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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第9章

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48 番外編31 本物


 これは、レオナルドからお土産をもらった数日後のお話。


 レオナルドから頂いたお土産を自室のベッドやテーブルの上に置いていく。

 かなりの数がある。一瞬にして埋め尽くされてしまった。

 レオナルドはいろいろと言っていたけれど、本当に効果はあるのだろうか?

 お兄様が魔法なんてものを顕現させたのだから、曰く付きの呪物とかあってもおかしくないのよね。

 ざっと見回す。どれから試してみようかしら。いろいろあって迷うわね……。

 こういう時は目の前にあるものから試していくのがいいのよね。

 という事で、テーブルの上に置かれた腕輪を手に取った。

 それは少し太めの腕輪で金色をしていた。そして外周に七つの宝石が埋め込まれていた。それぞれ、「赤」「青」「緑」「黄」「紫」「白」「黒」だった。

 金属製で七つも宝石がついているので、少し重い。

 確かイシス王国のお土産と言っていたわね。

 ───イシス王国はダイアモンド王国から南東に大きな海を渡った先にある砂漠の国だ。砂漠といっても全国土の三分の一程度だ。大河や町の周辺には暑い国にある木々が生い茂っているので、そこまで砂漠感は無いが、西側に行くほど一面砂砂漠となっている───

 そんな国では何故か、砂漠の中に希少な金属や宝石類が埋まっているらしく、それ目当てで掘削して生計を立てている人がいるのだそうだ。だからか、町のお土産やさんではそれを使った商品が多く売られているのだそうだ。

 だからか、あまり期待はしていなかったのだが、一応ね。心の中で、「魔法少女にな〜れっ!」と念じた。

 その瞬間腕輪から眩い光が溢れ、目の前が真っ白になった。

 思わず目を塞ぎ、次に目を開けた時にはアニメでよく見る魔法少女になっていた。

 私の髪の毛が水色だからか、それに呼応したのか、青系統のフリフリの衣装になっていた。しかし、それよりも驚いたのは手には何故かステッキが握られていた。

 「マジか…」

 思わず姿見の前で色々ポーズを取ってしまった。かわいい。

 これ、もしかして本当に変身できるんじゃなかろうか?

 念の為、やたらとフリルが多いふわふわのスカートを持ち上げて、ショーツの中を確認する。

 「!?」

 慣れ親しんだアレは無く、割れ目のようなものしかなかった。思わず「んっ…」と、変な声が漏れてしまった。

 そんなことよりも興奮すべきは、これが本物であるという事実だ。

 そういえば、変身した後は腕輪が消えて無くなってしまっている。

 これ他の姿や元に戻る時どうするんだろうか?

 試しに姿見の前で再度、「今度はナイスバディのおねーさんにな〜れっ!」と念じると、再び眩い光に包まれた。

 そして目を開けると、そこには誰もが認めるであろうグラマラスなお姉さんがいた。少し大人っぽくかつ背も高くなっていた。いろいろとポーズをとってみるが、自分とは思えないくらい美人だ。

 そして、その腕輪的にお姉さんというのは、どうやら童貞を殺しそうなセーターを着ているものらしい。私的にはあんまり好みじゃ無いのよね。正直、イブニングドレスや女性教師の着るタイトなスーツのイメージだわ。

 色々と姿見の前で変身して遊んでいた。あまりにも楽しくなっていて気づかなかったが、時計の針が二つほど進んでいた。

 名残惜しいが、他にも試してみたいので、「元にも〜どれっ!」と念じると、今度は光の粒子が拡散するように瞬いた。

 姿見の前には、慣れ親しんだいつもの自分が写っていた。

 軽く腕輪をさすりほくそ笑んでしまった。これは大事にしないといけないわね。

 それにしても、こんな話一度も聞いた事ないので、たまたま当たりだったのだろうか?

 しかし、そんな事を考えていても答えは出ないので、無視する事にした。


 「さて、次は……っと」

 テーブルに置かれた像の置物が目に入った。

 紫とも水色にも見える透明な鼻のない像の置物だ。クリスタルで出来ているのか、ガラスで出来ているのかは分からないが、何とも判別のつきにくいツルツルとした光沢のある素材だ。中は一切の不純物や割れなどが無い。こんな事言っていいのか分からないけど、他の国の技術では作れないと思うのよね。

 まぁ、そんな事考えていても仕方がないし、時間は有限なので、ちゃっちゃと検証していきましょう。

 確かレオナルドが言うには、置物の上に手を置けばいいと言う話だったわね。

 ポンと手を置くが、光が出るとか音が出るとかそういったものは起きない。

 置いた手を離すと、置物には長い鼻が現れていた。

 「えっ!」

 一体どう言う原理なのかは分からないけど、恐る恐るスカートをたくし上げて、ショーツの中を触る。

 「!?」

 凄い……。まさかこんな手を置いただけで変わるなんて……。

 そのままの体勢で再度、置物に手を置き離すと像の長い鼻は消失していた。代わりに私のショーツの中にいつも慣れ親しんでいる物体が復活していた。

 「これは…すごいわね。こんな一瞬で変われるなんて………。大事に大事にしましょうね」

 タイガーアイ王国恐るべし…。

 ───タイガーアイ王国はここから南東にある半島に突き出した国で、多種多様な植物や動物が生息している密林の国だ。歴史も長く、様々な遺跡が点在しているそうだ。───

 それ故、未だに遺跡からはかなりの品が発掘されているのだそうだ。そして、遺跡からの出土品と偽って偽物を販売する商人の方が圧倒的に多いそうだ。

 まさか、レオナルドは本物を偶々手に入れたって事? しかし、話を聞くとよく男と女が入れ替わっているって話だから、これに関してはそういう技術で作られたものなのかしら? 謎だけが増えていくわね。


 「次も置物ね。◯ーライオンみたい」

 前世であった雑貨屋さんにこういう置物あったわよね。結構いい値段するし、置き場所や手入れを考えるといらないなって思って買った事ないのよね。

 手に持っていろいろ見る。確かにギミックが使われている置物よねぇ。こんなんで変われるのかしら?

 チェストの上にある水差しから少し水を注ぐとガタガタと小さな音を立てながら口から水を吐き出した。

 「へぇ、よく出来ているわねぇ…」

 試しにコップに少し水を取って飲む。別段美味しくなるわけでもないわね。

 確かアポフィライト王国って言ったわね。

 ───アポフィライト王国は先ほどのタイガーアイ王国の近くにある島国だ。小さな島国故、自国内で完結することは難しいが、丁度交易の中継地点にある為か、主に交易で稼いでいる国だ。それ故東西からの様々な交易品が市場に出回り、手に入らないものはないという。───

 今日何度目か分からない確かめ方をする。傍から見たら変態って思われないかしら? でも、メアリーはこうすると、スライディング正座して手伝うと言いだすから困ったものよね。

 出てきた水を飲んだだけで変われるわけが……。

 「えぇ…」

 まさか本当に変わっているなんて驚きだわ。しかし、これどうやって戻るのかしら? もう一回飲めばいいのかしら?

 そう思って再度コップに水を汲んで飲むが、変化は無い。もしかして一方通行な感じなのかしら?

 そう思うと、今まで慣れ親しんだ自分の半身に、とてつもなく哀愁を感じた。

 暫くしても変化は訪れず、ここで検証終了かしらと思っていた。

 再度置物を確認すると、分かりづらい位置にスイッチがあったので、それを変えてみた。

 そして再度出てきた水を飲むとあっという間に元に戻ってしまった。一体どういう原理なのか分からないけれど、これはこれで楽でいいわね。これも大切に保管しないといけないけれど、内部の清掃とかちょっと面倒だなと思ってしまった。


 さて次は、球体の鈴のようなお土産だ。

 確かジャスパー諸島とかいう場所で買ったと言っていたわね。

 ───ジャスパー諸島は東西に長く大きい諸島の連合国で、それぞれ部族の長が話し合って物事を決めている変わった国だ。というのも、島によって植生や気候が異なり、山の標高も高く火山も多い。自然災害も多いらしく、みんな手を取り合って暮らしているんだそうだ。───

 そりゃあ、自然に祈るわよねぇ…。

 軽く音を鳴らしてみるが、特に変化はなし。そりゃそうか。レオナルドもなんとなくで買ったと言っていたしね。

 でも、今までの物を鑑みるにこれも何かありそうなのよね。

 「うーん…」

 これを握って祈ってみようかしら?

 「……………………」

 「(あら、何かしらー)」

 素っ頓狂な声が聞こえたなと思ったら、これイデアさんの声だわ。

 「(あらあらあら〜? どうしたのかしら?)」

 「(あ、すいません。ちょっと貰った物を握ったらこうなっちゃって)」

 「(あらそうなの〜? ふーん……。ところでそれで何しようとしてたのかしら〜)」

 「(別に変な事しようとしてたわけじゃないですよ)」

 「(本当かしら?)」

 「(本当です!)」

 「(分かったわ。ま、何かあったら言ってね。クリスちゃんの願いなら叶えてあげるから)」

 「(あ、はい。その時は是非…)」

 「(じゃ〜ね〜)」

 そう言って念話のようなものは途切れた。

 「これも一応本物よね。神にダイレクトに繋がるんだもの……」

 でもこれはあんまり使い道ないなぁ。まぁ、一応何かあったときのためにストラップ代わりに何かにつけておきましょうか。


 それから暫くテーブルの上にある小物類、お面、木偶人形、楽器、アクセサリー、怪しげな香水や乾燥した草など色々と試していった。

 そのどれもが何かしらの効果を与えてくれたが、最初の方に試したものと違って性別を変えるようなものは無かった。

 代わりに、別人に変わったり、動物や鳥に慣れたり、大きくなったり小さくなったり、変な魔法のようなものを出せたり、身体能力が上がったり、怪しいスタンドみたいのが見えるようになったりと様々だった。

 どれもこれも一つ一つは凄いのだろうが、途中からちょっと飽き始めて雑な検証になってしまった。


 「さて、これが最後かな?」

 ベッドの上に大きく場所を取っているのは、ターコイズ王国の絨毯だ。

 ───ターコイズ王国は国土の半分が岩石砂漠となっているけれど、南部は緑豊かな国だ。歴史的にも古く、様々な文化や風俗がある。中でも人より猫が多く、至る所に猫がいる猫王国らしい。───

 その絨毯はロール状に巻いてあるのに、かなりの大きさだ。

 先ほどまでの小物類をしまったり、飾れるものは飾ったりして場所を確保した。

 「わぁ…」

 それはとても素晴らしい物だった。緻密で繊細ながらも色鮮やかな紋様が編み込まれていた。多分それぞれに意味があるんだろう。後で調べてみようかな。

 確か、この上で踊るといいって言ってたわね…。私あんまりダンスとか得意じゃないのよね…。

 とりあえず、踊り子っぽい衣装に着替えてやってみましょう。

 そうしてフリヒリヒラヒラと光沢のある生地とスケスケの生地の合わさった衣装で、所々に金刺繍とアクセサリーが付いている。

 一応フェイスヴェールもつけておこう。こういうのはやっぱり形から入るべきよね。

 それにしてもホント扇情的な衣装よね。嫌いじゃないわ。寧ろ好きだわ。

 さて…どう踊ればいいのかしら? ヨガじゃダメよね?

 そんな時、コンコンとノックの音がした。もちろんうちのメイドさん達が返事を待たずに入ってくるのは知っている。

 音が止むと同時にガチャリと扉が開かれた。

 「すいません。ちょっとお話が……って、どうしたんですかクリス様…」

 意外な事にロザリーだった。珍しい。

 「あ、うん。ちょっと踊ろうと思って、形から入ったんだけど、私踊りを知らないのよ」

 「そうですか。では、私が踊って見せますので、見ながらやってみてください」

 「え、踊れるの?」 

 「もちろんです。女装メイドたるもの、踊りは必須ですから」

 「初耳なんですが…」

 そんな私の言葉を軽く無視しながら、私と同じ格好をするロザリー。エキゾチックな雰囲気を持っているからか、凄く似合うわね。

 「では、準備はいいですか?」

 「あっ、うん。お願い」

 見様見真似で踊っていく。なるほどね。こういう感じなのね。これはこれで楽しいわね。

 最後に決めポーズを取って終わる。別に音楽をかけた訳じゃないのに、なんかそういう音楽が鳴っていたように感じたわ。

 さて、早速確認を…。

 「クリス様…ナニをしているんですか?」

 「ニュアンスがおかしいわよ。いや、一応確認をね……!?」

 「なんですか、どうかしたんですか?」

 「おぉ…。めんどくさいけど、これも本物だったわ」

 「だから一体何を……」

 「ロザリーも確認してみたらいいじゃない」

 「何でそんな変態な事を…」

 「いいから、ほら」

 「………はぁ…やりますよ、もう…………!?!?!?」

 どうやらロザリーにも変化があったようだ。

 「え!? え!? こ、これはどういう事ですか!?」

 ロザリーのこんなに大きな声聞くの初めてかもしれない。尤もこれ以上大きな声は近いうちに聞く事になるんだけどね。

 「実は、この絨毯の上で踊ると性別が変わるらしいのよ」

 「らしいのよって…これ、戻れるんですか?」

 「どうなんだろ?」

 絨毯から降りるが、変化はない。というと時間経過か再度同じように踊る必要があるかね。

 「一応踊ってみましょうか」

 「そうですね。さっきとは違う方がいいですよね?」

 「そうね」

 そうして、再度踊るとアレが復活していた。

 ロザリーは感慨深く「おかえり…」と呟いていた。

 「クリス様…」

 「なぁに?」

 やたらと真剣な顔をしている。

 「これくださ…」

 「え、やだけど」

 ロザリーの発言を塞ぐように否定する。当たり前でしょう? 私が貰ったものだし、ロザリーに渡したら変な使われ方しそうだし。

 「……じゃあ、たまにでいいので貸してください」

 「まぁ、それなら」

 普段ふてぶてしいロザリーが慇懃に頭を下げている。かなりレアな光景だわ。

 「ところで何か用事があったんじゃないの?」

 「あぁ、そうなんですよ。実は、私としたことが香辛料を切らしてしまいまして、クリス様のお持ちのスパイスをお借りできないかと思いまして」

 「あぁ、そんな事…」


 そこでお土産が一つ残っている事に気付いた。

 ナヴァラトナ連合王国の香辛料だ。かなりの量があるのよね。これだけ、倉庫に保管してたから忘れてたわ。

 ───ナヴァラトナ連合王国。大きな半島全域にある国で、地域によって文化がかなり異なるが、全体的に暑い国だ。北部の山脈地帯は逆に万年雪があり、行く手を阻む山脈が北部からの侵入を防いでいる国だ。そして、ロザリーの大好きなカレーの発祥の地で、ロザリーが個人的に何度も通っている場所でもある。───

 「いいわよ。倉庫に置いてあるから使っていいわよ」

 「ありがとうございます。ところで、新しいものがあったのですが、そちらを使ってもよろしいですか?」

 お土産の方よね。寧ろどうなるか気になるから使ってもらった方がいいわね。

 「えぇ。試してみて」

 その後、ロザリーの作ったカレーを食べた屋敷中の全員が性別が変わってしまった。

 そしてそれが元に戻るまで大体一週間程かかった。

 そしてロザリーがあのスパイスを譲ってくれとかなりしつこく迫ってきたのだが、それはまた別の話。


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