表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ま、いっか。で世界が壊れる件 〜全知全能を田舎スローライフ用スキルだと思ってたら〜  作者: しゅんすけ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/75

第19話:魔王の矜持と、究極の床磨き


はざま村の朝。かつて数多の英雄を屠り、世界を闇に染めようとしたチッチさんは、今、四つん這いになって廊下を爆走していた。


「チチチッ! チチッ!(……くっ、この角の汚れが落ちぬ! 我が魔力をもってしても、ソラ殿が配合した『特製重曹水』の浸透圧には勝てぬというのか……!)」


チッチさんは小さなハムスターのような姿で、自身の魔力を指先に集中させ、摩擦熱で汚れを分解するという、国家級魔法の無駄遣いを行っていた。


「あ、チッチさん。おはようございます。今日も熱心に床を磨いてくれてるんですね。本当にお掃除が好きなんだなぁ」


ソラがのんびりと起きてきて、ゼノンの小さな頭を人差し指で優しく撫でた。


その瞬間、ゼノンの全身を至高の癒やし(神気)が駆け抜け、魔王としての殺意が急速に浄化されていく。


「……チチィ……。(……ハッ!? いかん、またソラ殿の指先一つで骨抜きにされるところであった……。我は魔王、いつかこの家を支配し、ソラ殿を我が配下に……)」


「あ、そうだ。チッチさん。今日は村の集会所(建て直した超高性能ギルドの別室)の大掃除をしようと思うんです。チッチさん、リーダーをお願いできますか?」


「チチッ!?(……り、リーダーだと!? 我を、この魔王ゼノンを、雑兵アレンたちの指揮官に任命するというのか……!)」


チッチさんの瞳に、かつての長としての炎が宿った。


集会所に集められたのは、アレン、エルナ、ユウナ、そして新入りのプリシラ。さらにはポチに、ピピさん、アカさんという、布陣だけ見れば最終決戦直前のそれであった。


「皆さん、今日はチッチさんが監督です。彼の指示に従って、隅々まで綺麗にしましょうね!」


ソラがそう言い残して畑へ向かうと、チッチさんは、脚立の上に飛び乗った。


「……チチチッ!!( 全員、整列せよ! 今からこの『魔導要塞ギルド』を、一点の曇りもなき聖域へと変える! 遅れる者は、今夜のソラ殿特製の西京焼き抜きだと思え!!)」


「(……おい、ゼノン。お前、完全にソラさんの飼い犬……いや、飼いハムスターに染まってんな。西京焼きが報酬かよ……)」


アレンが呆れ顔で突っ込む。


「……ポポポッ。(何を言う、アレン。掃除は戦いだ。我のブレスで、床のワックスを均一に焼き固めてやるわ)」


「……ピピピッ。(私は水魔法で、窓ガラスを高圧洗浄します!)」


「素晴らしいわ、チッチ殿! これぞソラ様が望まれる調和ですわね!」


聖女エルナがメイスに雑巾を巻き付け、旋風のごとき速さで壁を磨き始める。


「私、王女なのに……。でも、この雑巾がけ、二の腕の引き締めに効く気がするわ……」


プリシラも、郷に入っては郷に従い、必死に床を拭いていた。


掃除が終盤に差し掛かった頃、ギルドの地下室で数百年放置された魔力のおりが具現化した、巨大な『ダスト・モンスター』が出現した。


「ギギギ……汚レ……全テ……汚シ尽クス……」


「あら、不潔な怪物ね。私の美しさで消し飛ばしてあげようかしら?」


ユウナが手をかざそうとしたが、ゼノンがそれを制した。


「……チチッ! (待て。これは掃除の範疇だ。汚れは、魔法で消すのではなく、磨いて落とすのがソラ殿の流儀……。見ておれ、これが魔王の『滅塵めつじん』だ!!)」


チッチさんがハムスターの姿から、一瞬だけ本来の魔王の姿(の幻影)を現した。


彼は手に持った『古びたタワシ(実は神話級の研磨石)』を光速で回転させ、ダスト・モンスターに突撃した。


「魔王奥義——『暗黒旋回・油汚れ落とし』!!」


黒い魔力の渦がモンスターを包み込む。しかし、それは破壊の渦ではなく、超高速の振動による分解と洗浄の渦であった。


数秒後、そこには怪物などおらず、鏡のように磨き上げられ、ラベンダーの香りが漂う清潔な地下室だけが残されていた。


「(……すげぇ。魔王の力が、完全にハウスクリーニングに特化し始めてる……)」

アレンは、そのあまりの練度に戦慄した。


夕暮れ時。


ピカピカになったギルドを見に来たソラは、あまりの綺麗さに目を丸くした。


「わぁ……! すごいです、チッチさん! 柱が自分の顔が映るくらい輝いてますよ! さすがリーダー、みんなをまとめるのがお上手ですね」


ソラは、誇らしげに胸を張るチッチさんを抱き上げ、頬ずりをした。


「お礼に、今日はチッチさんの大好きな『特製ひまわりの種(魔力4000%増量)』と、西京焼きの端っこの一番美味しいところを多めにあげますね」


「チチィ……(……あぁ、これだ。我はこの瞬間のために、魔王としてのプライドを捨て……いや、昇華させたのだ……。美味い、美味すぎるぞソラ殿……)」


チッチさんは、ソラの掌の上で幸せそうにひまわりの種を齧っていた。


「……ポポポ。(負けたな、三つ首。今日の功労賞はあのネズミだ)」


「……ガウッ。(くそ、次は俺が庭の穴掘りで温泉でも掘り当ててやる……)」


番犬や古龍が対抗心を燃やす中、プリシラは掃除の疲れでぐったりしながらも、充実した顔で笑っていた。


「ま、なんとかなるもんですね。みんなで協力すれば、どんな汚れも落ちるんです」


ソラがニコニコと笑い、村の平和を噛み締める。


かつて世界を滅ぼそうとした魔王は、今やはざま村の清潔と規律を守る、最強の家事リーダーとして、その第二の人生(ハムスター生)を全力で謳歌しているのであった。


読んでいただきありがとうございます!


もし面白かったら【★★★★★】やブックマークで応援していただけると嬉しいです!


ソラくんの「ま、いっか」は、まだまだ続きます。


ついに……ついに魔王ゼノン(?)が登場しました。

かつて世界を震え上がらせた最強の魔王が、なぜあんな姿に……。

そんな魔王のビフォーアフターを画像化して活動報告にアップしました!

漆黒の鎧から、まさかの麦わら帽子へ。なろう史上最大の落差(?)を、ぜひその目で確かめてみてください(笑)。

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/3030454/blogkey/3599929/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ