次の封筒・残る規則
フェニックスの朝は低い雲に覆われていた。被害者会へ新しい事件記録が届く。送り主は殺害を望む言葉を書かず、ただ裁判が止まった事実だけを綴る。 資料を整理すると、例外がないことだけが残る。余分な死者を出さず、標的以外へ傷一つ残さない。
合同班は同じ人物、複数人、技術の継承、組織、国家実験まで仮説へ並べた。どれかを正解と扱うたび、説明できない一件が残った。
赤いレンズ反射は一度だけ鮮明に見えた。古い布と分解された金属片も見つかったが、同じ人物の所有物だと結ぶ証拠はない。
古い布には雨と油の痕があったが、年代も使用者も定まらない。捜査班は決定的証拠と呼ばず、偶然を捨てきれない品として保管した。
遺族の集会では、狙撃の話をしない時間が設けられた。失った人の好きだった料理や癖を語る声が、死者を事件番号から名前へ戻した。
夜になっても通報は増えなかった。静けさは安全の証明ではない。次がないことを願いながら、担当者は記録を閉じずに帰った。
誰も発砲の瞬間を見ていない。音の記憶さえ証言ごとに違い、確実なのは標的が一度だけ倒れ、二発目がなかったことだった。
標的以外の負傷者はいない。偶然にしては正確で、正義と呼ぶには冷たすぎる。その矛盾が、事件を都市伝説へ近づけていった。
記録には推測と確認事項が別の色で書かれた。赤い文字ばかり増えても、それを事実へ混ぜないことが捜査側に残された最低限の規律だった。
誰も発砲の瞬間を見ていない。音の記憶さえ証言ごとに違い、確実なのは標的が一度だけ倒れ、二発目がなかったことだった。
標的以外の負傷者はいない。偶然にしては正確で、正義と呼ぶには冷たすぎる。その矛盾が、事件を都市伝説へ近づけていった。
(本文実測:706字)




