表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜転生〜転生したら第5王子だったので、ダラダラ過ごしたいと思います〜  作者: 桔梗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/16

16.性別は事前に確認しましょう

「それからーー」


リカルドが言葉を濁す。


「まだ何か問題が?」


俺は内心ヒヤヒヤしながら問いかける。


「いえ、問題と言いますか……、タロウの見た目や話し方が、明らかに変化しているのです」


老魔法使いが、隣で重々しく頷いた。


「殿下、おそらく、低位小鬼が名を得たことで、名持ち小鬼、あるいは小鬼族の上位個体へ進化したものと思われます」


「それだけではありません」


リカルドが言いづらそうに、ほんのわずか視線を逸らした。


「実は、我々も誤認していたのですが……」


「何をです?」


「タロウは……雌でした」


「……」


部屋が、しん、と静まった。


俺はリカルドを見た。


リリアを見る。


老魔法使いを見る。


誰も冗談を言っている顔ではない。


「……メス?」


「はい」


「タロウが?」


「はい」


「タロウなのに?」


「はい」


二回言ってしまった。


俺はゆっくりと目を閉じた。

昨日の俺よーーなぜ、名前をつける前に性別を確認しなかった。


ーーいや、でも確か太郎は自分のことを、『オレ』と言っていたはず……。

なんだ?この世界では雌でも俺という一人称なのか?


「リリア」


「はい」


「俺の命名センスに問題があるみたいな空気になってないか?」


「なっています」


「少しは否定してくれ」


「事実ですので」


リカルドが咳払いをした。


「本人は、名前を変えるつもりはないようです」


「本人って」


「はい。タロウ自身が、“アルト様にもらった名だから、このままでいい”と」


俺は黙った。


「……リリア」


「はい」


「……名前、本当に変えなくていいと思う?」


「本人が気にしていなければ、今さら変えない方がよろしいかと」


その時、廊下の向こうから、小さな足音が聞こえてきた。

扉の外で兵士の声がする。


「待て、タロウ!殿下はまだお話中だ!」


「申し訳ありません。でも、アルト様にお伝えしなければならないことがあります!」


俺は思わずリカルドを見た。


「……今の、タロウ?」


「……はい」


スラスラ喋ってる。


昨日まで「オレ、はたらく!」と騒ぐだけだった小鬼が、急に礼儀正しい言葉を喋っている。


ーー進化、恐ろしい。


扉が開かれると、兵士に止められながら、一人の小さな少女のような魔物が姿を見せた。

背丈は人間の子どもほどだが、尖った耳と、わずかに覗く小さな牙、浅葱色を帯びた肌が、人間ではないと示している。


昨日の小鬼らしい歪みはかなり薄れ、顔立ちは幼くも整っていた。

大きな琥珀色の瞳が、まっすぐこちらを見ている。


「アルト様!」


タロウは、ぺこりと頭を下げた。


「昨日は、名前を授けていただき、ありがとうございました!」


俺は無言でリリアを見た。

リリアは無言で頷いた。


ーーこの少女は、本当にタロウらしい。


「……タロウ」


「はい」


「お前、ずいぶん喋れるようになったな」


「はい。頭の中の霧が晴れたようです。言葉も、昨日よりずっとわかります!」


ーーすごい。名付け、すごい。


「あと、リカルドから聞いたんだけど」


俺は慎重に言った。


「お前、女の子だったのか?」


タロウはきょとんとした顔をした。


「はい」


「……名前、タロウだけど」


「タロウは、アルト様がくださった名前です。大切です」


まっすぐ言われて、俺は何も言えなくなった。


「嫌じゃないのか?」


「嫌ではありません。名前があるだけで、嬉しいです」


「……そうか」


俺は小さく息を吐いた。


まあ、本人がいいならいい。

そういうことにしよう。


リリアが静かに言う。


「アルト様」


「何だ」


「よかったですね。命名問題は解決しました」


「解決したのか?これ……」


タロウは一歩前へ出た。


兵士が慌てて止めようとするが、リカルドが手で制する。


「アルト様。お願いがあります」


嫌な予感、再び。


「黒樹の森の採石場跡に、わたしの集落があります。アルト様に、仲間を救っていただきたいのです!」


俺は額を押さえた。


「……リカルドさん」


「はい、殿下」


「街の防衛に、余裕はありますか?」


「昨日の戦闘で、皆、消耗しています。大人数を動かせば門の守りが薄くなります」


「ですよね」


うんーー聞かなきゃよかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 「アルト様に、仲間を救っていただきたいのです!」とは、タロウ嬢仲間思いな魔物ですなぁ! さて、働くのが嫌いな主人公これからどうする?  続き、楽しみに待っております。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ