第64回活動報告:調査団編成
調査団編成
活動報告者:山谷勇也 覚得之高校一年生 自然散策部 部員
僕たちはいつもより遅い朝食を済ませて、いざガーナンさんとの話し合いに行こうかと思っていると、先輩から呼び止められる。
「スィリナたち、ツーチたちも聞いて欲しい。今後のことだ」
思ったより深刻そうな顔をしている。
何か深刻な問題でも起こったのかな?
心当たりを探しつつも、特に何も思い浮かばないので、なんでだろうと、越郁と一緒に首を傾げながら聞いていると、なんというか、納得の話だった。
「えー、特に私は問題ないけどなー」
「まあ、僕も友人関係は何とかなると思います。だけど、学業は、長い間授業から離れているから心配ではありますね。越郁も勉強は心配だろう?」
「……まあ、勉強は得意じゃないし」
完結に言うと、僕たちの問題は、こっちに掛かり切りで、学校生活に支障をきたすのではという、先輩と先生の心配だった。
友達のことは、中学からの友達もいるし、特に問題はないと思うけど、流石に学業については自信がない。
僕よりも、勉強が苦手な越郁は特にそうだ。
「ふむふむ。友人関係は問題なさそうで安心したよ。でも、勉強は心配か。確かに、もう体感時間では一か月近く授業を受けていないからね。僕も飛んでないか心配だよ。で、こういうことで、スィリナたちには迷惑をかけると思うんだけど、これでも一緒に調査に行ってくれるかい?」
そして、僕たちのGWはもう終わる。
下手をすると調査期間の間に休みも終わるので、最悪、1日置きに僕たちが出勤したり戻ったりという形になりかねない。
そうなると非常に面倒だ。
「……私としてはそちらの事情は理解したから構わないと言いたいが、陸竜が出るかもしれない森の調査中に抜けられるのは痛い。そこはどうにかならないか? おそらくガーナン様やモッサギルド長などはそういうと思うぞ?」
「そうねぇ。調査隊が魔物に襲われても大丈夫なように、ヒビキたちに調査に同行してほしいって話だしね」
「ま、私たちだけでも、陸竜ぐらいなら何とかなると思うけど、ご領主様たちはコイクたちについてきてほしいみたいだし。そこは了解をとらないとね」
3人としては、僕たちが学業、マンナ様こと里中先生の処へ勉強しに行くのは構わないとのこと。
正直に言ってとても助かる。
現場に残るスィリナたちがいなければ、調査にすら同行できなかったと思う。
あとは、ガーナンさんにこっちの事情を話して、許可をもらわなくてはいけない。
まあ、これはもうお城に行って話すしかないのでこれ以上はここで話しても仕方がない。
あとは……。
「ツーチたちは今回はお留守番だ。理由は先ほども言ったけど、流石に陸竜の相手となると心配なことと、今後のパン屋経営をどうするかってことだ」
「はい。私たちが今回残って、パン屋を経営しろという話ですね」
「それで、今後パン屋か、ヒビキ様たちについていくか決めろって話だよな」
「わたしは、ユーヤ様たちについていきたいです」
「アンの気持ちは嬉しく思うけど、僕たちについてくるにしても、今人気のパン屋をやめると町の人が悲しむからね。ゼイルさんに頼んでこのパン屋で働いてもいい人を集めてもらうよ。それか、防犯上心配もあるから、他の場所でパンを作ってもらってもいい。後進を育てると思って、集まってきた人に作り方を教えてあげてくれ」
「「「はい」」」
我がパン屋の進退を決めないといけない。
というか、今一番大きな問題はこのパン屋だろう。
開店して僅か一週間とそこらで、商業ギルドに販売委託して一週間休業しているし、今後もパン屋を続けるには微妙となっている。
この世界になれるための拠点であり情報収集目的の拠点だけど、商売をするには僕たちの立場としてはなかなか厳しいものがあったようだ。
ツーチたちが意外にも僕たちについてくるというから予定が狂ってしまったというのもある。
ツーチたちがここに残るなら、商売をずっとやっててもいいのだろうが、一緒に行動するのなら、毎日開けるというのは厳しい。
なら、無理に僕たちでお店を開けるのではなく、ゼイルさんの生産から販売まで任せてしまえばというのが、先輩の案だ。
お金に関しては、冒険者として働けば結構稼げるのはわかったし、このお店はリーフロングでの拠点としてただ扱えばいいだけだ。
情報収集に関してはすでに冒険者ギルドに商業ギルドと仲良くさせてもらっているおかげで、困っていない。
と、そんなことを考えながら、ガーナンさんがいるお城へと到着すると、すぐにお城の中へと案内される。
「結構久々にお城に戻ってきたね」
「そうだね。案外懐かしく感じるね」
「そうですね」
僕たち3人は初日にこのお城に招待されて、滞在したのはわずか2日程度だったが、初めてのお城訪問ということで記憶に残っている。
ガーナンさんが先祖代々の鎧を売っぱらうとか言って、おこられてたっけ。
いや、潰して剣にするとかだっけ?
「コイクたちならいつでも来てもかまんぞ。好き勝手過ごしてくれ。滞在費分のオークはすでにもらっているからな。うちの者にも伝えてあるから何も心配いらん」
そんな声が聞こえてきて振り向くと、ガーナン辺境伯様がこちらに歩いて来ていた。
「あ、ガーナンのおっちゃん。きたよー」
「おう。輝きの剣も足を運んでもらってすまんな」
「いえ。ガーナン辺境伯様に覚えていただき光栄です。微力ではありますが私たちをお役立てください」
「ああ。頼りにしている。こっちだ」
そういって、ガーナンさんの後を追うと、大きい会議室というか、初めて来た時に食事をしたリビングルームに連れてこられて、すでに大きいテーブルには、モッサさんやゼイルさん、ラナさんたちも席についていた。
意外にも、サラさんやドーザさんもいて、なんというか、僕たちの知り合い勢ぞろいって感じだ。
「空いている席についてくれ」
そういわれて、僕たちも席に座る。
モッサさんたちは反対側に並んで座っていたので、向かい側のサラさんとドーザさんがいる側に僕たちは座る。
あれかな、ギルド関係者と冒険者で分けたのかな?
そんなことを考えていると、ガーナンさんが席について、口を開く。
「では、会議の前にだ……。ダザン」
「はっ」
ガーナンさんがダザンさんを呼ぶと、すぐに扉からダザンさんが、トレーに袋を持ってやってくる。
「昨日の討伐協力と、治療費だ。受け取ってくれ」
そういうと、ダザンさんはコイクにトレーを持ってきて、目の前に置き、口を開く。
「昨日は本当に助かりました。この場で改めて御礼申し上げます」
そういって、僕たちに深々と頭を下げてお礼を言う。
「いやいや、こうしてお金ももらったし、お仕事でもあり、ダザンさんはお世話になってるから、気にしないで。ねえ、みんな?」
越郁にそういわれて、僕たちは頷く。
輝きの剣であるスィリナたちも問題ないようで頷いていたので、後腐れはなさそうだ。
「袋の中は金貨60枚入っている。どう分けるかはそっちで決めてくれ」
「おっけー。でも、金貨60枚って結構多くない?」
「オークの討伐と売却分なら精々行って金貨5枚がいいところだな。主に治療代がメインだな。再起不能の兵士を5人ほど完全復帰させてもらったからな。これぐらいでも安いぐらいだ。だが、これからの出費もあるからな。足らない分は後日まで待ってくれ」
「いいよー。私たちもお願いしたいことがあったし」
「お願いごと?」
「うん」
「まあ、無理難題でないなら、できることは聞いてやる」
そうガーナンさんが答えてくれて、案外僕たちが戻るという件も受け入れてくれるかもしれないと思った。
まあ、まずはどういう予定を立てているのかを聞かないと話にならないんだけど。
「さて、報奨も渡したし、コイクたちや輝きの剣も来たことだ会議を始めようと思う」
ガーナンさんがそう改めていうと、全員が頷く。
「集まってもらったのはほかでもない。昨日起こったオークの襲撃に関するはなしだ。モッサギルド長、頼む」
「はっ。事の起こりは、コイク殿たちが受けた依頼が始まりでして……」
それから、一旦顛末を再び僕たちに確認しつつ冒険者ギルド側から説明することになった。
「……というのが、現状です」
そういい終えて、モッサギルド長が座る。
「最後に再度確認をとるが、コイクたちに輝きの剣は、モッサギルド長の報告に、間違いはないか?」
内容に不備はないので、問題ないと返す。
すると、ガーナンさんたちは腕を組んで話を始める。
「ふむ。話を聞きなおしたが、やはりまだ情報不足だな」
「ええ。また村に行って森を詳しく調べる必要があるでしょう」
「あの地域には陸竜がいたなどという話は聞いたことがありませんからな。おそらくどこから来たのでしょうが……」
「陸竜がこんな草原を移動すればすぐにわかる。それが見つかればわかりやすいがな」
「その経路が見つかった場合はどうしますか?」
「とりあえず、陸竜がきた道をたどるぐらいでしょう」
「では、どれほどの調査人員がいるかという話だな」
「ふむ。ガーナン様からの専門家に兵士と案内冒険者たちに冒険者ギルドからの専門家というとラナと言ったところですかね」
「あとは、その調査団に必要な物資は、こちらで揃えましょう。詳しい人数はどうされますか?」
やはり、陸竜があの森にいるというのはリーフロング的にはよくないらしく、調査団の派遣はほぼ決定しているような内容だった。
でも、意外な内容が入っていて、たまらず越郁が質問した。
「ちょっとまって、ラナさんが調査に同行するの?」
越郁の疑問に答えたのは、意外にもガーナンさんだった。
「ああ、そういえば、コイクたちはラナのことは受付としかしらないのか?」
「ええ。受付で間違いないですし」
「……お前は相変わらず性格が悪い」
「あら? ガーナン様何か間違いでも」
「いや、何でもない。とりあえず、この姿を見てもただ者ではないと分かっただろうが、受付という肩書では心配だろう。このラナはサラやドーザの元先輩冒険者で不帰の森を単独で一週間過ごして戻ってきたという逸話もある凄腕冒険者だ」
「「「えーーー」」」
いや、強いだろうとは思っていたけど、あの不帰の森を単独で一週間も生き抜いてきた猛者だとは思わなかった。
チートありの僕たちでも及び腰だったのに、それを単独で一週間とか、物凄い人だ。
どおりで、他の冒険者たちから恐れられているわけだ。
「さらに、冒険者側からはあの陸竜や不帰の森のオークを倒せるコイクたちに、輝きの剣、それに不帰の森で現役で仕事をしているサラにドーザがいれば、戦力的には問題ないだろう」
「ガーナン様のいう通り、冒険者側からは9人ですな」
「城のほうからは、同数でいいだろう。8人が兵士、1人が専門家だ。兵士の方は、昨日助けてもらった連中を回せば軋轢はないだろう。専門家の方だが、ナラリーが戻ってきたので、同行させる」
「ナラリー様が戻ってきたのですか」
ナラリー? 誰だろう?
僕たちが疑問に思っているのがわかっているのか、すぐにガーナンさんが答えてくれる。
「俺の娘だ。年の頃はだいたいお前たちたちと一緒なぐらいで、王都の方で学問を学んでいた。どれだけ学がついたか調べるいい機会だろう。入ってこい」
「はい。お父様」
そういわれて入ってきたのは、綺麗な金髪をセミロングにそろえた、できる女性といった感じの人が入ってきた。
僕たちに向ける視線がやや目つきが鋭いのはなんでだろう?
と、思っていると、越郁は素直に自分が思っていることを口にする。
「おー。ガーナンのおっちゃんにはあまり似てないねー。お母さん似?」
「そうだな。どちらかというと、母親だろうな。ナラリー、挨拶を」
「……なんでこんな子供がこの場に? しかも、お父様に対してなんて口のききかたを。無礼者!!」
あれ? なんか不穏な感じが……。
これは越郁を抑えたほうがいいのか?
「およ? 無礼もなにも、おっちゃんに許可もらってるしね。ナラリーよろしく!!」
「そうだな。咎めがあるならすでにしている。ナラリー、いらんことをするな。王都と俺の町ではやり方が違う。いや、大本は同じだ。力があるやつが偉い。力の種類は王都のとは違うが、コイクたちはわかりやすい力の持ち主だからこうして俺が礼を尽くしている。俺の顔に泥を塗ってくれるな」
「……失礼しました。娘のナラリーと申します」
絶対納得してないって感じで、ナラリーさんが自己紹介をして頭を下げる。
あちゃー、このあと私用で調査隊を抜けるかもしれないって言うのはなんか爆弾な気がしてきた。




