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とどかずとらず  作者: 飛鳥恵佳


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12/12

まだ、気のせい

 たしか、夏休み前だったと思う。

「そういえば、文化祭やる」

「……そうか」

 おじさんが少し気まずそうな顔をした。

「来てみる?」と聞けば多分、困った顔をしつつ来てくれるだろう。

 けど別に私はおじさんに来てほしいわけじゃないから言わないけど。そもそも自分が文化祭をどうやってさぼろうかと考えているぐらいだ。それに母は、なぜかすごく楽しみにしている。なんで楽しそうにしていんだか。

 しばらく時間をおいてから。

「私は参加する気はないけど」とおじさんにそう言っておいた。

「……何するの?」

 意外だ、話を広げてきた。

「うーん、まだちゃんと決まってないらしいんだけど予定通りならアイス売るらしいよ」

「アイス……」

「そー、有名チェーンのアイスのカップ型のやつ売るらしいんだけど、どうやら売れ残ったら業者が買い取ってくれるから私たちは赤字にならないんだって」

「優良な企業だな……」

 言われてみれば、確かに。

「文化祭の準備のために夏休みに何回か学校に行かないといけないからそれがめんどくさい」

「夏休み部活ないなら学校行きたくないよなぁ」

「夏休みに限らず学校に行かなくていいならいきたくないよね」

「まぁ……、そんなものか」

「おじさん、文化祭来る?」

 いうはずのない言葉が勝手に出てしまった……。

 何で聞いたんだろ……。

「……うーん」

 案の定難しい顔をしている。

 嫌な顔というより、どう返せばいいか分からないという顔だ。

「今のは忘れて……」

「分かった……」

 今はまだ誘うべきじゃない。そう心の奥底で言っている。

 夏休みが終わればこの感情は変わっているかもしれない。

 なんとなくそんな予感がした。

 気のせい、気のせい。

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