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天才錬金術師の最強ギルド創設記  作者: 蘭丸
お嬢様護衛編
13/198

第12話 戦場の支配者

「うぉぉぉぉぉ!」

 モヒカン共は武器を振り上げ、こちらへ走ってくる。

「御主人様!」

 後ろからは、メイドの心配する声。オレは手を後ろに向け、心配するなと合図する。


「おらぁっ!」

 一番最初に接近してきた男が斧を振り上げる。オレは体をかばうように腕を出す。

 振り下ろされた斧が服を裂き、腕に食い込もうとした瞬間、肌に触れた刃はオレの支配下に置かれ、どろりとそのまま腕に吸収される。


「なっ!?」

「不純物交じりの粗悪な鉄だな。操るのに時間がかかったぞ」

 驚いた男の顔面に裏拳をお見舞いする。


「ぶぺっ!」

 男は鼻から鮮血を吹き出し、後ろへ倒れる。


「死ねぇ!」

 次の男は木製の棍棒で殴り掛かってくる。……木はオレの『錬金術』では操れないな。

 オレは掌から鉄を生み出し、剣の形に変化させる。剣と棍棒がぶつかり合った瞬間、棍棒は真っ二つになる。


「!?」

「剣の切れ味は鋭さ。鋭さとは薄さだ。究極の切れ味を味わうといい」

 オレの生み出した剣は刀鍛冶でも再現できないほどの刃の薄さだ。


「ぎゃぁっ!」

 男に向けて剣を振ると、切断音すらなく胴体を切り裂く。


「待っているのも時間の無駄だな」

 オレは3人目にこちらから切りかかる。

「くっ!」

 3人目の男は剣を横に構え、オレの剣を受けようとする。


「無駄だ」

 オレの『錬金術』は直接金属に触れなければ効果を発揮しないが、金属を介していれば間接的にも発動できる。

 刃が触れ合った瞬間、男の剣はオレの剣に吸収される。


「ぐぁぁ!」

剣の勢いを殺すことすら叶わず、その身に刃を受ける。


「なっなんだと……!?」

 一瞬で3人倒された事実に、他のモヒカン共は勢いを失う。その隙を見逃さず、オレは集団へ突っ込んでいく。


*


 その後は一方的であった。

 オレが剣を振るうたび、悲鳴とともに一人ずつ男が倒れていく。金属製の武器はオレに奪われ、他の武器では剣を防げない。

 人類は、金属より固い武器を持っていない。金属を支配するということは、戦場を支配することなのだ。


「ふぅ」

 オレは一旦息をつく。

 モヒカン共は残り10人ほどに減っていた。最初の勢いは何処へやら、もはやほとんど逃げ腰だ。

 ……もう一息で終わりだな。オレは再び動き出そうとする。


「お前ら、これはどういうことだっ!」

 突如、モヒカンの後ろから声が聞こえる。

「あ、兄貴!」

 声の方向を見ると、また新たな男が立っていた。近くには馬が控えている。どうやらたった今到着したようだ。

 半裸に肩当て、モヒカンという基本のファッションを押さえつつ、体格は他の奴らより一回り屈強だ。


「遅いと思ってきてみればこのざまだっ!」

「すいません兄貴っ!この野郎ががめちゃくちゃ強くて……!」

 男はこちらをちらりと見る。


「バカ野郎、戦闘系の魔法使いがいる時はオレを呼べと言っただろうがっ!」

 男はモヒカン達に怒鳴り散らしはじめた。


「お前がこいつらのボスか? こっちは急いでいる。反省会は帰ってからやってくれ」

 声をかけると、男はこっちに近づいてくる。


「よくもウチの子分どもをかわいがってくれたなぁ? 腕に覚えがありそうだが、オレの魔法でボコボコにしてやるぜ!」

 オレはわずかに警戒する。こいつは見た目はただのバカだが、魔法は未知数だ。


 魔法使い同士の戦いは、力比べではなく、情報戦と言っていい。

 魔法は一人一つしか持っていない為、奥の手や隠し技は基本的に存在しない。

 オレは既に暴れたため、手の内がある程度ばれている状態である。相手は対策をとれるがこちらは相手を知らないため迂闊に動けない、圧倒的に不利な状態だ。


 ……まずは、相手の魔法を見極めるか。オレは相手の一挙手一投足を見逃さないように集中する。


「うおぉぉぉぉっ!」

「……ん?」

 男は突然掛け声を上げマッスルポーズをとる。すると、腕の上下からぐぐっと別の腕が生え始め、計6本になる。


「はっはぁー! これがオレの魔法、『六本腕』だ! どうだ、ビビッて声も出まい!」

「ヒュゥー! 兄貴、かっこいいぜーっ!」


 モヒカン達は男の魔法を見て、再び勢いを取り戻す。オレは唐突にネタバレを食らってしまった。

 ……どうやら見た目だけでなく中身もバカだったようだ。


「通常の6倍で、泣くまで殴ってやるぜぇ!」

「いや、元は2本だから3倍だろ……」

 男は武器も持たずに突っ込んでくる。まさかの素手喧嘩(すてごろ)


 オレは盾状に鉄を生み出し、前にかざす。

「そんな小さな盾でオレの攻撃が防げるかっ! くらえ、6本腕同時パンチ!」

 効率の悪そうな攻撃で、盾ごとオレを殴り飛ばそうとする。

 だが、その男の拳が触れようとした瞬間、オレは魔法で盾を柔らかくする。


「何!?」

 6つの拳がずぶずぶと鉄の盾に沈み込む。魔法を解除すると、盾は再び固くなり手錠のように男の6本腕をロックする。


「くそっ外れねぇ!」

 男が腕に気を取られている隙に、オレは自分の拳に鉄を纏わりつかせながら接近する。


「ぐへぇっ!」

 鉄をまとったオレの拳をモロに顔面に受け、男は吹き飛ぶ。白目を向いてびくびくしており、完全に気絶したようだ。

「これが本当の鉄拳制裁だな」


「あっ兄貴が、負けちまったぁー!?」

 生き残ったモヒカン共が驚愕の声を上げる。むしろ勝てると思っていたのか。


「面白い頭に免じて命だけは助けてやる。このゴミどもを連れてとっとと失せろ」

「ひっひいいぃ!」

 モヒカン共は怪我人を拾うと、ほうほうの体で逃げて行った。


「はぁ。無駄に疲れたな……」

 オレはその場に腰を下ろす。時間はかかったが、問題解決だ。


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