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癒し

 というわけで他の人達に話を聞く前にリリ、という少女を僕の魔法で治してきてもいいかと聞くと、サナが、


「アラタにそれが出来るの?」

「多分できるはず。この世界の魔法は、どんなものでも使えると女神様から聞いているから」

「……なるほど。既に解呪できる呪いの類だったと」

「そうなるのかな?」

「運が良かったかも」


 といった話をサナとしてからやがてある部屋にやってくる。

 狐耳の長が二回ほどドアを叩いてから、


「レイ、入りますよ」

「はい……! もしかして今すぐ直してくれるのですか!?」

「う、うん、そのつもりだけれど……」


 そう僕が答えると、その少年は目を輝かせて僕の手を握り引っ張る。

 転びそうになりながらも連れていかれた先では、ベッドの上で一人の少女が呻いている。

 周りには黒い靄のようなものが渦巻いていて、おそらくはこれが呪いなのだろう。


 そこでミミが、


「酷い……こんなことになっていたなんて私は知りませんでした」

「アンは隠しているようでしたから。もっとも、アンがいなくなって、ようやく私がおかしい事に気付けた。そしてレイに面倒を見させるのも大変でしょうから私が預かっていたのです」


 狐耳の長がそう答える。

 良い人達だなと僕は思いながらも近づいて行って、“選択画面”を呼び出す。

 小さな音がして現れた画面から、癒し系の魔法から、“青の眠りを妨げる風”を探していく。


 見つけた。

 軽く人差し指で触れると、目の前の少女の上空に、青い光の魔法陣が広がる。

 そこからさらさらと青白い光の粒が雪のように降り注いでいく。

 同時に黒い靄のような物も段々に薄れて、やがて消える。


 少女の様子も穏やかな寝息を立てているようになる。


「多分、これで大丈夫だと思います」


 そう、僕は皆に声をかけたのだった。

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