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自然散策部ではなく異世界調査部だったりします  作者: 雪だるま弐式


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第21回活動報告:これからの相談

これからの相談




活動報告者:宇野空響 覚得之高校二年生 自然散策部 部長




さて、幸い依頼を完了することができた僕たちは、ちょっとというには多すぎる金額を手にした。

まあ、これからお店を開く予定だし、そこまで大きい金額ではないのだろうけど、やはり日本ではまだまだ学生であり親のお金で生活している身としては、この金貨500枚という額は大きい。どこまで近いが分からないけど、日本円にして約5000万円だからね。

しかし、代わりといっては何だけど、僕たちの冒険者としての実力が認められたのか、この次ランク5である不帰の森の仕事を成功させたら、すぐにランクを上げるといわれてしまった。

正直、色々この世界の文化を知りたい僕たち調査員にとって、魔物の退治の仕事は避けたいのだが、そうもいかなくなった。

無理な仕事はさせないとは言っているけど、有力者にとっては力のある人物は有効に使いたいだろうし、どうなるか分からない。

個人的には、リーフロングのガーナン辺境伯様は信用できるけど、ギルド長のモッサさんはちょっと怪しいかな?

あと、商業ギルドとの交渉がどうなるか分からないし、不安もたくさんある。


でも、出だしとしてはいい滑り出しだと思う。

里中先生の手回しがあったとは言え、これからは僕たちの判断や行動でどうとでもなる。

何も手回しがなければ、未だに町でぶらぶらしていたかもしれないしね。

下手をすれば、リーフロングの人たちと敵対していかもしれないから、不満はない。


「こちらがモッサギルド長が商業ギルドが用意してくれた場所です」


だが、展開が早すぎるのも考え物だ。

お金の説明を受けているうちに、モッサギルド長はさっさと商業ギルドから物件を選んでこちらに回してくれていた。

そして、気が付けばその日のうちにダンザさんが物件に案内してくれていた。

なんでモッサギルド長がいないかというと、僕たちが不帰のオークを大量に売り払ったことで、それを使ってさらに商業ギルドと色々話し合うつもりらしい。

しかも、この物件は賃貸ではなく、なぜか僕たちの所有、つまり土地と家を買ったことになっていた。


「不帰のオークをあれだけ倒せる実力の持ち主なら、恩を売るのが普通でしょうからな。ガーナン辺境伯様も土地と家の買い取り交渉に口添えしていますので、それをお忘れなく」


こんな感じで、すでに町の有力者たちがすり寄ってきている。

町に来て二日目でだ。

ほとんど情報もなく取り込まれている形なんで不安が募る。

僕たちは未だこの世界においては右も左も分からない新参者で間違いないのだから。

と、僕のそんな不安をよそに、すぐに家が無料で手に入った越郁君は喜んでいる。


「すっげー。大きいねーダンザさん」

「ええ。お店を開きたいとの要望を考慮してモッサギルド長がこちらを押さえたようです。店の部分に、倉庫、そしてコイク様たちの居住区としっかり分かれています」

「早速中をみてみよう」


聞いて分かると思うがこの至れり尽くせりは色々怖い。

タダより怖いものはないというが、一応オークを出した正当な評価の結果ではあるのでタダというわけでもない。

すごく悩みどころだ。

それは勇也君も同じようで、今の状況に困ったような顔をしている。

案外、こうやって恩を売る作戦かもしれない。

若者はまだ社会に出ていない分、こういう恩とかに弱いからね。

うーん、後で相談しておく必要があるかな。

そんなことを考えているうちに、用意してもらった家の確認をしていく。

家の中は日本家屋とは違って、もちろん土足当たり前の作りだ。

なので床は土で汚れまくっている。

僕としては違和感がものすごいのだが、衛生観念とかは現代の地球でも日本が極端に意識が高いだけで、外国はさほどではない。

父が海外赴任した時に聞いた話が印象的だったのでよく覚えている。

ヨーロッパなどではハエが店内を飛んでいても、食べ物にくっついても特に気にしない、トイレを使ったあとで手を洗うとかもそうそうない。

恐ろしいと思うが、これが現代での海外のデフォルトだというのだ。

だから、文明的に後進的なこの世界の人たちにそういうことを望むのは酷だというもの。

どの部屋にも土足で踏み込んでいき、靴に着いた土があちこちに落ちる。

……僕の部屋だけはしっかりきれいにしようと思う。

いや、たぶん二人とも清潔には賛成してくれると思うけど。

そんなことを考えつつ、間取りの確認をしていく。

まず、建物は倉庫が別に離れのような場所に建っていて、商店と居住区が一体化している。

倉庫は簡単に二階構造で、中に仕切りとかもなく、物を置くだけの倉庫としての利用性を重視している。

商店と居住区が一体化している建物は一階は大きい通りに面しているほうに商店スペースがあり、大部分を占めていて、中庭を通って側面から居住区への入り口、玄関が存在している。

商店の中からも一応居住区への玄関へ移動はできる。

玄関から入った奥には、客間と台所と小さい部屋がある。

主に、一階は商店としての機能が集まっているのだろう。

二階が居住区となっているようで、部屋がかなりあった。

そして、越郁君が当たり前のことを聞いて、驚愕の事実を知らされることになる。


「そういえば、トイレってどこ?」

「トイレ? ああ、おまるなどは、一般家庭にはないですから、用意する必要がありますね」

「「「……」」」


ダザンさんの言葉で思い出した。

そうだった。

昨日は用足しは草原でやっており、町に着いてからはすぐにお城に行って、話になって夜になってしまったので、夜トイレに行きたくなった時は、こっそり草原にでて処分していたので分からなかったが……。

この中世ヨーロッパ程度の文明レベルだと、汚物はツボやおまるなどに溜めて、外に捨てる。

それが当たり前だ。

そういえば臭かったのは汚物のにおいだよね……。

ここに、真っ先にトイレの設置を決心するのであった。

そのためにリーフロングを占拠することも辞さない。

なるほど、里中先生の狙いはここか。

繋がりがなければ訴えることなどできない。

制圧するしかないのだ。

汚物の中で過ごすなど絶対に嫌だし。

ともあれ、まずは僕たちの家だけは清潔にしていこうと固く誓うのであった。


「とりあえず、家の案内は終わりましたが、これからどうされますか? 足りない家具の注文などへいかれますか?」

「あー、そうだね。どうしよう、ゆーや、せんぱい」

「うーん。まずは一旦ここで何が必要か話し合うほうがよくないか?」

「勇也君の意見に賛成だね。何を買うのかもまとまってないし出て行ってもしかたがないよ。今日はこの家で何を買う必要があるのか話し合おう。ダザンさん申し訳ないですが、まだ家は準備が整ってないので、今日はお城に泊めていただきたいと辺境伯様にご連絡願えますか? 僕たちはダザンさんが連絡に言っている間はこの家で色々話し合っておきますので」

「断ることはないと思いますが、わかりました。連絡を取ってきます」


ダザンさんはそういって、家から出て行ってお城へと向かう。

それを見送って、僕たちは客間に集まり今後の予定を話すことにする。


「さて、僕たちは里中先生の後押しがあったとはいえ、こうやって早速拠点を手に入れることができた」


一応僕が部長なので、こういう話し合いの場では仕切ることが多い。


「これは幸いだといっていいだろう。ここを拠点にこの町、国の情報を集めようと思う」

「最初の方針は変わらないってことだね」

「そうだね。越郁君のいう通り、基本方針は変わらない。だけど……」

「トイレ、ですね?」

「そうだ。勇也君のいう通り、剣と魔法の世界を舐めていた。トイレ文化がまったく発達していない。このままでは僕たちが病気なるの時間の問題だろう」

「いや、私たちはそういう免疫とかは里中先生との訓練の中で上がってるとかいってるし大丈夫じゃないかな?」

「だとしても!! 不衛生なところで過ごしていいということにはならないよ、越郁君」

「あ、うん。そうだね」


どうやら越郁君はあまりそこまで重要視していないのか、それともトイレが悲惨なのは文化とでも思っているのかな?


「今後、このリーフロングを拠点とする以上、今は無理だとしても、近いうちにトイレの改善を行おうと思う。もちろんガーナン辺境伯様や町の有力者と協力して」

「それがいいと思います」

「なんか見境ないしにやりそうだったけど。まあ、それならいいかな」


なるほど、越郁君にはどうやら僕は手段を選ばずトイレ事情をどうにかするように見えていたのか。

あながち間違いでもないから、いい読みだと思う。


「さて、長期的な目的はともかく、今はこの家を使ってお店を開くという話だけど、まずは商業ギルドと話し合う必要はあるだろうね。下手に街にあるお店とかと競合して恨みを持たれるのは避けたいし」

「あー、そうか。でも基本的に不帰の森の素材を扱うんじゃないの?」

「そうだけど、それだけじゃお客さんが限られるからね。あれだ、不帰の森から取れたといって、日本から仕入れた野菜とかを持っていくのもいいかもね。ああ、野菜じゃなくて果実の方がいいかな」

「なるほど。果実なら野菜よりも高級で売っても問題ないですし、甘いものって受けがよさそうですね」

「うん。ゆーやと同じで賛成。でもさ、塩とか砂糖とかはどうする? 定番でしょ?」

「越郁。見た感じ近場に海がないみたいだし、岩塩が主だと思う。それだと日本の真っ白な塩とか砂糖は変に目を引くかもね。どう思います、先輩?」

「そっちは、高級で扱うしかないだろうね。ビニール袋で売るわけにもいかないし、ツボに詰めなおしだね。でも結局、不帰の森でとれたで押すしかないだろうね」

「ふーん。でも、それじゃお金持ちの人しか来ないんじゃない? お店で情報集めるには偏らない?」

「そこは、商業ギルドの話を聞いて考えよう」

「商業ギルドで?」

「ああ。僕たちが持っているものはどうあがいても、ここでは珍しく貴重なものでしかないからね。高級にしないと他のお店を圧迫するのは目に見えている。それは避けないと、トラブルの元だ。だから……」

「商業ギルドから話、情報を聞いて簡単に仕入れられるものから何かを作った方がいいってことですか?」

「うん。勇也君のいう通りかな。たぶん、昨日の食事からみるにパンかなと思う」

「あー、硬かったね。柔らかいパンとかあれば売れそうだね」

「まあ、パンなら競合してもたかが知れているだろうし、雇った人に教えて僕たちがいなくてもお店を開けるからね」

「あ、そっかー。私たちがいないと日本の商品は仕入れることはできないよね。なら、こっちのモノで作れるのがいいのか」

「そういうことだよ」


まあ、思いもよらなぬものが出てくるかもしれないし、本格的なことは商業ギルドで話を聞いてからかな。


「じゃ、あとは部屋割り決めようよ。お手伝いさんはダザンさんが戻ってきてからじゃないとどうしようもないし」

「そうだな。部屋割り決めようか」

「そうだね。といっても、二階の部屋だけどね」


ということで、3人で二階の居住区に上がる。


「部屋は7部屋とかすごいよねー」

「倉庫もあるからね。下の店舗スペースも広い。ダザンさんが言うには、大商人がいたんだけど、不帰の森に遠征して戻ってこなかったらしいね」

「だからこのお店ですか」


厄払いというか、不帰の森専用の店舗みたいな感じかな?

縁起悪そうだけど。


「とりあえず、私たちは一部屋ずつでいいよね?」

「いいと思う」

「そうだね。僕たちは一部屋ずつでいいと思うよ。あとは、お店を運営するための事務室みたいなものと、お手伝いに来る人の部屋だね」

「そういえばお風呂とか洗濯室はなかったねー」

「それは井戸でやるんだろうね。幸い、中庭に専用の井戸があるみたいだから、かなりいい物件ではあるんだろう」

「良すぎて、何か裏がありそうですけどね」

「ま、裏は何かしらあるだろうけど、僕たちが注意するしかないね。越郁君、勇也君、下手に個人で約束は取り付けないようにね」

「うん。わかってるよー」

「わかりました」

「って、話がそれてる。部屋割りだよ。私は、角部屋がいいんだけど、2人は?」

「僕は特にないかな。ああ、越郁や先輩と近くの部屋がいいかもな」

「そうだね。僕たちは一応家主みたいなものだし、固まっている方がいいだろう。お手伝いさんたちも部屋が近いほうがいいだろうし、越郁が角部屋っていうならその両サイドに僕たちかな」


そんな感じで、特に部屋割りは迷うことなく決定。

お風呂や洗濯室は後日改修工事でもして作るしかないということになった。

だけど、井戸から汲んでという面倒なこともあるし、ポンプの導入も考えざるを得ない。

異世界は本当に色々厳しい。


「とりあえず、あとやれるのは部屋の掃除かなー。って、箒とか雑巾もないよね」

「うーん。そこらへんはダザンさんが戻ってきてからお店に案内してもらおう。そして夜はみんなで不帰の森の家に戻って、必要なモノを買ってこよう。里中先生に報告も兼ねて話せば経費で落とせるかもしれないし」

「そうですね。家も手に入れましたし、直接報告するのはいいと思います」

「よーし!! じゃ、今は何すればいいの?」

「今は……、のんびりすればいいんじゃないか?」

「そうだね。ダザンさんが戻ってくるまでは何もできないし」

「えー」

「ま、お茶でも入れよう」

「そうだね」

「あ、なら私は緑茶で」


ということで、ダザンさんが戻ってくるまで、のんびりとお茶を飲みながらお菓子を食べて過ごし、ダザンさんが戻ってきて、お城への宿泊許可は下りたことに安どして、箒や雑巾、バケツが売っている店などを案内してもらって、そのまま家の掃除まで手伝ってもらうことになって、その日は日が暮れるまで掃除をして、お城に戻ることになった。


「聞いたぞコイク、オークを大量にギルドに卸したらしいな」

「あ、うん。問題あった?」

「いや。俺たちの分もあるんだろう?」

「うん。あるよ」

「なら問題ない。おかげでコイクたちを案内した俺がギルドに恩を売れたわけだ。家はそのお礼だ。遠慮なく受け取ってくれ」

「オークと交換とかじゃなくて?」

「ああ、それだけ今回、ギルドに恩を売れるのは大きい。しかも店を開くらしいから商業ギルドにも絡むんだろう? そうなると、不帰の森の素材で商業ギルドにも恩を売れる。ガンガンやってくれ」

「そっか、適当に頑張るよ。で、そこはいいけどさ、おっちゃんにオークを渡すのはいつがいいの?」

「ああ、そうだな。晩御飯が終わってからでいいか? 倉庫の方に頼みたい」

「おっけー」


そんな感じで、ガーナン辺境伯様ともすんなり話が進みオークを引き渡した。

というか、本当に家が手に入ってよかった。

これから、一旦不帰の森の家に戻って、日本に行って家具をそろえてこよう。

そして、リーフロングの居住をお店に移すんだ。

そうしないと、胃が持たれる。

今日も、お肉一キロだったから。

僕にはつらい。

なんで、越郁君はあれだけ簡単に食べられるんだろう?







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