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人狼メイドはブラック法廷に異議を申し立てる  作者:
法廷編(後編)人狼メイドは真相を明かす

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判決(終)

「判決を申し渡します」


 それぞれの席に戻った私、ハフリ先生、レンガ検事らを見渡して、クラレント裁判長は重々しく告げた。


「今回の公判では、被告人への薬物投与、検察側証人の偽証など、捜査、検察当局による重大な不正・不法行為が続き、正当な手続きによる犯行事実の立証はなされませんでした。一方で、弁護側の立証により、ジトーク家執事クロイ・マーダラー氏、フージン・ジトーク子爵夫人らが、より有力な被疑者として浮上しました。被告人ノット・ギルティが、ジゴー・ジトーク子爵を殺害したと判断すべき理由は皆無であると認め、被告人ノット・ギルティを無罪とします」


 無罪判決。


 まぁ、この状況から逆転有罪判決はありえないが、さすがに安堵の息が漏れた。


「薬物投与と偽証の件につきましては司法省に通報し、しかるべき処分を要求します。傍聴席にいる検察当局、中央警視庁セントラルヤードの方々にも、猛省いただきたく思います」


 我が父アイム検察官と、中央警視庁セントラルヤードの幹部らしき男達が無言で起立し、一礼をした。


「クロイ・マーダラー、フージン・ジトーク子爵夫人の身柄は検察局に預けるものとします。法に則った、公正な取り調べをお願いします」


「肝に銘じおきます」と応じた我が父アイム筆頭検察官の指示で、マーダラー執事とジトーク子爵夫人が連行されていく。


 クラレント裁判官は最後に私に目を向けて微笑した。


「おつかれさまでした。最初は本当に、どうなることかと思いましたが」


「クラレント裁判長の公正さと、ハフリ先生やグーセイ殿下のご支援の賜物です」


 微笑んでそう応じる。


 最初は検察も弁護士も被告人もギルティ家、被告人は車椅子に固定された人狼メイドでやはりギルティ家、確かに『どうなることやら』としか思えない裁判だった。


 クラレント裁判長が中立的で、ハフリ先生やグーセイ殿下が傍聴に来てくれていなければ、なにもできずに死刑か終身刑を受けていただろう。


「この先は、どうなさるおつもりなのですか?」


「まだ、なにもわかりません」


 さすがにジトーク子爵家には戻れないが、実家のギルティ家にも戻りたくない。


 当面は失業者、ということになりそうだ。


「またどこかでメイドの口でも探そうかと」


 人狼種でも雇ってくれる奇特、かつおかしな背景のない家があれば良いのだが。


「お困りでしたら裁判所のほうで相談に乗りましょう。司法関係であれば働き口のご紹介もできると思います」


「ありがとうございます」


 ギルティ家のことを考えると裁判所まわりで働くのはできるだけ避けたいが、最悪その辺で仕事にありつくしかないかも知れない。


「それでは、これにて閉廷とします!」


 そうして、ジトーク子爵殺害事件を巡る私の裁判は幕を閉じた。


 真犯人として浮上したクロイ・マーダラー執事は1ヶ月後に始まった裁判で、過去のヒトキリ事件と合わせて有罪、死刑判決を受けた。


 マーダラー執事と口裏合わせをしていたフージン・ジトーク子爵夫人は若い従僕と密通し、妊娠をしていたという事実がわかった。


 ジトーク子爵には、子供を作る能力がなかった。


 妊娠が発覚すればジトーク子爵に殺されるということで、フージン夫人の妊娠に気付いたマーダラー執事に脅されて、アリバイ工作に協力していたらしい。


 殺人事件の共犯ではあるが、腹の子には罪はないということで刑務修道院送致という判決となった。


 温情判決の類なのだが、貴族夫人にとってはそれでも恐ろしい話だったようで、判決と同時に失神したらしい。


 殺人鬼ヒトキリの汚名を着せられていたキセラレータ・ヌレギーヌ刑事の名誉は回復し、ドシンザン伯爵の悲願は実現した。


 私の冤罪の主要因である中央警視庁セントラルヤードの刑事セメルドー・ジショーエスは、その後他の拷問や証拠の偽造、被疑者への傷害や傷害致死などの事実が山のように発覚し、処刑台送りになった。


 ジショーエス警部の共犯と見なされた兄ワーラー、ウッドも実刑判決を受け、弁護士資格を剥奪された。


 姉レンガはなんとか謹慎のみで事態を乗り切った。


 父アイムにも追及が及ぶかと思ったが、ワーラー、ウッドを生贄にして、老獪に地位を守りきったらしい。


 私はどうなったかというと、まだオーヒノ離宮でハフリ先生と過ごしている。


 王宮の侍女でも法務助手の資格を持っていたり、法律書や法務書類の取り扱いができるような変わり種はいないらしい。


 ちょうどハフリ先生が欲しかった人材の条件に当てはまるということで、ハフリ先生の事務所でもある離宮の掃除や書庫の整理、それとグーセイ殿下がジトーク家より引き取ってきた牛馬の世話をしたりして暮らすことになった。


 ドシンザン伯爵からも引き合いがあったのだが、人狼メイドの職場なら普通の人間の屋敷より、カーバンクルのハフリ先生の離宮のほうが収まりが良い気がしたので、後者を職場に選んだ。


 ドシンザン伯爵はグーセイ殿下の家庭教師のひとりでもあるので、今も時々顔を合わせるが。


 それからは法廷に立つようなこともなく、私は一メイドとして、いつまでも平穏無事に暮らした……。


 とは、残念ながら行かなかったのだが、そのあたりの話は、また別の機会にしよう。


(ジトーク子爵殺害事件 閉廷)  

 ここまでお読みいただきありがとうございました。


 シリーズものの第一巻的な締め方になりますが、ここで終了とさせていただきます。


「面白かった」と感じていただけましたら。

 

 下の『★★★★★』にて評価をいただければ幸いです。




 次はついてははっきり決まっていませんが、もしかすると旧作「逆行メガネ」あたりの設定見直し版をやるかも知れません。


┌○┐

│オ│

│マ│゜ω゜)

│ケ│ //

└○┘ (⌒)

  し⌒ ̄

・名前解説

 ワーラー(藁)、ウッド(木)、レンガ(煉瓦)→三匹の子豚(狼の敵)

 クラレンス(アーサー王の最後のモードレッドの剣クラレンス)→反逆者の剣(圧力が利かない)

 ハフリ(祝)→のろい(呪)の逆。ガ○バの冒険のノ○イ様の逆(善属性白イタチ)

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パンと弾丸とダンジョンと・Rebake

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