第50回活動報告:いい仕事見つけた
いい仕事見つけた
活動報告者:海川越郁 覚得之高校一年生 自然散策部 部員
「んー? おお、コイクたちじゃないか」
「あ、ドーザ。やっほー」
ラナさんが仕事を見繕っている間に、おっさんがおの若者である、ドーザとギルドで再開した。
いや、ドーザも冒険者なんだから当然なんだけどね。
ちなみに「さん」付けは、あの手合わせの後呼び捨てでいいということで、こう呼んでいる。サラも同じく。って、あれ?
「サラは?」
「サラは今換金中だ」
「換金ってことは、帰ってきたばっかり?」
「ああ、不帰の森に1週間ばかり行ってきたところだ」
「へー」
サラとドーザはお互い不帰の森に挑めるリーフロングでも優秀な冒険者で、2人でよく組んで森に行くっていってたけど、今回もそうなのかな?
「でもさ、ちょっと疑問があるんだけど」
「なんだ?」
「サラ以外と組むことはないの?」
「あー、不帰の森だからな。下手なメンバーを入れると足を引っ張られる。まあ、連れて行かないってことはない。見込みがある冒険者は連れて行って経験を積ませることはあるな」
「じゃ、サラと付き合ってるの?」
「ん? あー、そういえば男女だからな。そう見えてもおかしくないか」
「その感じだと、やっぱり仲間って感じ?」
「そうだな。まあ、女として見てないわけじゃないが、そういう仲ではないな。お互い、忙しい身だからな。俺がサラと付き合って、子供でも出来たら、仕事がいっぺんに俺のところにくるからな」
「あー」
確かに、サラがいなくなれば、不帰の森の仕事はドーザに集中するよね。
そんなことを考えていると、後ろから声がかかる。
「心配しなくていいわよ、コイク」
「お、サラ。お仕事おつかれー。おかえり」
「ええ。ただいま。で、話の続きだけど、私は私で恋人はいるから」
「あ、そうなんだ」
「そう。相手の心配はないのよ。まあ、待たせることにはなってるけどね」
現役で数少ない不帰の森の仕事を受注できる冒険者だし、簡単にやめられるわけもないか。
「と、私のことより、コイクたちのことだ。仕事か?」
「うん。まだまともに冒険者の仕事やってなかったからね。近場のゴブリンとか、不帰の森以外のところでちょっと肩慣らしにいこうかなーって」
「いい判断だとおもう。しかし、不思議なんだが、ユーヤやヒビキ以外に3人ほど同席しているようにみえるんだが、あれは?」
「ああ、俺もそれは思った。どこかとパーティーでも組んだか?」
サラとドーザは今受け付けて待っているユーヤたち5人を見て首を傾げている。
帰ってきたばかりなら、スィリナたちのことを知らなくても当然か。
だから、ラナさんがまだ仕事を探しているようなので、私はスリィナたちを呼んで紹介することにする。
「どうしたんだ、コイク?」
「こちらの方はだれかしら?」
「んー? でも、この女の人とおっさんは強そうだね」
アノンの不意打ちで、ドーザがまたダメージを受けるが、そこは放っておいて、紹介をする。
「こっちの今はただの服を着ていて、綺麗なお姉さん2人とちびっこ1人は、あの輝きの剣の皆様です」
「ああ、ラナから聞いたぞ。確か、つい一週間ほど前にリーフロングに来ていると。コイクたちと一緒だったのか」
やっぱりというか、サラは輝きの剣のことは知っていたみたいで、そこまで驚きはなかった。
「うん。パン屋の話を聞いて買いに来てくれたんだ。それがきっかけ」
「そっちかよ!?」
ツッコミを入れるためにドーザが復活した。
「そういえば、パン屋を開いたんだったな。不帰の森へ行ってたからまだ行ってなかったな。評判は聞いた。私も今度買いにいくよ」
「うん。是非きてよ。でも、サラとドーザにはお世話になったし、これお試しね」
そういって、私はサラとドーザにアイテムボックスから取り出したパンを渡す。
「ありがとう。いただくよ」
「おおー。ありがとう」
2人は私にお礼を言ったあと、すぐにパンを口にした。
「ほお。これがジャムパンか。美味しいな」
「甘いパンか。案外いいもんだな」
「と、そこはいいとして、輝きの剣の方と一緒にいるのは、その近場の仕事で連携でも確認するのか?」
「あ、うん。その予定」
そう話し込んでいると、ラナさんが戻ってきた。
「お待たせしました……。って、あれ? ユーヤ様、コイク様やスィリナ様たちは?」
「ああ、あっちですよ」
「あっち? ……あ、サラ様にドーザ様。換金は終わられたのですね」
ラナさんがサラとドーザに会釈をすると2人も会釈をする。
やっぱり、ラナさんって有名冒険者あいてに敬意を払われているから、物凄いんじゃないだろうか?
ま、そこはいいとして、ラナさんが戻ってきたってことは仕事の見繕いが終わったってことだ。
「じゃ、ラナさんが戻ってきたし、またねー」
「ああ、しばらくは町でのんびりしているから、その間にまた話そう」
「そうだな。じゃ、いい仕事見つかるといいな」
そういって、2人とは別れる。
「あれが、リーフロングで活動している上位の冒険者か」
「すごいわね。たぶん、私たちといい勝負よ」
「不帰の森は別格だって聞いてたけど本当みたい」
なぜか、私たちを見ていて今更な発言のスィリナたちだった。
私たちはやっぱりすごくは見えないらしい。
そこらへんは色々と問題だな。
他所の町に行くと侮られるってことだし。
今度対処法でも3人で考えるかな。
と、そこはいいとして、何かいいお仕事はーっと。
「お待たせしました。皆様は連携確認と言っておられましたので、討伐、採取を主に集めてきました」
ラナさんはそういって、仕事の内容がかかれた紙をテーブルに置く。
「えーっと、オークの集団討伐に、中級薬草の採取……」
私としては冒険者の仕事のまともな受注は初めてなので、どの程度のモノかは分からないんだけど、ラナさんが出すなら妥当なんだろうなーと眺めていると、スィリナが口を出した。
「これは、思ったよりも大変な仕事じゃないか?」
「ん? そうなの?」
「そうね。オークの集団討伐っていうと、群れがあるってことだから、群れの捜索から始めないといけないから、数日仕事ね。中級薬草もそうそう見つけられるものじゃないわよ。しかも20株も」
「だねー。でも、私たちがゴブリン討伐とか初級薬草を取るわけにもいかないでしょ?」
アノンがそういうとラナさんが頷く。
「はい。そういう仕事は初心者や、ランクの低い冒険者に回さないといけませんので」
「え? 私も初心者だよ?」
「えーと、コイク様の実力を考えますと、そういう仕事を優先的に回すわけにはいかないんです。申し訳ありません。もうちょっと、他の特定の依頼ならよかったんですが、一般的な仕事となると、どうして中級以上のものになります」
あ、ネタで言ったんだけど、ラナさんがすごく申し訳なさそうにしている。
「ごめんごめん。冗談だよ。ラナさんの言っていることはわかるから。気にしないで」
「ご理解いただきありがとうございます。朝に来られたのなら、そういう依頼をお渡しできるのですが、日中はなかなか手が出ない依頼しか残らないという理由もあるのです」
そりゃそうだよね。
毎日朝から、自分たちの身の丈に合う仕事を探しに来ている人たちに、その仕事を紹介するよね。私たちはたまたま慣らしってことで受けに来ただけだし、私たちの為に仕事をキープしておくってわけにもいかないよね。
となると、必然的に、他の冒険者が手を出したがらない仕事とかを持ってくるしかないよね。
「まあ、オーク程度ならコイクたちに私たちなら問題ないだろう」
「この程度で手間取るなら、不帰の森に一緒に行く件はなしね」
「だねー。まあ、そんなことはないと身をもって知っているけど」
どうやら、スィリナたちもこの仕事には不満はないようだし、あとは、私たちだけか。
「ゆーやとせんぱいはどう?」
「僕はスィリナさんたちやラナさんが適切っていうなら問題ないな」
「僕もだね。自分には自信がないけど、4人の言う事なら信じられる」
「じゃ、決定だね。ラナさん。そのオークの話を詳しく聞かせてくれる?」
「はい。かしこまりました」
で、ランさんにオークの集団討伐の話を聞くとこうだ。
・村近くににオークの集団が現れたので被害が出る前になんとかしてほしいとのこと。
・近くの森で見かけただけで、どこに生息しているのかは不明。
・村はリーフロングから馬車で3日ほどの場所。
・しかし、目撃情報が確定していないため、まずはオークの集団が存在するかという確認が必要であり、オークの集団を探すための期間は凡そ一週間とする。
・一週間捜索をしてもオークがいないのであれば、調査費用の支払いとなる。
うん。すっごくめんどくさい。
オークの集団がいるならともかく、今もいるのかも怪しい、そしてその調査に一週間も最長拘束ときたもんだ。
これは誰も受けたがらないわけだ。
まだ、被害が出ていないからなー。
僕がそう考えていると、せんぱいがラナさんに話しかける。
「ふむ。ラナさん。この話はどの程度信頼していますか? 罠とかの可能性は?」
「ないとは言い切れませんが、この村では似たような依頼が以前もありまして、その時はゴブリンの集団で被害が出たあとに依頼を出してまして……」
「なるほど。その時のことから前もってというわけですね」
「おそらくは。この手の嘘の依頼で冒険者などに被害が及ぶと、必然的に冒険者ギルドに喧嘩を売ることになりますからね。そうそう、嘘の依頼をするとは思えないというのが冒険者ギルドの見解です」
冒険者ギルドもそこらへんは承知の上ってことか。
「まあ、何事もなければ、そのまま一週間調査だけになりますので、連携の確認などもやりやすいかと思います」
「なるほど。そういう考え方もあるか。お金をもらって、好きにすごせると」
「いや、コイク。仕事はちゃんとしないといけないぞ」
スィリナが突っ込んでくる。
ああ、やっぱりスィリナはせんぱいみたいに真面目なタイプか。
「相変わらず硬いねー。仕事をしつつ、連携の確認もできるって思えばいんだよ。ねー、ナーヤ」
「そうね。そこまで硬くなる必要はないと思うわ。大事なのは村が襲われないかってところだし、村で連携の練習でもしてた方が安心するわよ」
「……一理あるな。どうも、アノンが言うと遊ぶってイメージが離れないな」
「それは、わかるわ」
「こらー。最初に言い出したのはコイクだよー」
そんな感じで、スィリナたちは問題なさそうだ。
「せんぱいもラナさんに話を聞いた感じ、仕事を受けてもよさそう?」
「ああ。問題ないとおもうよ。というか、この仕事は村の護衛も兼ねているし、本当に私たちとスィリナさんたちが組んだ時にしか受けられない内容だね」
「はい。本来であれば、このような仕事は冒険者のチームが3、4チームいるのですが、コイク様たちや、スィリナ様たちの実力を鑑みて、いけるのでは思い紹介させていただきました。もちろん、コイク様たち人数がすくないので、対処できないオークの集団がいた場合は無理に戦わず報告に来てください。すぐに人を集めますので」
「わかりました。じゃ、ラナさんこの仕事お願いします」
「はい。かしこまりました」
さて、あとはせんせいに話をして、ツーチたちを連れて行けるか聞かないとね。
まあ、実戦経験って感じで押せばいけるかな?
どうやって、せんせいを説得するのかを考えながら家に戻るのであった。




