつの間にか成長したという事か。


「それで、どんな魔法だ? この兄にすべてを曝け出してみよ」

「は、はい! ちょっと準備してきますね!」

 ステラは一旦部屋を出ると、数秒後、そのまま戻ってきた。見た目には変化は見えない。


「……? 特に何もないように見えるが」

「えへへ、もうちょっと待ってください!」

 そう言うと、さっきステラが出入りした扉から、もう一人ステラが現れた。


「な……? 分身!?」

「じゃーん! どうですか、お兄様! これが私の魔法、『二つの(キンドレッド)真実(トゥルース)』です!」

 2人の妹は左右対称に両手を広げて決めポーズをとる。

 何故、服も分身しているのか? そんなことは気にしてはいけない。これが魔法なのだ。


「まあ、ステラが2人ですわ! かわいい!」

「ステラちゃん、すごいです!」

 2人に褒められて、妹たちは恥ずかしそうにしている。


「それで、どっちが本物なんだ?」

「実は、両方とも本物なんです!」

「片方が消滅したときに、自動的にもう一人が本物になるんです!」

「1人でも残っていれば、また分身が作れます!」

 妹たちは、交互に説明をする。消滅とは、さらりと恐ろしいことを言うものだ。


「じゃあ、そろそろ1人になりますね」

 2人のステラが両手を合わせると、ずぶずぶと飲み込まれるように重なっていき、1人が残る。

 ……重なるシーンはなかなかグロテスクだな。


「消滅じゃなくて合体で1人になったときは、2人分の記憶も引き継げます。 ……えへへ、どうですか、お兄様?」

 魔法は一人一つ持っているので、それ自体は驚くべきことではない。だが、妹の成長を喜ばない兄などいるものか。

 それにこの魔法、とても優秀ではないか。やはりこの天才の妹、という訳か。


「ついにこのギルドにも後継ぎができたな。オレは明日死んでも、悔いはない」

「ちょっと、御主人様! まだ出来て半年のギルドですよ!」

 しまった、成長が嬉しすぎて引退モードになってしまった。


「これは盛大にお祝いしないとな。明日はパーティーの為に買い物に行くとしよう。何か食べたいものとかあるか?」

「お兄様……! 私、お兄様と一緒にお店を回って決めたいです!」

「……そうだな、そうしようか」

「はい!」

 3週間も放置してしまったんだ。明日は1日中しっかりと付き合ってやるとしよう。


「フリード、ギルド管理局への報告はいいのか?」

「なんだ、そんなもの。来年でも問題ないような報告は後回しだ」

「……そういう訳にはいかないだろ」

「仕方ない、朝一に開店ダッシュで報告するか」


 明日の予定も決まったし、今日はゆっくりするとしよう。


*


 翌朝、オレは朝早くからギルド管理局に来ていた。


「アルトちゃん、久しぶりだな」

「これはヴァレリー様、おはようございます。戦争の件、御無事で何よりです。……もう報告は届いていますよ」

「オレの活躍の噂はもう届いていたか」

「ええ、手続きの準備もできています。こちらにサインをお願いします」

 流石は敏腕受付嬢だ。用意された書類にサラサラとサインをすると、報酬を受け取る。


「はい、ありがとうございます。……それと、お渡ししたい書類があります。ちなみにラブレターではありません」

 ボケ潰しをしつつ、一枚の紙を渡してくる。オレは中身に目を通す。


「なっ……! こ、これは、ランク昇格だと!?」

「ええ、もとよりDランク以上の依頼を完璧にこなしたのですから、当然の評価といえるでしょう。おめでとうございます、ヴァレリー様」

 ……これは、祝う用事が増えたな。


*


 オレは約束通り、ステラと一緒に買い物に向かっていた。エミリアとルイーズもついてきている。


「ふっふっふ……」

「お、お兄様、どうかしたのですか?」

「いや、なんでもない。……ふっふっふ」

「……御主人様、何かあったのですか? なんだか不気味ですよ」

「不気味とはなんだ。実はもう一つお祝い事が増えたからな。食事の時にみんなに報告しよう」

 ついつい気分が盛り上がってしまったが、まずは買い物だ。

 街並みを見ながら、4人で歩いていく。


「お兄様、あれは何ですか?」

 ステラが街並みを指さす。視線の先には、玄関を飾り立てた建物があった。


「……そうか、もう収穫祭の時期か」

「収穫祭?」

「秋は農作物の収穫を祝って祭りをやるんです。家々を飾り立てて、各地から商人と観光客が集まるので、とても賑やかになりますよ!」

 オレの代わりにエミリアが答える。


「へぇ……楽しみです!」

「『魔法市』も有名だな。珍しいものがたくさん並ぶぞ」

「マホウイチ?」

「魔法市っていうのは、創造型の魔法使いが自分の魔法で作ったものを売るイベントだ。大半の魔法使いは自分の魔法を安売りしないものだが、収穫祭の時だけは皆思い思いのものを販売している」

 オレもはっきりとは知らないが、自然と発生し、恒例となった行事らしい。

 まあ、伝統とはこうやって自然に出来上がっていくものなのだろう。


「創造型の魔法とは何ですか?」

 ……今日はナゼナゼ攻撃が激しいな。向上心があるのは良いことか。


「魔法ってのは種類としては3つしかないんだ。超人型、干渉型、創造型だ。

自分自身が魔法で強くなったり特殊能力を持つのが超人型。

自分自身は強くならないが、他人や物を操る能力を持つのが干渉型。

無から何かを作り出す能力が創造型だ」


「うちのギルドで言うと、私とエルデット様、ステラちゃんが超人型で、ルイーズ様が干渉型ですね」

「お兄様は?」

「オレは干渉型と創造型の2つを持っている。2つ以上の型を持つのはかなり珍しいぞ。天才に相応しい選ばれた能力と言えるな」


「私も聞きたいことがありますわ。戦闘系とか探知系は何ですの?」

「それは魔法を武器として考えた時の分類だ。例えば体を燃やす魔法があったとして、使おうと思えば相手を焼き尽くす兵器にもなる。そういう時は超人型の戦闘系となるわけだ。闘いや戦争を嫌う人間はそう言われるのを嫌う場合があるから注意が必要だ」

「成る程ですわ……」


「お兄様、何でも知っててすごいです!」

「まあ、大半は魔法学園で勉強することだがな。お前も来週から授業に参加するのだろう? 詳しく勉強するといい」

「はい! 頑張って勉強して、お兄様に近づきたいです!」

「よし、天才の講義はここで終了だ。今夜のパーティーの為に早く買い物を済ませてしまおう」


 オレたちは再びショッピングを再開することにした。


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