第11話 野盗の襲撃
王都を出て1時間は経っただろうか。窓の外には広々とした平野が広がっている。
ルイーズはこちらに背を向け、ベッドの上で丸くなっている。完全に怒らせてしまったようだ。
「それにしても、護衛の仕事は初めてですね。何もなければ良いのですが……」
エミリアは空気を変えようとしてか、話しかけてくる。
「心配しなくても、どうせ何も起こらないさ」
「……本当でしょうか」
「この馬車にはでかでかと貴族の紋章が描かれている。王都の近郊で襲うなど、貴族たちへの宣戦布告に等しいからな。すぐに莫大な賞金を懸けられて優秀な魔法使いがわんさか来るぞ。相当な頭の持ち主でもない限り、わざわざ襲ってこないだろう」
「な、成程!」
オレの理論的な話に納得したようだ。
「簡単な仕事で終わる。この天才を信じろ」
その時突然、ガタンッと音を立てて馬車が傾いた。
「うおっ!?」
「きゃぁ!?」
馬車はそのままガタガタと振動しながら減速し、やがて止まってしまう。
「ご、御主人様、大丈夫ですか!?」
オレは衝撃でベッドから投げ出されたルイーズを咄嗟に庇おうとし、そのまま押しつぶされていた。
「あっ、申し訳ありませんわ!」
ルイーズは慌てて飛びのく。
「大丈夫だ。……しかし、いったい何が起きた? 車輪でも外れたか?」
オレはゆっくりと体を起こしながら考えを巡らす。すると、外から声が聞こえてきた。
「オラオラ! 出てきやがれっ!」
……嫌な予感がするな。オレ達は体が見えないようにしながら、窓から目だけを覗かせ外の様子を伺う。
そこには、50人ほどの屈強な男が立っていた。
「御主人様、もしかして、馬車強盗では!?」
「……少なくともオレのファンではなさそうだな」
「ちょっと、話が違いますわよ!」
「二人は隠れていろ。ちょっと出てくる」
「えっ!? ……御主人様、大丈夫ですか?」
「心配はいらない。この天才にかかればすぐに終わる」
*
オレは馬車から降りると、周囲を見渡し状況を確認する。
御者は、いつの間にかいなくなっていた。オレたちを置いて逃げ出したのか? ……無責任な。
馬車は予想通り、車輪が外れていた。少し後ろには、外れた車輪と斧が転がっている。どうやら意図的に引き起こされたようだ。
そして、目の前には野郎ども。男たちは半裸に肩当て、そして全員モヒカンだった。手には剣や斧、こん棒など、思い思いの武器を持っている。
「……なんだ、お前らは?」
知りたくもないが、一応聞いておく。
「オレたちはこの辺りを縄張りにしてる盗賊、『モヒカンズ』だぁ!」
……ギャグみたいな名前を名乗られてしまった。
「オレたちはルイーズってのに用があんだよぉ! 素直に差し出せば、てめぇの命だけは助けてやってもいいぜぇ〜?」
ゲヒャゲヒャと下卑た笑いが起こる。どうやら狙いはルイーズらしいが、当然差し出す気はない。
「オレがルイーズだが?」
「何ぃ、てめぇが!? 情報だと、女だと聞いたぜぇ!?」
モヒカン共は騒ぎだしている。
「ちょっと、何勝手に名前を騙っていますの! ルイーズは私ですわ!」
馬車の窓から顔を覗かせ、堂々宣言する。庇ってやったというのに、なぜ姿をばらしてしまうのか。
「てめぇ、オレたちを騙しやがったなぁ!?」
「……騙される方がおかしいだろう」
「もう許さねぇ。てめぇら、かかれぇ!」
理不尽な怒りを爆発させたモヒカン共が、うぉぉぉと怒声を上げてこちらへ向かってくる。
……やれやれ、闘いは避けられないな。




