ピコットの案内と、どんぐりスープ
誤解が解けてすっかり打ち解けたティモとピコットは、重ね合った落ち葉の道を並んで歩き始めました。
「枯れ葉の森はね、木々が似たような形をしているから、初めての人は同じ場所をぐるぐると回っちゃうんだ。でも、僕に任せて! 木の幹についた苔の生え方を見れば、どっちが東かすぐに分かるんだよ」
ピコットは短い手足を素早く動かしながら、誇らしげに胸を張りました。
ピコットの言葉通り、彼についていくと、深くて鬱蒼としていた森の道も迷うことなくスムーズに進むことができました。
二人が歩いていると、やがて森の中にひょっこりと現れた大きなクスノキの根元に辿り着きました。
木の根元にはぽっかりと大きな穴が開いており、そこから温かな橙色の光と、何とも言えない香ばしい香りが漂ってきます。
「ここが僕のおうちだよ! ティモちゃん、もしよかったら少し休んでいかない? お母さんが美味しいスープを煮込んでいる頃なんだ」
ピコットの誘いに、ティモのパフパフのお腹が『ぐぅ』と小さく応えました。
ティモが頬を赤くすると、ピコットは楽しそうに笑って「さあ、入って入って!」と手招きしました。
クスノキのおうちの中に入ると、そこはまるで温かな小部屋でした。
中央の小さな囲炉裏では、黒い鍋がコトコトと音を立てており、ハリネズミのお母さんが優しい笑顔で二人を迎えてくれました。
「おや、ピコット。可愛いお客様を連れてきたのね。ようこそ、小さなハツカネズミさん」
「お邪魔します、ティモと申します」
ティモが丁寧にご挨拶をすると、お母さんは木彫りの大きなカップに、出来立ての温かなスープをなみなみと注いで差し出してくれました。
それは、細かく砕いたどんぐりと、森のハーブ、そして甘い根菜をじっくり煮込んだ特製のどんぐりスープでした。
「さあ、冷めないうちに召し上がれ。東の街へ向かう長旅なら、お腹をしっかり温めないとね」
「いただきます!」
ティモはスープのカップを両手で包み込み、そっと口をつけました。
とろりとしたスープが口いっぱいに広がると、どんぐりの香ばしさとハーブの爽やかな香りが鼻を抜け、じんわりと身体の芯まで温かさが染み渡っていきます。
「……おいしい! なんて温かくて優しいお味なんでしょう」
「ふふ、ありがとう。どんぐりはじっくり弱火で煮込むのがコツなのよ。お代わりもたくさんあるからね」
お母さんが優しく目を細め、ピコットも嬉しそうにスープを美味しそうに口へ運んでいます。
ティモはスープを味わいながら、自分の土管のおうちで一人で過ごしていた寂しい日々を思い出しました。
けれど今、こうして新しいお友達とそのご家族と温かい食卓を囲んでいると、心の中の寒さが綺麗に溶けていくようでした。
「お兄ちゃんも、どこかでこんな風に優しい人たちに出会えているといいな……」
ぽかぽかと温まったお腹と心に満たされながら、ティモは小さな木彫りのカップを大切に抱きしめるのでした。




